魔術学院でこっそりと
初めてお話書きました。タイトル変更しました。
「ルルちゃん、今日のおすすめはなんだい?」
「ルルちゃーん!お会計お願い~」
「ルルちゃん、これ運んでおくれ」
「はーい!」えっちらおっちら
「「ルルちゃーん」」
「まってくださーーーい」ちょこまかちょこまか
どうも。王都の人気パン屋の看板娘ルルです。まだ10歳です。お客さん達幼女をこきつかいすぎです。
ちょっとだけ口を尖らせてると、常連のお客さん達がニコニコして見てます。やめて!見世物じゃないの!
何回か拐われそうになったせいか、常連さん達やご近所さん達で「ルルちゃん見守り隊」とかいうのができてます。
なんでだ。パン買ってくれるからいいけど。
でもある日自分でも気づいたよ。
鏡にうつる自分の姿。フワフワのハニーブロンドにクリクリとしたすみれ色の瞳のちびっ子。白くてプニプニなほっぺ。
「うん、あざとい。」
これは間違いなくロリホイホイだよ。自分の姿のあざとさに恥ずかしくなってベッドの上にダイブし、枕を抱えてゴロゴロ転がる。ゴツッ。落ちた。痛い。涙目でおでこをさする。そんな姿もあざとくて恥ずかしい。
これでうっかり庶民にはあまりない魔力でもあったりして、主に貴族子女が通う魔術学院にでも通うことになっちゃったら、もう王子も宰相息子も騎士団長息子もホイホイだよ、きっと。
まぁ、そんなわけないけど!
「ルルちゃんの魔力は珍しい光属性だね」近所の引退した魔術師のおじいちゃんに見いだされ、来年から魔術学院に通うことになった。隠居してるのに仕事早いね!?え?宮廷の筆頭魔術師だった?まじか。
でもなんで庶民の私に魔力があるの???
「実はママのおばあちゃん、駆け落ちした隣国の王族だったのー。そのせいかも?」
「え?実はパパのパパも熱愛の末に庶民に婿入りした高位貴族だったんだ!」
「えー!パパも?」「ママもだったんだね!」
パパとママ、カミングアウト内容がかぶったことに愛を深めて抱き合ってる。幸せ家族ばんざいだ。
実は高貴な血筋とか、稀有な魔力とか、あざとい容姿とか恥ずかしすぎる。そこで私は入学までに猛勉強をした。だってあざとさを武器にしたくないから。入学試験は当然の一番。首席入学をもぎとった。でも新入生代表の辞は同級生となる第二王子だから大丈夫。目立たない。それに魅了魔法が使えることがわかったので、その力を応用した反魅了魔法なるものを研究に研究を重ねてあみだしていたのだ。これで誰も私に気づかない!学院は庶民が来るところじゃない!とかいって、いじめられたら嫌だもん。
髪をひっつめ、分厚い伊達眼鏡をかけて、反魅了魔法を自分にかけて、うん、完璧!
パパとママも変態にさらわれたりする心配がなくていいと喜んでくれたよ。身長が15歳になってもまだ140ちょいしかないのは謎だけど。いつくるのさ私の成長期。これで胸大きかったらロリ巨乳だけど、その心配は大丈夫そうだった。よかった?
入学してからも勉強と魔術の研究に打ち込み、常に一番をキープした。充実した学生生活超楽しい。反魅了魔法があるので皆私に関心を寄せない。気づけば学院の七不思議の一つになってたけどドンマイだ。
時々、素直になれなくて婚約者の王子についきつくあたってしまうと物陰で泣いていた公爵令嬢の恋愛相談にのったり、表情筋がうまく仕事してくれなくて好意をよせてる宰相令息に想いが届かないと悩んでる伯爵令嬢にはクールにデレるやり方を教えてあげたりしていた。卒業近くなる頃には、王子も宰相息子も騎士団長息子も婚約者達とラブラブだった。ちっ。リア充め。
卒業後は魔法省かパン屋の看板娘か学校に残り研究かで悩んでいる昼休みのことだった。
「君すごいねぇ。」魔法省長官息子に声をかけられた。
「え?ええーっ?な、な、なんでぇ!?」
日向ぼっこしてたら眠くなって、髪もおろして眼鏡もはずして、近くにいた猫モフモフしながらゴロゴロ転がっているところに声をかけられたのだ。誰だって驚くだろう。猫も驚いて逃げていった。
「俺、コレあるから魅了魔法とか効かないの。」碧の石のはまった綺麗なブレスレットを見せてくれた。
「え?嘘なにその素敵アイテム!貸して!見せて!解析させて!」
