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8話目

 2体2になったことで、多少だけどこちらの『召喚獣』である兎とスライムの戦闘を観察する余裕ができた。


 兎は、1対3だったときもそうだったが、すばやい動きでスライムの攻撃を回避し、隙を見つけて角でスライムの身体を突くという攻撃を繰り返している。今のところ、敵のスライムからはほとんど攻撃を受けていないみたいだ。


 一方のスライムだが、スライムの攻撃方法は勢いをつけた体当たりか、粘着性の体を相手に絡み付けるというものらしく、お互いが絡み付いた状態になると、どちらのスライムが味方なのかさっぱり分からなくなってしまった。

 うん、この結果は予想しとくべきだったね。


 どちらが優勢なのかとじっと観察していると、召喚したスライムがどちらなのかが脳裏に浮かんでくる。これも魔法の効果なのだろうか。

 どうもこちらのスライムが若干競り負けているようだ。


 同じスライム同士だから互角に渡りあえるかな、と思っていたが、今のままでは相手のスライムに負けてしまいそうだ。

 まずはこちらから対処することにしよう。




 2回目ということで、1分もかからずにスライムを描き上げることができた。

 完成後、いつものように赤い光が私の足元近くから漏れはじめ、ごそっと身体から力が抜ける感覚が訪れる。光りが収まると、足元にスライムが現れた。

 これで私の戦力は兎1匹とスライム2匹となる。


 ……ただ、もう1匹を召喚するのは少し厳しいかもしれない。

 そんな感覚を覚えながら兎の方を見ると、どうやら勝負がついたようで兎と戦っていたスライムはぐったりとして動かなくなっていた。


「おー、えらいっ!」


 座り込み、魔力消費により荒くなった息を整えながら褒めると、兎はこちらに駆け戻り、膝に顔を押し付けてきた。

 反射的に頭を撫でると、目を細めて気持ちよさそうに「キュー」とじゃれついてくる。

 んん、可愛い……。


 少し癒されながらも、ふと横を向くと味方になったスライム2匹が所在なさそうにユラユラしていた。

 君たちも撫でてあげたいけど、粘つきそうだね。


「力を貸してくれてありがとう。もう人は襲わないようにね」


 私の言葉を理解したのかしていないのか、スライム達はその場で数回弾むようにブルンブルンと振るえてから、元来た方向へ去っていった。

 また魔物に襲われたときに力を貸してもらうことにしよう。



 スライムが去ったのを見届けると、兎が先ほど倒したスライムの方へと走っていく。

 どうしたのかと追いかけると、角を使い器用にスライムを解体し始めた。


 しばらく見ていると、スライムを3つの部位に分けたところで兎がこちらに振り返った。スライムの体を覆っているゼリー状の部分、薄い青色の五百円硬貨程度の大きさの石、その他の内臓など、だ。

 分けてもらっても、どの部位が何に使えるのか分からないな、と首をかしげていると、兎はその他の内臓だけを穴に埋め始めた。どうも、それ以外のものは討伐品として持って帰れと言っているかのようだ。


 この子めっちゃ賢い。可愛い上に賢いとか最強では。


 折角なので、ゼリー状のものをビニール袋に入れ、青色の石はハンカチに包んで穴の空いている鞄にしまう。

 なんかこういうアイテムの効果が分かるような魔法やスキルを覚えられないものだろうか……。

 異世界ものといえば、主人公がアイテムの鑑定スキルとか自分のステータスチェックができるスキルなんかを持っていることが割と定番だよね。ステータスはともかく、鑑定がないと何が安全な物なのか全く分からないしね。

 街に戻ったら、ギルドでソバスさんに鑑定スキルのことを聞いてみよう。




 それからは特に魔物を見かけることなく、2時間ほど星屑草を探し歩いた。


 現状集まったもの……「白星屑草10株」「黄星屑草6株」「スライムゼリー1体分」「スライムの石?1体分」「四つ葉のクローバー1つ」


 四つ葉のクローバーについては、クローバーの群生地を見つけ、「こっちにもクローバーはあるのかぁ」と思っていたところ、兎が見つけてきたため一緒に採取しておいた。


 うん、依頼の品も集まったし、そろそろ街に戻ろう。



 ひとまず行きに馬車から降ろして貰った場所に戻ってみた。

 特にバス停(馬車停?)がある訳でもないため、ここで待っていても馬車に乗れるのかは不明だ。

 街まで15kmほどなら何もなければ徒歩で3時間くらいの距離なので、ジッと馬車を待つよりは歩いている途中で通りかかった馬車を拾う方がよいかな。

 そう思い、街に向けて歩きだした。

 兎に周囲の警戒をお願いし、スケッチブックを広げる。


 兎を描いたページに目を落とし、チラッと横目で隣を歩く兎の姿を伺う。

 たまたま最初に出会った魔物であるが、スライムに囲まれたときの動きといい、スライムの解体といい、かなり助けられている。

 まあ鞄に穴は開けられてしまったが、それを差し引いてもお釣りがくるレベルだ。


 あとで何か美味しいものでも食べさせてあげなきゃいけないな、ともう一度スケッチブックに目を向けると、なんと兎の絵の横に文字が浮かび上がってきた。


 ええと何々?


 種族 :一角(ホーン)ラビット

 名前  :なし

 性別 :♀


 ……これはこの兎の情報なのだろうか。

 召喚すると対象の情報を見られる、みたいな効果もあるのかな。

 他に召喚した子についてはどうなんだろう。

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