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第八話 偽肛門様って定期的に出るよね

「目、覚めたか?」


 宿屋の部屋から、カルクに連れられて出て来たミトに、外で待っていたシューケルが聞く。


「ベッドが固いわ! どうしてこんな固いのにするのよ!」

「したくてしてるんじゃねえよ、それしかないんだ」


「私の部屋にはあるわ!」

「お前の部屋だからだ」


「じゃ、どうしてここにないのよ!」

「お前の部屋じゃないからだ」

「そんないいわけばっかり!」


 ミトはつけたしのハンドサインを繰り出した。

 もう、シューケルが避けたとか言わないけど、全部余裕で避けてるからね?


「ま、旅行中はもう我慢しろ。庶民はみんなそんなベッドで寝てるんだよ」

「我慢できない! シューケルが何とかして!」

「何ともならねえな。街の布団屋に行って最高級の布団を毎日買ってもお前のベッドにはならねえよ」


「言い訳は聞き飽きたわ! 何とかしなさい!」

「無理」

「なーんーとーかー!」


 ミトが高速つけたしをする。

 ちなみにミトは多少我儘姫だが、賢い子で物分かりも悪くはない。

 ただ、気が立っているのだ。

 荒くれ者に二回も肛門を見せた事を。


 それもこれも自業自得なのだが、そんなことは知った事ではない。

 とにかくこの怒りを誰かにぶつけなければならないのだ。

 その相手は目の前のシューケルに限る。

 シューケルより近くにいるカルラはなんか怖い。


 とは言え、シューケルも面倒なので、構ってあげる仕事分は構ってやるが、それを超えると適当に流す。

 そろそろ構う許容は超えた。


「まあ、いい、そろそろ出るか。次の街に行くぞ?」

「なーんーとーかー!」


「カルク、何か案があるか?」

「私と貴様で殿下の肉布団になるのが良いのではないだろうか」

「さあ、とりあえず朝食を食べて街を出ましょうか!」


 ミトの一言で、この話は終わった。



「ここはまあまあね」

「そうか……」


 昨日のうちに聞いて回って実際に食べてみて見つけた、治安も良く、ミトの口に合っている店を探したのだ。

 だから、そう言われてほっとしている。

 言われなかったら、街の全員を集めて、無意味に紋章を見せつける腹いせをしていたところだ。


「何か騒がしいわね」

「街の朝ってのはだいたい騒がしいもんだ」


「そんなことない! だってうちは静かだし!」

お前の家(王宮)と街を一緒にするな」

「一緒! だって朝ごはん出て来るし!」


 話にならなかった。


「いいから聞いてきて! これは命令!」

「はいはい……」


 今朝はミトとカルクが食べているので、見張りのシューケルがそこらの人に聞いて回ってみた。


「で、どうだったの?」

「何か、どこかの姫様が世直しの旅でこの街にいるらしい」

「いやだ、照れるわね」


「てめえじゃねえよ」

「私も世直ししてる!」

「名乗ってねえだろ」


「名乗った! 紋章見せたし!」

「ああ、そうだったな、だが、誰にも言うなと言ってあるから漏れてないはずだ」

「大抵の秘密は漏れるものなのよ。特に善行は!」


 シューケルは漏れるのはだいたい悪行だろうと思ったが、面倒なので言わなかった。


「じゃあ、街を紋章拡げて歩いて来るか?」

「そんなのは嫌! そんなのは嫌!」

「何で二回言った?」


 とにかく嫌だったのだろう。


「まあいいや、あまり騒ぎになると、誘拐の危険も増えるから、さっさと食って街を──」

「おい、今、広場に姫様が現れたらしいぜ!」


 外から走り込んで来た奴が、誰ともなしに怒鳴った。

 これにはさすがにシューケルとカルクは顔を合わせる。


「? どうしたのよ?」


 よく分かっていないミト。


「あのな、今、姫が広場にいるって言ってたよな?」

「言ってたわね?」


「お前いまここにいるよな?」

「いるわね?」

「何で広場に姫がいるんだよ?」


「どこかの国の姫って子じゃないの?」

「そうだな、俺もさっきはそう思っていたんだが。冷静に考えると、ツクーニ王国の領土に他の国の姫が、姫を名乗って来るか? それは領土侵犯だぞ?」


「つまり、どういう事?」

「偽物の可能性が高いってことだよ」

「ええっ!?」


 ばん、と立ち上がるミト。


「それで、今から身に行くんだが、お前、まずは名乗るなよ?」

「え? どうして?」


 そこは悪だと見極める証拠を見てからだとか色々あるからなんだが、それを説明するのはかなり面倒だ。


「名乗った時点で、お前は紋章を見せることになるんだぞ? 広場だからこれまで以上の観衆に見せる事になるんだぞ?」

「そんなのやだ」

「だったら、大人しくしていろ」


「分かった! 喋らない!」

「よし、じゃあ、行こうか」


 街の広場は平日という事もあってそこまで人はいないのだが、その中で人だかりのある集団が見える。

 その周囲を騎士っぽい格好の二人がボディガードしていて、その中心に、なんだか妙に色っぽい、スタイル抜群の女の子が立っていた。


