3話目
眠るはずだったが、完全に眠気が吹き飛んでしまった。
なぜなら魔法である。オタクなら誰もが一度くらいは魔方陣を描いたり、詠唱の真似事をしたりしたことがあるのではないだろうか。あるよね?
その魔法が使えるのかもしれない、というだけでもテンションが上がる。しかもそれにプラスして召喚魔法なのかもしれないのだ。格好良いモンスターや可愛い女の子を召喚できたりするのかもしれない。
とにかく、それらができるのかについて検証したい。
ひとまず兎には一旦、部屋から去ってもらう。別に横に居ると怖いとか、そんなんじゃない。
検証の前に、これからやるべきことをまとめることにした。
一眠りしてから行うつもりであったが、まずはこれからの動きを決めておかなければならない。今すぐ魔法の検証を始めたいが、魔法の事だけ考える訳にはいかないしね。
スケブの新しいページを開き、思いついた順にやることを挙げてみる。
お金稼ぎ。
2泊分前払いしたため、明日の寝床は確保できているが、明後日以降の宿代が足りない。
日用品の調達。
タオルや携帯用の化粧品は持ってきているが、下着やら着替えが欲しい。切実。
貨幣価値の把握。
1泊が赤銅貨2枚のこの宿2日分を銀貨で支払って、赤銅貨1枚のお釣りということは、1銀貨=5赤銅貨だろう。他にどんな種類の硬貨があるのか、どのくらいの価値なのかについては早めに知っておいた方がよさそうだ。
人に聞きたいけど、街に入るときに旅人ってことにしちゃったから微妙だよね。記憶喪失とかの方が都合よかったかもしれない。
召喚魔法の検証。
何が召喚できるのか。制約や代償はあるのか。できること、できないことをしっかりと把握しておきたい。
やっぱりお金がないのが大問題かな。
少なくとも、明日には稼げるようにならないと、宿も着替えもない生活になってしまう。
稼ぎの手段としては、門番のおじさんが説明してくれたように、ギルドでクエストというやつだろうか。クエストとかまるでゲームみたい。
どのようなクエストがあるのか分からないが、魔法の力が役に立つかも知れない。できるだけ検証してからの方が安全だろう。兎に襲われた後に、護身術も必要だと考えていたが、上手くいけば魔法で代用できるかもしれない。
貨幣価値の把握については、日用品の調達をしながら考察すればよいだろう。あとで欲しい物リストも作成しておこう。残りの赤銅貨1枚でどれだけ買えるのかだけが不安だ。
一番問題なお金問題を踏まえつつ、優先順位を考える。
なんだか仕事のスケジューリングみたいになっているけどしょうがない。
1.召喚魔法の検証
2.クエストでお金稼ぎ
3.日用品の調達
4.貨幣価値の把握
まあこの順番かな。
日用品がないと、一日着替えられないのが難点だが、まずは宿代の確保をするべきだ。
2、3、4番ついては明日に回すとして、少なくとも今日中に1番目については完了するのが最低目標、という線でいこうかと思う。
結局、魔法の検証をしたすぎてついつい優先度を上げてしまった感じもするが、クエストをする上で重要になりそうだからしょうがない。
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まず召喚できるものの種類から調べてみよう。
強い生き物を呼ぶことができれば、魔物討伐のようなクエストも行うことができるようになるかな。そんなことを思いながら、ドラゴンの絵を描いてみる。
1時間ほどで描き終えた。……なんだか私の考えた最強の召喚獣、みたいな雰囲気になってしまったが気のせいだ。一応、部屋を壊さないように、あまり大きくないサイズのドラゴンを想像している。
これで最初の兎と同じ条件となったはずである。
「……なにも出てこない……」
はじめの兎は描き終わった直後に周囲が光始めたが、今回は5分経っても何も起こらない。
方法が違うのだろうか。それとも、いきなりドラゴンはやりすぎなのか。
次はグリフォンを描いてみる。
出てこない。
その次はペガサス。
出てこない。
……どうやら、想像上の生物は召喚できないようだ。
それでは見慣れた動物ならどうだろう。
犬。出てこない。
猫。出てこない。
鼠。出てこない。
あれ? 私の魔法って、召喚であってるんだよね? 不安になってきた。
ふと、窓を見ると縁に小鳥が止まっているのが目に留まった。
次はあの鳥を描いてみようかな……。