9/11
脳だけ
小さい頃の夢
「脳みそだけになりたい」
小学校近くの橋を歩きながら
見たアニメ映画を思い返していた
汚い汚い
生物は、物体は汚い
身体を拭いた後のタオルを桶の水につけて
浮いてくる垢 抜けた髪の毛
錆びたトタンから匂う
脳だけで生きたい
ホルマリン漬けにして容器に密封して
脳みそに刺激を与えて
思索の中に生きるのだ
点に面積は存在せず線に幅はない
イデアの世界に埋没したいと願っていた
今でも治らない悪癖
「距離感がわからない」
思った以上に君が傷つき修復できない
調子に乗ると自制が利かないんだ
ごめん とぽつりと呟き目を背け
そのままバイバイ
もう君と話すことはないでしょう
そんな時
脳だけで生きたい とまた願う
ホルマリン漬けにして容器に密封して
見たくないものは
すべて遠ざけよう
錆びついた記憶から
あるいは捏造した記憶から
美しいものだけを見つめて
埋没したいと願ってしまう
臆病で脆弱な精神が
それ単独で立てるはずないのにね
暗闇の中 痛みもなく 居なくなれれば
それは幸福の一つではないでしょうか