衝撃の事実
「ようこそ、お越しくださいました」
若々しい声が聞こえた。声の主は、俺の前方10メートル先の玉座のようなものに座っている妖精だった。その周りには何人かの妖精が立っていた。
「隼人様ですね。お待ちしておりました」
とても丁寧に歓迎される。もしかしてこいつが…
「あんたが妖精の王か?」
「はい、わたしは妖精王、フュウと申します」
フュウと名乗った妖精王は、俺が予想していたような、白髪で白ひげでヨボヨボしているやつではなかった。見た感じでは、俺と同い年くらいかもしれない。
「隼人様、言葉遣いには気をつけてください。目の前におられるのは、妖精王ですよ」
リリーが俺に耳打ちをしてくる。王にはその声が聞こえたらしい。
「そのままで構いませんよ」
なんとも優しい王様だ。世界がこの王みたいなやつであふれていたら、さぞかし平和なのだろう。
「リリー、よくやったね。君には感謝しているよ」
「い、いえ、とんでもございません!」
リリーは突然の感謝の言葉に驚いたのか、あたふたしている。
さて、前置きはこのくらいにしてそろそろ本題に入ろう。
「なあ、妖精王」
「フュウとお呼びください」
「お、…じゃあフュウ、聞いていいか」
「何でも聞いてください」
フュウは笑顔でそう答える。俺はこの時点で、この状況が少しおかしいことに気づく。俺は悪魔と戦うためにここに来たのだ。なのにさっきから、妖精側からは緊張感のかけらも感じられない。
「その、……悪魔との関係は今どんな感じなんだ?」
その瞬間、横であたふたしていたリリーが固まった。
「悪魔との関係…ですか?」
フュウはピンときてないらしく、周りの妖精たちも頭の上にはてなマークが出てきそうな顔をしている。
これは一体どういうことだ。おかしい。おかしすぎる。
俺がリリーの方を見ると目が合った。だが、リリーはすぐに目をそらす。
「おまえ、まさか…」
俺はこの状況から、ある結論を導き出していた。だが、俺はそれを受け入れられなかった。認めたくなかった。
「あのー、隼人様、えっとー、これはですねー……」
明らかに怪しい態度をとるリリー。だが、俺はまだ認めない。
「なあリリー。俺は悪魔と戦うためにここに来た。そうだろ?だから、フュウともちゃんと話をしないと」
といって、フュウの方を見るが首をかしげている。やめてくれ。これ以上、そんなことは知りませんという態度をとるのはやめてくれ。
するとフュウは、何かを思いついたかのように笑顔で喋り出す。
「そうか。リリー、これはまたすごい嘘を考えましたね」
………。
今、この王は嘘って言ったのか?いやいやまさか、そんなはずはない。そういえば最近、耳が悪くなってる気がするなー。さて、改めて王と悪魔の話を……
「隼人様!申し訳ございませんでした!」
リリーが俺の目の前に来て土下座をする。俺はついに、導き出した結論を認めることになる。
こいつ、やりやがった。俺を騙しやがった。あの真剣さは演技だったんだ。俺は本気で応えようとしたのに。こいつはそれを踏みにじりやがった。
こうなったらもう、俺がここにいる理由はない。こんな世界どうでもいい。
俺は体の向きを変え、扉の方に向かう。
「待ってください!隼人様!」
俺はそんな言葉に聞く耳を持たず、その場から去った。