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魔法

「くっ」


大ダメージを受けた。やばい。ここまでボスが強いとは思わなかった。このままじゃ負ける。けど、こっちにはまだ奥の手が残ってる。これで終わらせる。


「くらえー!」


ドーン。ボスが倒れる。エンドロールが流れ始めた。やっと勝てた。プレイ時間約30時間。今回のは結構良作だったな。


「わー、すごーい。やりましたね!」


妖精が自分のことのように喜んでいる。




家に帰ってきて2時間が経った。あれから俺は、こいつに対して声を出してはいない。つまり、無視をしている。


「あのー、聞こえてるんですよね?返事してくださいよ〜」


「………」


いつまでいるんだこいつは。そろそろ諦めるだろうと思っていたが、なかなか帰らない。やっぱり俺と話をするまで帰らないのか…。


「7時か」


そろそろ夕飯を作る時間だ。今日はカレーを作るつもりでいる。早速準備に取り掛かろう。


料理を初めて何年か経つ。だいぶ慣れてきた。最近は、自分でレシピを考えたりする。俺の家事レベルがどんどん上がっていく。これなら、将来一人になっても大丈夫だな………。なんか悲しくなってきた。


「美味しそうな匂いがします。早く食べたいな〜」


妖精が目を輝かせている。いや、お前の分はないけどな。




「ふー」


一日の疲れが一気に吹っ飛んでいく。やっぱり風呂はいいな。妖精はさすがに風呂まではついてこず、周りには誰もいない。


さて、どうしたものか。あの妖精は、帰る気配が全くない。もう、いっそのこと話してみるか。いや、でもな………。ま、とりあえず無視するか。


「あ、あがってきましたね。さあ、そろそろ話をしましょう」


「………」


さてと、今日はたしか、特番がやってるはずだ。俺の好きなタレントも出てるしな。これを見逃すわけにはいかない。


「………。まだ無視を続けるつもりですね…。さすがに怒りましたよ!こうなったらこうしてやります!」


妖精が近寄ってくる。


「いきますよ〜。スーパーアルティメットスーパーキーーック‼︎」


ツッコミどころ満載の言葉が聞こえた瞬間、俺のスネに激痛が走る。


「いっ…てぇーーー‼︎」


なんつーパワーだ。こんな小さい体から繰り出された蹴りとは思えない。


「何しやがんだてめー!」


「そっちが無視するのが悪いんですよ!」


妖精は、顔をパンパンに膨らませて怒っている。さすがに我慢の限界だったか。こうなってしまったらしょうがない。


「お前は何なんだよ。何でずっと俺のところにいるんだよ」


「やっと聞く気になりましたか。……オホンッ、わたしは妖精です」


「本物の妖精か?作り物とかじゃなくて?」


「本物ですっ!」


妖精は力強くそう言いはった。 なんとも信じ難いことだか、現にこうして、俺の目に見えているし(幻覚かもしれないが)、会話もしている。今は認めることにしよう。


「じゃあ、お前の目的は何だ。俺に何か用でもあるのか?」


「実はですね……一緒に世界を救って欲しいのです」


はいきたー、冒険展開きましたー。予想的中。しかも展開がベタすぎて、疑っちゃうレベルだな、これ。


「世界を救うってマジで言ってんの?」


「はい」


マジかよ。世界を救うってことは、今、この世界は滅亡の危機にあるってことになるのか。確かに地球温暖化やらなんやら言われてるが、滅亡するとは聞いたことがない。


「このままだと、世界は滅んじまうってことなのか?」


「はい、そうです」


嘘をついているようには見えない。もしかして、本当に……。でも、もし仮にそうだとしても……


「何で俺なんだ?」


「それは、隼人様が世界を救う力を持っているからです」


「世界を救う力?俺に?……ってか、何で俺の名前知ってんだよ」


「それはもちろん、隼人様を探しにここまで来たんですから、当然です」


「……力って……どんな力何だ?」


「魔力です。魔力」


「………」


妖精の存在は認めてやったが、さすがに魔力とか言われると、一気に話を聞く気が失せた。


「隼人様は、人類の中で一番の魔力を持っているのです。ですのでーー」


「あー、もういいよ、そういうの。だから帰っていいよ」


「あ!信じてませんね!」


「当たり前だろ!何だ魔力って!そんなもん、この世界にあるわけねえだろ!」


「あるんです!本当ですよ!」


「そこまで言うなら証明してみろよ」


「分かりました。では、ついてきてください」


「は?どこ行くんだよ」


「言われた通り、証明しに行くんです。だからついてきてください」




近所の公園に来た。外はもう真っ暗で、公園にいる人は一人もいない。


「で、何をするんだよ」


「これを持ってください」


妖精はいつの間にか用意していた、一冊の本を俺に渡してきた。


「何だ、これ」


「魔法書です」


「魔法書?これが?」


「はい。本を開いてみてください」


本を開いてみると、そこにはある文字が書かれていた。


「ん?これは……」


「そうですね……あの壁に向かって、叫んでみてください」


「壁?あー、あれか…」


その壁というのは、この公園の唯一誇れるものであり、よく子供がボールを使って遊んでいる。


「あそこに向かって、この言葉を言えばいいのか?」


「はい、そうすればきっと、信じてもらえるはずです」


自分から、証明してみろ、と言ってしまったからにはやるしかない。まあ、何も起きないだろうが。


「いくぞ……エクスプロージョン!」


ドカーーーン


「………」



20時36分。公園の唯一の誇りが、一瞬にして消えました。



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