第二話 転送
確かにど正論だ。だが…
「じゃあどーするんですか!すぐ死にますよ!」
「まあ確かに剣と魔法の世界じゃからなあ…」
「てか神様なんもしてないなら、なんで異世界転移するんですか!」
死んだら誰もが誰もが異世界転移するわけじゃないだろう。
俺が異世界転移する理由があるはずだ。
すると神は簡潔にこう言った。
「いや商人が足りてないんじゃ」
「そんなバイトみたいな理由ですか!」
そんなバイト募集みたいな安い物だったとは。
だったらどうするべきか…。
この世界も気にくわないし、異世界が良いんだが。
チートがないなんて…。いやもうこの際諦めよう。
そうだ、確かに神のいう通りだ。
人は平等だし、俺のような童貞は無双出来ても、ハーレムなんて不可能だ。そもそもそんなぽいぽい女の子が惚れてくれる訳がない。
漫画じゃあるまいし。
「分かりました。もうこの際、チートはいらないです」
「お、ついに諦めたか」
「ですが、このままでは死んでしまいます!言語と商人でやってくための物資、そして身を守れるスキルをください!」
チートは諦めたが話し上手だけで生きていける訳がない。流石に第二の人生としてやっていくために必要な物は貰って行く。
「それなら仕方ないな。確かに流石のお前さんの適応力でもそれくらいは必要じゃろう」
「本当ですか!」
「ああ、物資はもう異世界に用意しておこう、言語も転移する時、脳に直接理解させてやる」
「身を守るための物は…?」
「ああそれはな。お前から攻撃出来ないように、七つの○罪の主人公よろしく、相手の力を二倍で返すカウンターを与えよう」
「やけに下界に詳しいですね!」
まさか話題の漫画まで注目してるとは。
でも流石にフルカウ○ターは強すぎじゃないか?
「強くないですかね?」
「いやだってそれだけじゃよ?身体能力も変わらず、武道も剣術も何もない、体力だってそのまんまだ。魔法も習得しなければ使えん」
そう聞くとマジで俺雑魚だな…。
まあだが使い方によるだろう。
よし、これで必要な物は手に入った。
「最後に能力を確認、つまりお前が分かりやすいようにいうと、ステータスじゃな。見えるようにしておこう」
「お、それはありがたいです!」
ステータスは異世界につきものだよね!これだけは手に入って良かった…。
「どうやって見るんですか?」
「イメージしてみるんじゃ。自分の能力が確認できる状態を」
俺はゲームで見たことのあるような、ステータス画面を意識する。
すると徐々に、何もない空間から画面が浮かび上がってきた。
〜〜
名前 黒川 拓海
性別 男
年齢 16歳
称号 異世界の商人
スキル 話し上手、聞き上手、カウンター、ステータス確認
〜〜
「聞き上手増えてる⁉︎」
「ああ話し上手あるなら聞き上手もかと思ってな」
「ママ友出来そうなスキルですねえ!」
話すのも聞くのも上手いってママ友作り放題なんじゃないか。
いやだが商人に役立つことは確かだ。貰っておけるものは貰っておいた方が良い。
「ではついに転送するぞ!」
神は気合の入った声でそう宣言した。
準備は、満タンだ。確かに雑魚ではあるのだが、これなら生活はしていけるだろう。
俺も気合を入れてこう言った。
「お願いします!」
「了解した。『来たれ異次元の扉』」
神がそう言った瞬間、何もない空間から扉と呼べるような代物が現れた。そしてバチバチという音を立てながら徐々に徐々に扉は開いていく。見えるのは様々な色が渦になっているような空間。
これが魔法なのか。アニメでしか見たことのないような光景がそこにはあった。驚くのもつかの間、
「さあ行け!黒川拓海よ!」
神はそう言って俺の前から姿を消した。
この部屋にあるのはもう俺と椅子二つと大きな扉だけ。そしてこの扉の向こうは異世界だ。小さい頃から憧れてきたあの異世界だ。残念ながら無双は出来ないだろうが、それでもこのクソつまらなかった人生を変えることができる。
俺は異世界で商人として第二の人生を掴み取る!