第一話 人は皆平等
頭の中からジワジワとくる、とてつもない頭痛で意識が朦朧とする中、俺はなんとか目をこじ開ける。
一面白く染まっていて、何製かは分からないがシンプルな部屋。あるのは椅子二つ。
そして目の前には、腹まで伸びた髭がある70代くらいの老人が向かいあって座っていた。
もしかしてまさかこれは。
もしかして…
あの願い続けた…
老人が語り出す。
「落ち着いて聞け。黒川拓海、お前は死んだ」
老人はなんとも言えない顔をしてそう言った。
そして俺は空いた口をなんとか閉じ、そしてこう言った!
「よっしゃぁぁぁぁぁ!」
「うぇ⁉︎」
「だらっしゃぁぁぁぁ!」
「お前落ち着け!落ち着け!気が狂ったか!」
老人はいかにも驚愕な表情で叫び出す。
「え、貴方神ですよね?」
「え?ああそうじゃ。わしは神だ」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!」
「うるさいいい加減黙らんか!」
本気で怒っているようだったので黙る。そう!この光景が俺が何年も待ち望んでいた光景だったとしても!
「よっ、よっしゃぁぁぁぁぁ!」
「だからうるせえぇぇ!」
もはや神はイメージ壊れるほどブチ切れていた。
神は息切れしながら、心底呆れた表情で
「死の宣告をしてこんな反応初めてじゃ…」
「そうなんですか?普通この状況は皆の憧れじゃないですかね?」
「お前死んだんだぞ?」
「ええ、まあはい」
死んだとしても未練は全くない。親も居なければ、兄弟もおらず、夢もなく何もない。
「はあ…もうよいよい、話があるのでな…」
「異世界転生ですか異世界転移ですか?どっちなんですか!」
「まだ何も言ってねえだろうが!!」
そろそろマジで殺されそうなので本気でやめとく。
ここはいい子に説明聞いて、チート貰って異世界に行こう。
やっぱ第一印象は大切だからね!
「まあお主が言った通り異世界転移となる」
「異世界転移ですか…いいですね」
異世界転移かあ…。チートスキル貰って、無双してハーレム作ってっていうあの憧れが…。
すると神は俺の表情をどう捉えたのかこう言ってきた。
「よし分かった。もうお前に職業とスキルは渡してある。お前は状況の飲み込みが早いから説明はいらんじゃろ。転送するぞ!」
「待て待て待て。なんも分かんないんですけど!俺の職業なんすか!」
「商人だ」
「なんでですか!勇者とかにして下さいよ!」
「ならぬ」
「ではスキルは!」
「話し上手」
「マジでなんなんですか!チートスキルくださいよ!」
商人でスキル『話し上手』だけとか二秒で死ぬ自信がある!というかこういう展開ならチートスキル貰えるんじゃなかったのか!
神はまるで子供を諭すかのようにこう話しかけてくる。
「お主よく聞け。お前はライトノベルやネット小説を読むか?」
「はい読みます。大好きです」
「わしも神だ。そのような物を読んだことはある。だがなあ…なんで主人公は異世界転移でいつもチートスキルを貰えるんだ?」
「それは神が迷惑かけたとかで…」
「まあ確かにそういうパターンもあったな。だが今回わしはお前に何もしとらん」
「でもやはりチートスキルは!」
「馬鹿者。よく聞け。何故異世界人によって原住民が無双されて殺される。人は皆平等だ!」
どうやら貰えそうにありません。