 スカートは長いのだが、妙な部分にスリットが入っていて、動きによってはちらちらと太ももが見える。

 そして、豊満な胸は上部を隠さずに谷間が見える服を着ていた。


「あれに騙されるのか……」


 シューケルはさすがに呆れる。

 その女はぎこちない動きで気取っているが、洗練さが全くないからだ。

 ミトはこんなんでも動きは上品だし、つけたしのハンドサインも動きが上品だから読まれやすい。

 それどころか口から下ネタしか飛び出さないカルクですら、動きはあいつよりも上品だ。


「姫さまは、どうして世直しをしてるんっすか?」


 周囲を囲んでいた男の一人が聞いた。


「どうしてってぇ、それが高貴な奴のぉ、義務、だからかな?」


 「高貴な奴」って、姫が言う言葉かよ、と思うのは高貴な姫を知っている人間だけで、周囲の誰も疑いすらしていない。

 ミトは黙っていろと言われたので黙っている。


「姫様、また王家の紋章見せてくださいよ!」

「あ、俺見てないっす! 見たいっす!」


「えー、ちょっと恥ずかしいわぁ……でもぉ、しょうがないわよねぇ、見せないとあたしがお姫様だって分からないしぃ」


 自称姫がスカートを少しつまむ。


「え? こんなところで見せるのか?」


 広場のど真ん中で肛門を晒す。

 その羞恥心は並ではないだろう。


 それをやってのけるなら、今後ミトに「偽物でさえ堂々と見せているのに」と言える。

 だったら堂々と晒してほしい。


「はーい、じゃ、見てー」


 少し恥ずかし気に、足を曲げ、スカートを上げる。

 すると、その太もものところに紋章っぽい何かがあった。

 ぎりぎりパンツの見えないところまで、セクシーなお姉さんが上げている。


 おー、と感心する観衆。


「そんなところにあったら、見せびらかして歩くわよ!」


 姫本人がおこだった。


「シューケル! やって!」

「ちょっと待て、まだ微罪だ」

「姫を名乗るのは重罪でしょうが!」


「我が国の王族侮辱罪はそんなに重い罪じゃねえな」

「なんで!」

「国民に文句を言われるのは統治が悪いからだ、っていう陛下のご意思でな」


 また駄々を捏ねるかと思ったら、ミトは人前なのでシューケルと女を交互に睨んで我慢した。


「それでぇ、ちょっと、お金が不足してるのよねぇ、世直ししててぇ。次の税収免除するからぁ、誰かお金出してくんないかなぁって」

「はい、重罪だな」


 シューケルが自称姫の間に割り込んだ。


「な、何よあんた?」


 ボディガードがその前に割り込む。


「身分詐称程度ならともかく、税収を偽って金を騙し取る悪行は許すわけには行かねえな」

「何なのよあんた!?」


「俺は──」

「ちょっと! どうして偽姫より、税収の詐称の方が重罪なのよ!」

「そういうもんなんだよ、少なくともこの国ではな」


「納得できない! これからは偽物の方が重罪にしなさい!」

「お前が王を継いで変えろよ」

「王様を継ぐのは弟よ! 今度言っておくわ!」


 王に直接言えばいいだろ、と思ったが面倒なので黙っていた。


「何よあんた達! おい、やってしまえ!」


 偽姫の上品とは言えない命令で、ボディガードがシューケルに襲いかかる。

 だが、その動きは夜盗レベルのそれで、王宮護衛のシューケルには及ぶべくもない。


 一瞬で片が付いた。


「そこの偽姫、てめえも逮捕だ」

「偽じゃないわよ! 私が本物よ! こんなことすると親父が黙っていねえよ!?」

「王族はマフィアじゃねえんだよ。てめえが偽ものだってのは、分かってんだ。こっちは本物がいるからな」


「誰よ、本物って!」

「カルク、姫様をお押さえしろ!」

「え?」


 いきなり尊敬語を使っての指示。

 カルクは言うまでもなく、ミトの肩を押さえていた。


「この方は、ツクーニ王国王女ミト・ミ・ツクーニ様だ」

「は? そんなわけないじゃないの!」

「よし、否定されたな、要件は満たした、カルク!」


 明らかに、そう導いた感じだが、ダッシュで逃げようとしていたミトは、既にがっちり捕まっていた。


「ちょっと! 駄目よ! こんな人の多い広場で!」

「ひかえおろう、この方をどなたと心得る! ツクーニ王国王女ミト・ミ・ツクーニ様であるぞ!」


 凛、とカルクの声が響く。


「この……こら、抵抗するな、この……。この紋章が目に入らぬか!」


 シューケルは抵抗するミトの尻を無理やり拡げた。

 広場中の視線が、ミトの尻穴に集まる。


「な、によ! そんなの嘘でしょ! あんたも書いたんでしょ!」


 偽姫が言う。

 何気に自分のは書いたと認めてるし。


「こんなの、消してやる!」

「え、ちょっ!」


 偽姫がミトの尻穴をこする。


「ちょ……や……ん!」

「なかなか消えないわね、もっと強くこすれば」

「ダメェェェェェッ!」


 ここはノクターンじゃないので色々省略したけど、性感帯があるからびくんびくんしたりした。


「駄目っ! そんなところこすって、間違って入ったら……!」


 スボッ。


「あーーーーーーーーーっ!」


 入った。


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