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9話目

 種族  :スライム

 名前  :なし

 性別  :?


 先ほど召喚したスライムについても、やはり情報を見ることができた。省略したけど、当然2匹とも同じだった。

 最初に描いたスライムは1対1でも押し負けていたし、力が劣っているとかレベルが低いとかありそうだよね。まあゲームじゃないから、レベルとかは難しいか。

 欲を言えばもう少し詳細な情報も欲しかったとはいえ、種族が分かるだけでも役立つことはあるかな。名前が「なし」になっているってことは、召喚して仲間にすると名前を付けられたりするんだろうか。

 それにしても、この情報はいつから見ることができたんだろ。


 ①実は最初から見られた

 ②スライムとの戦闘を経て私の能力が増えた

 ③召喚数もしくは種類が一定数を超えた


 考えられる可能性としてはこのくらいだろうか。

 ①はないと思いたい。昨日、結構じっくりとスケッチブックを見たが、そのときは何も起こらなかったはずだ。

 そうなると②か③が怪しい。とはいえ、現状私の能力を調べる方法がないので、今はこれ以上の考察は無理だろう。やっぱり鑑定みたいな魔法が欲しいね。

 どちらかが正解であるとすれば、もしかするとこれから先も何か新しく出来ることが増えていくのかもしれない。そう考えると楽しみである。




 1時間ほど歩いたが、馬車どころか誰ともすれ違わない。

 代わりに追加で黄星屑草を2輪ほど見つけたので収穫しておいた。

 まあ、まだお昼を過ぎたばかりなので、街の付近を行き交う人も少ないのだろう。

 しかし、このままでは本当に街まで歩いて帰ることになりそうだ。ここは、協力をお願いしよう。

 検証用に召喚した小鳥(シロスバメ)5羽を呼び出す。


「この辺りに街に向かう馬車がないか、探してきてもらってもいい?」


 10分くらいしたらまた呼び戻すから、と付け加えると、小鳥たちは一斉に街とは反対の方向へ飛び立った。

 これで馬車が見つかってくれればいいんだけど。



 5分も経たないうちに、1羽が戻ってきた。

 お、早い。もしかして見つけてくれたのだろうか。


 戻ってきた小鳥は私の肩に止まり、報告を始めた。


「ぴ、ぴっぴぴぃー」


 うんうん、なるほど。分からないね。

 首を傾げると、小鳥は羽で飛んできた方向を指し示す。

 どうやらそちらから馬車が来ているらしい。


 馬車が近くに来ていることが分かったので、他の小鳥たちも呼び戻し、元の場所に戻してあげる。これなら、あと10kmくらいの距離を歩く必要はなくなるだろう。

 そう安心していると、遠くから足音が聞こえてくる。


 ドドドドドド。


 いや? あれ、おかしくない?

 馬車ってもっと静かに走るものじゃ……。


 音のする方向を見つめていると、馬車が猛スピードで近づいてくるのが見えた。

 行きに乗った馬車は、ランニングより少し早いくらいのスピードだったと思うのだが、近づいてくる馬車は明らかに時速30kmから時速40kmくらい出ているように見える。


 呆然と立ち尽くしていると、馬車は私の横をそのままの勢いで通りすぎていった。


「誰も乗ってない……」


 すれ違い様に見た馬車は、乗客どころか、御者も乗っていなかった。

 なんだろう、凄く嫌な予感がする。ここは何も見なかった振りをして、街に急ぐのがよさそうだ。

 そう思い、街の方に振り向いた瞬間、馬車が走ってきた方向から女の子の叫び声が聞こえてきた。



「い、いや! 来ないで、来ないでええええ!」


 やはり悪い予感は当たるものだ。

 どこから? と見渡すと、50mほど離れた木の後ろに女の子が転んでいるのが見える。

 よほど怯えているのか、立ち上がれずにずりずりと後ろに下がっている。その先には緑色の肌をした人? が複数群がっているのが見える。


 召喚以外に戦う手段がない私としては、できれば逃げたいところだ。が、この距離で慌てて逃げたところで、女の子の次は私に向かってくる気もする。

 少しでも逃げられる確率を上げられるように、女の子に群がるものを観察する。


 それは1m程度の大きさの、全身が緑色の肌の亜人だった。全部で3匹いるようで、それぞれが棍棒や短剣を手にしているのが見える。

 ファンタジー映画でよく見るゴブリンだろうか。

 見つめていると、先頭にいたゴブリンがこちらに気づく。私と目が合うと、そのゴブリンはニヤリと口を歪め、手に持つ棍棒を大きく振りかぶり――。


 女の子に向けて、力の限りその腕を振り下ろした。


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