「貸したら反魅了されちゃうから貸せないよ。」
むぅ。ケチめ。
「えーと、そのアイテムはいつから?」
「最初から。」
「まじか。」
「君が首席入学で高笑いしてるところも、跳び箱でいつも顔面着地しているところも、しょっちゅう何もないところで転んでるところも、泣いてる女の子放っておけなくて恋のキューピッドしてるところも、前見てなくて壁にぶつかって鼻赤くしてるところも。あ、授業中お腹の虫が大騒ぎでコッソリとパンかじってるところも見てた。」
「くっ…こ殺して…」
そう、どうせ誰も見てない気づかないと、やりたい放題だった自覚はある。寝癖もそのままだったり、靴下が左右違ってたり。気にくわない生徒を陰湿にいじめる先生に消しゴム投げつけたり。
「あとね…たまに俺のことみてたのも…」
「!」顔がいっきに熱くなる。あまりのことに言葉がでてこない。恥ずかしすぎて相手の顔が見られない。身長差が40センチ以上あるせいだけじゃない。
「が、ガンつけて、ご、ごめんなさ…い…」なんとか声を絞り出す。
「魔術師なのに剣術も上位入賞の細マッチョでっ!王子様みたいなイケメンなうえ、私好みな少しタレ目でっ!優しい風貌なのに魔術の研究内容は超腹黒でっ!魔法省はいったら間違いなく出世争いの邪魔になりそうでっ!もう気になって気になって仕方なかったんですっ!ごめんなさいっ!」
なんとかいっきに言いきった。その後の沈黙の長さに思わず不安になって顔をあげると、魔法省長官息子様は両手で顔を覆って耳まで赤くなって悶えてた。むぅ。赤くなり具合まで張り合ってくるとは侮りがたし。
「はー。想われてるのか睨まれてるのか判断つかなかったはずだな。で、俺の身体や顔は君の好みってことでいい?能力的にも認められてるみたいで嬉しいよ。」
「え、ちょ…まっ…」
なにやらすっかり脱力した魔法省長官息子様、アルト様は私の手をひっぱり中庭の芝生に座り込む。私も座ってしまった。アルト様の膝の上に。解せぬ。至近距離にイケメンの顔がある。慌ててどこうとするけれど、がっちり腰を捕まれてて動けない。さすが細マッチョ。
「な…」
「女の子を地面に座らすわけにはいかないでしょ。」
「だ…」
「誰にでもはしないよ。君だけだ。」
「な…」
「君のことが好きだからだよ。」
エスパーか?あまりのことに頭が真っ白になり口をパクパクさせてしまう。
「エスパーじゃないよ。君分かりやすいからね。」
ちょ、やめて、人の顔見つめて蕩けそうに微笑まないで!
あ!わかった!新手の引き抜きだ!きっと魔法省から頼まれてるんだ!
「確かに魔法省からも是非欲しい人材だから説得して欲しいとは言われているよ。でも一番の理由は危なっかしい君をいつでもそばで見守りたいからだ。大事だから、もう一度言うよ?ルル、君が好きだ。」
ズキューン。はーい、ハート居抜かれました!陥落です。全面降伏です。
「ルル、考えてることはわかるけど、ちゃんと言葉にして?」
「うぅ…」ちっ。ばれたか。
「淑女は舌打ちしちゃだめだよ?」
「ぁう…」恨めしくなって上目使いでアルト様を見上げる。必殺技のあさどい角度だよ!これでパパいつもお小遣いくれるよ。
目があって、ニッコリ笑ったアルト様の目が笑ってなかった。
「…あぶない。なんかお小遣いあげたくなった。あ、あざとい上目遣いしてもダメだよ。君の気持ちをちゃんと聞きたいんだ。」
「……す」
「聞こえないよ?」
もうやだ。もうやけっぱちな気分になって叫んだ。
「アルト様が好きです!」
途端に破顔する好みの少しタレ目のイケメン!あざといよ?あざとすぎるよ?恥ずかしくて恥ずかしくて顔隠したいけど、そもそも相手の膝の上だし、身動きできないし、いつのまにか頬に手が添えられ俯くこともできなかった。そして…目の前のアルト様の顔がもっと近づいてきて…優しく優しく口付けられた。
卒業後は二人して魔法省に就職した。身分違いも実力でねじ伏せた二人は、ルルちゃん見守り隊の人達には号泣され、王子達にはどこにそんな可愛い子がいたのかと驚かれながらも無事結婚して幸せに暮らしました。優秀な魔術師夫婦の貢献により、国の魔術、特に相手に気取られずに情報収集や操作などを行う諜報部門が大いに発展したとかしないとか。