第二話 庶民に身をやつしてみる
ツクーニ王国の王族は、大地の神ギーガの末裔とも言われており、その正当な末裔には地の精霊の祝福がある。
それは彼らの身体に紋章となって表れる。
彼らの身体には、祝福を受けた証となる紋章が描かれている。
そしてそれこそが、正当な王家の証でもある。
それを王家、そして国家の紋章として掲げているツクーニ王国の国民で、それを知らない者はいない。
だが、その紋章が身体のどの部分にあるのか。
それは、知っている者の方が少ない。
とにかく、身体にその紋章がある者は、正当な王家の者なのだ。
「おら、さっさときりきり歩け!」
「態度! 王女様への態度!」
「というかさ、王女様だってバレたら駄目だろ」
「バレてもいいでしょ!」
「あのな? 身分は隠しておかないと、いろいろ面倒ごとに巻き込まれるんだよ! 王女だと分からなくてもその恰好じゃ貴族と間違えられるだろうが!」
「面白そう!」
「お前、殺されるかも知れないんだぞ!」
「弟が後を継ぐから考えなくてもいい!」
「だから! ……何だよ?」
シューケルが罵声の一つでも浴びせようとするのをカルクが制する。
「王女殿下、王女殿下のような美しい姫君は、殺されることはありません。もっと惨たらしい目に遭います」
「……え? え?」
「凌辱です」
「…………っ!」
世間知らずのお姫様は、声も出なくなった。
「殿下の服は切り裂かれ、生まれたままの姿をむくつけき男どもの目に晒され、そして大きくて臭いその肉棒を哀れな殿下のおまんこに──」
「もういい! 止めろ! 王女泣いてるから!」
王女はメンタルも強い方だけど、お姫様だから、エロとかそういう方面ではとことん弱い。
「ど、どうしよう! シューケル! 何とかして!」
「だから、最初に言っただろうが! もう馬車は返したから今更遅いわ!」
「そ、そんなあ……」
結構ガチ泣きに近い。
これで好奇心旺盛で危険なところにも平気で行こうとする行動力が削がれればいいな、とシューケルは思っていた。
「まあ、そうならないって自信があるから俺もカルクも行くって言ったんだ、そんなことはまずないから安心しろ」
「信用できない! 特にシューケルは!」
「んだとこらぁ!」
「どうせ私がそういう事されてる時に笑って見てる気でしょ! 分かるのよ!」
「そんなことしたら俺が帰って処刑されるわ!」
「じゃ、それ以外! それ以外にも対策立てて!」
それは完全に信用してねえだろ、とシューケルは思ってる。
「んー、まあ、とりあえず、服がまずいな。もっとこう庶民的な服にしとけ」
「私のはそんなに派手じゃないけど、シューケルのは派手! カルクのも! 二人とも裸でついて来なさい!」
ドヤ顔のミト王女。
「かしこまりました、殿下」
「分かった分かった、脱げばいいんだろ?」
「え? ちょ、ちょっと? 待って! 脱がなくていい!」
王女が慌てて止める。
「何だよ、お前が脱げって言ったんだろ?」
「本当に脱ぐとは思わなかったのよ! どうして脱ぐのよ!」
「王女殿下のご命令ですから」
シューケルが慇懃に頭を下げる。
「どうしてこんな時だけ! じゃあいつもそうして!?」
「お断りいたします、王女殿下」
「王女様の言う事を聞くのは普通でしょうが!」
「もろちんです、王女殿下」
「きゃぁぁぁぁぁっ!」
誤字じゃないよ?
「うわぁぁぁぁぁんっ! ジューゲルがー! ジューゲルがー!」
王女は十六歳の女のことは思えないほどのガチ泣きをした。
「シューケル、あなたはどうしていつも!」
「悪かったよ! さすがにここまで泣くとは思わなかったよ……」
「肉棒は出すものではなく、挿入れるものです。あなたも近衛ならそう心得なさい」
「……すっげえ色々ツッコみたいけど、まあ、心得ておこう」
多分いいことを言ったんだと思うけど、もう原型もなかったので分からないけど、とりあえずそう言った。
「王女も、ごめんな?」
「ヴァー!」
「もう絶対に見せないからさ」
「本当……? ぐずっ」
「ああ、本当だ」
本来は可愛い女の子だけど、号泣していたので、鼻水は垂れかけているわ、目が真っ赤だわで、大変になっていた。
「じゃ、じゃあ、何かお詫びしてくれる?」
「お詫び? そうだな……」
シューケルは考え込む、この場合何をお詫びすればいいんだろうか?
そうだ、同じことを仕返しされればいいのかもしれない。
「じゃ、今度、王女の股間も見てやるからさ」
「ヴァー!」
「俺だって見るのは嫌だしゾッとするけど、ちゃんと見てやるからさ」
「ヴァッ! ヴァッ! ヴァー!」
「うわっ! 危ねっ!」
つけたしのハンドサインで目を狙ってくる王女。
「シューケル、それはさすがに失礼です。あなたの不潔な仮性と殿下の高貴で神聖なおまんこを同列に扱うなど無礼にも程があります」
「仮性ちゃうし!」
「真性には見えなかったけれど」
「ずる剥けだって!」
正直、シューケルのちんちんの形状には何の興味がない。
とりあえずどうしようもないので、王女が泣き止むまでみんなでトイレ休憩にした。
「で、どうするの?」
「とりあえず、服装を変えるのは必須だな。そこらの村娘裸にしてそれを着ろ」
「国民にそんなこと出来ないわ!」
「私が買ってきましょう」
そんなわけで、村娘二人と村の若者の格好になった。