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第四話 食事中には読まないでください

『旅に出ます。探さないでください ミト』


「いや、今旅の途中だろうが」

「ちょっ、勝手に見ないでよ!」


 書置きを書いていたミトを後ろから覗き込んだシューケルに怒る。

 そして、つけたしのハンドサインを振りかざす。

 ちなみにそれしか有効な攻撃方法はない。


「別にいいじゃねえか、王族なんて見られてなんぼだろ?」

「場所! 部分! パーツ! 見られてもいい部分ならいくらでも見ればいいし見られてるわ!」


「じゃあ、尻穴も見られてもいい部分にしときゃいいんじゃね? ちゃんとうんこ拭いて、尻毛も剃ってさ」

「王女はうんこなんてしないのっ! 毛だって生えて……生えてない……?」


 見えない場所だからちょっと不安になって、そっとカルクに訊いてみる。


「びっしりボーボーです」

「シューケルには訊いてないっ! それにさすがにそんなことないっ!」


「おまんこならボーボーでした」

「知ってる! それは自分で見てるし! って、いつ見たの!? さっき見えた!?」

「想像でした」


 想像を肯定してしまったミト。

 まあ、この歳でボーボーじゃないなら逆に心配だよね。


「私のそっちは、白馬の王子様しか見ないのっ! だから誰も知らないはずなのっ!」

「なあ、王女。お前ももう十六歳なんだ、そういう幻想はもうやめろ」

「幻想じゃない! 現実!」


「王女なんて外交の道具でしかねえんだぞ? お前はどこかの国と友好を結ぶために嫁ぐことになるんだ。それを理解しとけよ」

「その人が白馬の王子なのっ!」

「どっかのおっさんだろ。ちょうど適齢期の王子がいつもいると思うな?」


 シューケルはミトに現実を突きつけたが、涙目になったので、それ以上はやめた。


「とにかく、全部が全部お前のせいだ、諦めろ」

「諦めない!」


「どうにかするつもりなのかよ?」

「とにかく諦めない!」


「方法は?」

「諦めないこと!」


「お前馬鹿だろ」

「ちょっと賢い目!」


 だめだ、話にならない。


「そういうのを何とかするのがあんたの仕事でしょうが! 何とかしなさい!」

「諦めろ」

「諦めない!」


 平行線だ、いつもの事だけど。

 で、こういう時に間に入るのがカルクなんだけど。


「殿下、浣腸であらかじめ放糞()しておけばいいのでは?」

「王女はうんこなんてしないのっ!」


 さっきからうんこうんこって、こいつら何言ってんだ。

 ちなみにカレー味のカレーと、美少女のうんこ味のうんこならどちらを食べる? という叙述トリックを考えた。

 「美少女のうんこ味のうんこ」は「美少女のうんこ」とは一言も言ってないんだよな。


「ちなみに国王陛下は殿下には良縁をお望みです。きっと良い農耕馬に乗った王子様の元に嫁がれることでしょう」

「どうして農耕馬!?」

「農業の強い国が一番豊かだからです」


 あら、意外にまともな意見。


「それに農耕馬に乗っているという事は王子自ら農業をしている可能性があります。そんな力強い殿方はセックスがとても強く激しいと思われます」

「そういうのはいいから」


「それに、農耕民族は狩猟民族よりセックスが長く、ねっとりとしているのです!」

「だから、もういいって!」


 涙目のミト。

 この子すぐ涙目になるね。


「王子自ら農作業するって、結構小さな国家だろ」

「男の価値は国の大きさではなく、男性器の大きさだ。お前も男ならそれくらいは考えろ」

「いや、考えねえし」


 ちなみにちんちんが大きければ女の子が喜ぶっていうのはデマだからね?

 喜ぶのはセックスしまくってがばがばな熟女か風俗嬢くらい。

 大抵痛がられる。


「まあ、とにかく、だ。お前が尻穴見せたのがショックなのは分かる。俺なら恥ずかしくて自殺してる。お前はのうのうと生きている分恥に対する耐久性が強いんだろう、それは誇ってもいい」

「お前をころっすーああああー」


 ミトがつけたしのハンドサインで襲いかかって来るが、シューケルはそれを片手で受け止める。


「落ち着けよ。ショックを受けたのも、元を正せば自業自得だろ?」

「なんで!」


「お前が歩いて帰りたいとか言い出したから、強盗に襲われたんだろ。その結果最も平和的な解決として王手の紋章を見せる羽目になったんだろ?」

「そんな正論、聞きたくないっ!」


 駄目だこの姫様。


「そろそろ私を慰めたらどうなの?」

「ていうか、俺を慰めろよ。目の前でお前のうんこが出てくる穴を見せられて、嫌な思い……あっぶなっ!」


 ミトのつけたしが、シューケルを襲い、油断していたシューケルは、危うく目をやられるところだった。


「シューケルは、一度ひどい目に遭わせたいっ!」

「今まさに遭ってるがな! 雇用主のクソガキのせいで!」

「うがぁぁぁぁっ!」


 襲いかかってきたが、今度は油断してなかったので避けた。


「そろそろ飯に行こうぜ? 腹も減っただろ?」

「おなかは減った! でも、シューケルは泣かせる!」


 つけたしのハンドサインで攻撃してくるミトを適当にかわして、シューケルは宿から外に出る。


「今日はシーフードサラダとスープがいい!」

「そんなものはない」


「探して!」

「ここは街道だが、山の方だから、わざわざ海鮮出す店なんてねえよ。海鮮はすぐ腐るしな」


「でも、お城はここより山にあるけどよく出るよ?」

「それはお前が好物だから、特別に届けてもらってんだろ。多分、すげえ金かかってんぞ?」


「じゃあ、ここでもお金かかってもいいから!」

「金かかってもねえよ!」

「何でよ!」


「売れねえものは高くても置かねえんだよ!」

「だから、買うって言ってるでしょうが!」


 何度も言うけど、ミトお姫様は馬鹿じゃない。

 そこそこ賢い女の子ではある。

 流通も商売も一応は理解してはいる。

 だけど、それはあくまで理論の話だ。

 実際に生活していて、店を出し、利益を上げようとしている人の立場になって考えるとことまでは知らないし、別に知る必要もないのだ。


「あのな? 高くても海鮮があるってことは、その海鮮を毎日仕入れているって事だろ?」

「そうね?」


「仕入れても、誰も食わなきゃ損になるだろ?」

「だから、私が食べるの!」


「うん、だから、今日お前がここに来て、食べることが最初から分かっていて、しかもその店主に海鮮を自信をもって提供できる腕があるなら出すだろうな。だが、お前が急にきて出せと言われても仕入れなんかしてねえし、海鮮料理に自信があるなら、こんなところで店なんて開かねえだろうな」

「じゃあどうするのよ!」

「我慢しろ」


「あれも我慢、これも我慢! どうして我慢ばっかりさせられるの!」

「お前が歩いて帰りたいなんて言うからだろうが!」


「とにかく、私の傷を癒せるような料理を出しなさい!」

「じゃあ、うんこでも食っとけ。さっきの穴から出て来るだろ」

「王女からは出てこない!」


 お食事中の方、食が進んでしまってごめんなさい。


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