第六話 払えるけども。
「じゃ、シューケル、払っといて?」
「いや、ちょっと待てって」
「何よ、払えないの?」
「いや、払えるんだがな」
シューケルはもしものために、めっちゃ大金を持っていた。
だって、彼の世話してる相手、変幻自在の自由人だから。
「ちょっと、あの料理には高すぎじゃねえかってことだ」
「おいおい、踏み倒す気か? だったら──」
「払えぇぇぇぇっ!」
ミトは、高速つけたしを繰り出した。
が、シューケルには止まって見えた。
「美味しい物にはちゃんとそれなりの値段があるの! あれはおいしかったからそれくらいするの!」
「しねえわ! お前本当に馬鹿だろ」
「ちょっと賢い目!」
「あのな? さっきこいつが言った金額で、大体お前の飼ってるブサイク犬の小屋が買えるんだぜ?」
何でそれで例えた?
「安い! あと、私の可愛いドブスちゃんを悪く言わないで!」
可愛いと思ってるならなんでそんな名前付けた?
ちなみにミトの飼ってる犬は、物凄く豪華な一軒家をもらっているが、基本、ミトの部屋にいるから、全然使ってない。
「じゃあ、あれだ、お前の部屋から見える山が二つ買える」
「安い!」
「いや、安くねえだろ」
ちなみに、王女のために都会のど真ん中に立てた造山なんだけど。
「払ってあげなさいよ! 可哀想でしょ?」
「いや、今、可哀想なのは確実にこちらなんだがな」
この問答に店主たち、ちょっと唖然としてる。
「じゃあこれならどうだ、その金額で庶民の家族が二十年は生活できる」
「え!?」
ミトが驚く。
ていうか、こいつの飼ってるドブスの犬小屋、庶民二十年の生活費くらいで出来てるんだ。
「その、庶民の家族は兄弟いるの?」
「あ? んー、じゃあ、兄と妹の四人家族だ」
「お父さんは大食い?」
「知らねえよ、まあ、そこそこ食うんじゃねえか?」
「お母さんは化粧が濃い派?」
「化粧しねえよ」
「妹は朝苦手だけど頑張ってお兄ちゃんを起こしに行く?」
「知らねえしもう関係ねえよ」
「ここ重要だから! ここが一番大事だから!」
「あー……じゃあ、起こしに行くんじゃね?」
シューケルはなんか、面倒になって来た。
「高い!」
なんか、どういう思考なのかはよく分からないけど、やっと値段が高いことに気づいたミト。
「美味しかったけど、そんな値段じゃないわ! シューケル、やりなさい。目を狙いなさい!」
「やだよ! ちょっと懲らしめるだけだ!」
ちなみにシューケルは強いので、目を狙うと確実に相手が失明する。
「じゃあ、目は私が!」
「何で俺を狙うんだ!」
「だって、他の人怖いし!」
「怖いなら後ろで震えてろ」
「そんなのやだ! 私も活躍する!」
「分かった、後で活躍の場を用意してやるから、一旦下がれ」
とりあえず下がらせる。
「えーっと……何だっけ?」
ミトとの会話がアホすぎて、主人達をどうして懲らしめるのか忘れてしまった。
「あー、なんだ、五千万か。払えねえな」
「だったら、娘を置いてきな?」
「じゃあ、そうしよう」
「ここに残ったら、毎日あの料理食べられるの? だったら残る!」
唖然ダブル。
置いて行くと言ったシューケルに唖然としかけた主人が、置いて行かれることを望んでいるミトにダブルで唖然とした。
「残ってもあれは食えねえよ。売られるだけだ」
「あの料理は売り物のじゃないの?」
「違えよ、お前が売られるんだよ」
「売られたらどうなるの?」
「あー……」
「おまんこを毎日人に見られます」
「お前はちょっと黙ってろ」
「ひっ!?」
カルクの余計な一言は、だが、ミトには効いたようで、涙目になる。
「そんなのやだ、ここは白馬の王子様しか見ちゃ駄目なのっ!」
「いや、お前の侍女は毎日見てると思うがな」
高貴な方は基本、召使を人だと思ってないからカウントしない。
その理論で行くなら、毎日メイドとお戯れになっている王子も童貞になるのか。
「とりあえず、今のうちに始めるか……よっ!」
シューケルは何の前触れもなく、戦いを始める。
「てめえっ!」
「カルクは姫を守りながら準備しておけ」
殴りかかって来る数人を軽くよけながら、カルクに指示する。
カルクだけに。
「承知した」
「? 何をするの?」
ミトが不思議そうにしつつも、カルクの陰に隠れる。
「姫様がこの場を治める大活躍をなされる準備をします。今のうちに身体を綺麗にしておいてください。汚される前に」
「う、うん……?」
最後にエロいのが混じって、その意味が分からなかったが、その前のところは分かったので、とりあえず、大活躍の準備のために格好良く見せろ、という事だろう。
ミトはシューケルが戦って、カルクが襲いかかる敵を倒して守っている間に髪を整えていた。
「ねえ、私の活躍はいつ? そろそろいいわよ?」
「そうですか……シューケル!」
「おう!」
シューケルが目の前の敵を倒す。
その間にカルクは姫の腰を肩に載せ、抱え上げる。
「え? え? ちょっと!?」
「ひかえおろう!」
「しまった! 諮られた!」
誰も諮ってねえよ。
破瓜ってやろうか。
「この方をどなたと心得る!」
「取りあえず口で言ってみて! それで駄目ならでいいから! やっぱり駄目!」
「盗賊の時はそれで駄目でした。今は時間がありません。それに、だいたいは口で奉仕しても満足しないから結局されます」
「この──」
シューケルは遠慮のかけらもなくパンツを下ろす。
そして、ぐい、と拡げる。
「紋章が目に入らぬか!」
「…………!」
しん、となる店内。
「暗くてよく見えん! もっと近くで見せろ!」
主人がぐい、と寄って来る。
「いやぁぁぁっ! 鼻息がっ! 鼻息がかかるからっ! かかってるから!」
間近に王女の尻穴を凝視する主人。
「匂いだ! 俺は匂いで分かるんだ!」
「分かるわけないでしょうが! 匂いは普通の可愛い女の子のそれだから!」
可愛いとか付け足すな。
「鼻を押し付けないで! いやぁぁぁっ! 気持ち悪いから!」
「信じられん……もっとだ! もっと拡げて見せろ!」
「駄目ぇぇぇぇっ! そこより下は、王子様しか見ちゃ駄目な部分だからぁぁぁぁぁっ!」
なんか、凄いことになった。
※ これはR15指定です。