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妖精王のもとへ

「なあ、リリー」


「はい?何でしょう?」


俺は今、妖精の王のところに向かっているわけだが、さっきから周りの視線が痛い。それもそのはず、周りには妖精と、その妖精たちの家やらなんやらが建っているわけで、今の俺の状況を表すと、某人気漫画の巨人のような感じだ。


「どうにかなんないのかよ、この大きさ」


するとリリーは、何かを思い出したかのように一瞬動きが止まった。


「あ!すみません、妖精エリアでは小さくなってもらうのを忘れてました、ごめんなさい!」


リリーは俺の目の前で全力の土下座を披露し、全力で謝罪してくる。視線が痛い。状況がさらに悪くなった。

どうやら俺は今、妖精エリアにいるらしい。そういえばさっき小さい門を乗り越えたな。あれが境目だったのか。


「魔法を使えば小さくなることができます」


「ったく、んじゃあ、ん」


俺はリリーの方に手を出す。


「何ですか?」


「本だよ、本。魔法書」


あの本がなければ俺は魔法を使うことができない。その点でいうと、少し不便かもしれない。


「魔法書なら自分で出すことができますよ」


初耳だ。最初に魔法を使ったときだって、リリーが魔法書を出したのだ。あれを自分で出せるなんて知らない。


「どうやって出すんだ?」


「前に手を出して、ブック、といってください」


俺は言われた通りにやってみる。


「ブック」


すると、目の前に本が現れた。これはすごい。さっきの不便発言を撤回する。これならいつでも好きな時に

魔法が使えるわけだ。


「小さくなるための魔法はなんだ?」


「ミニマム、です」


俺はミニマムの文字を探す。というか今気づいたが、この魔法書、かなりページ数があるぞ。こりゃ見つけらんないぞ。


「探さなくても大丈夫です。自分で、この魔法を使いたい、と思えば勝手にそのページを開いてくれます」


便利すぎるだろ。ここまで本に対して感心したのは初めてだ。


「ミニマム……おっ!」


魔法を唱えると、みるみる体が小さくなっていく。そして、妖精と同じくらいの大きさになった。


「おー、なんか気持ち悪いな」


今まで小さかったやつが、急に自分と同じくらいの大きさになるのは、違和感がありすぎてなんとも気持ち悪い。


「そんなこと言わないでくださいよ」


リリーが少しムッとした表情をする。別に何も可愛くないぞ。


「でもよ、これが使えるなら、わざわざ人間サイドと妖精サイドで分ける必要なかったんじゃないのか?」


「それはだめです。小さくなっている間、魔力を消費し続けるわけなので、ずっとその状態を保つのは不可能なんです」


なるほど、それは納得できる。少し考えれば分かることだったか。


「あ、見えてきましたよ」


リリーが指差す方向に、城のような建物が建っていた。どうやらあそこに王はいるらしい。さて、どんな妖精なのだろうか。






「へー、結構ちゃんとしてんな」


目の前まで来るとその凄さが分かる。あまり派手な感じではないが、細部まできっちりと作り込まれているようだ。扉の前には、二人の妖精が立っていた。


「どうぞお入りください」


俺を見るやいなや、その二人はすぐに扉を開けてくれた。軽く会釈をして、俺は足を踏み入れた。

中も綺麗で、ついつい見入ってしまう。


「すごいな」


「そう言っていただけて嬉しいです」


一度くらいこんな場所に住んでみたいものだ。と、あれこれ考えていると、前から誰かが歩いてくるのに気づいた。

あっちも気づいたようで、視線を向けてくる。二人の男女。女の方が、羽がついているから妖精で、男の方はもしかして……


「おまえも人間か?」


相手の方から尋ねてきた。どうやら男は俺と同じ人間らしい。ということは、やつも魔力を持っている人間なのか。


「ああ、そうだ」


俺はただ質問に答える。


「そうか……まあ、気を引き締めておくんだな」


そういうと男は扉の方へと歩いていった。

俺は、男の言葉の意味を考えた。気を引き締めるということは、それだけ大変なことが起きるということ。男に何があったのかは分からないが、その言葉を信じることにした。


「なあ、そういえば、俺のほかに魔力を持った人間は何人いるんだ?」


「だいたい百人くらいでしょうか。でも、全員が来てくれるとは限らないので、ここにいるのはもう少し少ないかもしれません」


百人か。多いような少ないような数字だな。だが、俺のほかにもここにきているやつはいるみたいだから、少しほっとした。


「ここです」


扉の前に立つ。この奥に妖精の王がいるわけだ。俺は、一度深呼吸をする。


「入りましょう」


そして扉が開かれた。







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