序章
お久しぶりです。また新しい小説を書き始めました。不定期ですが、少しずつアップしていく予定です。意見、感想、要望、何でも伝えていただけると励みになります。よろしくお願いいたします。
物語は浴室から始まる。
これはお約束。
某国民的時代劇の諸国漫遊黄門様のかげろうお銀の入浴シーンや、某国民的アニメの猫型未来ロボットのしずかちゃんのシャワーシーンに代表されるように、物語と浴室は切っても切れない関係だ。
かといって、この物語が国民的かというと、まったくそんなことはない。
ただの作者の趣味である。
◆◆◆
「はぁ。今日も疲れたなぁ。全くお祖父ちゃんたら本気で攻めてくるなんて。痣になったらどうするのよ。嫁入り前の身体なのに。」
ブツブツと愚痴をこぼしながらシャワーを浴びる少女。
千葉空手道場の一人娘、野菊である。
今日も祖父に空手の稽古を受け、祖父がその後、飲みに出かけたため、東京郊外の田舎にある自宅兼道場に備えてある大き目の湯船に湯を満たし、汗を流しているところだ。
「でも、弟子もいなくなったし、お祖父ちゃんも寂しいのよね。」
そう、空手ブームも去り、当時いた弟子たちも独立し、今は野菊一人の道場である。
『バッシャァァァン』
突然横の湯船に大きな音がし、水しぶきが立ち上がる。
「きゃぁぁぁ、何?」
見ると、湯船の中に人影がある。西洋風の鎧をまとった少年だ。
「えっ、誰?どこから入ってきたのよ。」
そう言いながら、シャワーを少年の顔に当てる。
「うぶぶぶぶぶっ、もがっ、もがっ、熱い、熱い。」
バタバタとあがく謎の少年を後に、脱衣所に逃げる。
「いいっ、じっとしてなさい。逃げたら許さないわよ。」
そう言い残し、脱衣所で急いで服を着る。
服を着て少し落ち着いたのか、考え始める。
風呂には窓はひとつしかない。
それも高いところにあるし、人が通れる大きさでもない。
あの少年は一体?