理由
「……そういえば、おまえの名前、なんて言うんだ?」
今までおまえ呼ばわりしていたため、名前を聞くのを忘れていた。
「リリー」
「え?なんて?」
「リリー!……って言います」
「へー、結構普通だな」
ここで俺は話を変えて、さっきからずっと気になっていたことを聞くことにする。
「んー、まぁ、とりあえず妖精とか魔法とかは信じることにした。でも、まだ信じられないことがあるんだよ。さっきおまえ、世界が滅亡するとかなんとか言ってたよな?」
「はい、言いました」
リリーの顔が変わった。
「そのことについて、詳しく聞かせてくれないか」
もしこれが本当のことだったら、大変だ。魔法が使えることに喜んでいる場合ではない。ここは、しっかり聞く必要がある。
「……はい」
だがリリーはなかなか話し始めない。何を躊躇しているんだこいつは。
「おい」
と声をかけると、少しの沈黙のあと、ようやく話し始めた。
「……私たち妖精は、ここ、人間界ではなく、妖精界で暮らしています」
「妖精界?」
「はい。人間界とは別の次元に存在する場所です」
「別の次元、ねー…」
今は、リリーの言うことは全て信じることにしよう。
「一昔前、妖精界ではあることが原因で、妖精界の隣にある悪魔界と争いが起こってしまったんです」
「悪魔………」
何言ってんだこいつ。いやいや、今は信じよう。
「その原因ってのは?」
「人間を支配するかどうか、です」
「支配?」
何言ってんだこいつ。だが、今は信じよう。
「私たち妖精と悪魔は、みんな魔法を使うことができます。そこで、悪魔が、魔法を使ってこの人間界を乗っ取ろうとしたんです」
確かにあんな魔法が使えたら、乗っ取るのは簡単なのかもしれない。
「しかし、妖精はそれに反対しました。平和を望んでいたんです。こうして、妖精と悪魔は対立して、争いが起こったのです」
「なるほど、……で、どうなったんだ?」
「争いを続ける中で相手の気持ちを理解した両者は、和平を結ぶことにし、平穏が訪れました」
「なんだ、解決してるじゃないか」
「いえ、問題はここからです」
リリーは一旦深呼吸して、再び口を開く。
「先日、ある妖精が、悪魔を攻撃してしまったんです」
「は⁈なんで⁈」
和平を結んだんじゃなかったのか?なんで攻撃なんて………。
「それが、……私にもよく分からないのですが、聞いた話によると、『当たっちゃった』と」
「………は?」
なんだそれ、ふざけてるのか?
「だから、私にもよく分からないんです。……そして、それに怒った悪魔が、今、私たちを滅ぼさんと計画しているみたいなんです」
「……とりあえず、話の流れはだいたい分かった」
悪魔とか言われても意味がわからないが、妖精が存在するなら、悪魔だって存在するのかもしれない。
「で、それがどうやって人間の滅亡につながるんだ?」
「はい、悪魔は当初の目的を諦めきれていないらしく、私たちを滅ぼしたあと、人間界も乗っ取ろうとしているのです」
「なるほどな」
リリーの真剣な様子を見ると、どうやら全て本当のことのようだ(まだ分からないことだらけだが)。
「そこで、私たちだけでは悪魔の攻撃を防ぎきれないため、隼人様のような、魔力を持った方々に協力をお願いしているのです」
「じゃあ今、俺のほかにもこうして交渉されてるやつがいるのか?」
「はい。どうですか?協力していただけませんか?」
「んー、昔は対等に戦えてたんだろ?じゃあ今回も…」
「いえ、そのときは、強力な魔法を使える方たちがたくさんいたのでなんとかなりましたが、今はそうもいきません。みなさん、力が衰えてしまって、戦える状態じゃないんです。逆に悪魔は、力をどんどんつけていて、差は歴然としています」
それは大変だ。他者に協力を求めるのも無理はない。
「隼人様!」
リリーが目の前までやってくる。
「どうか、力を貸してください!お願いします!」
リリーは真剣な眼差しで、そう言った。