5 襲いかかる脅威
な、なんだ・・・。なんだって言うんだ。斬られたはずなのに傷一つもつけてない。ましては死んでもいねぇ。わかってくれ。アイツに斬られたんだ。だけど生きてる。だが痛みだけが感じる。
時は遡る。
家康、源氏、咲、光、秀美、サリーと平香はお台場にあるショッピングモールで買い物しに来た。
「ところで家康くん、なんだその服は?」
見てみると、家康のTシャツにはアニメの絵が描かれていた。
「知らないのかい、『マジカルアイドルハイスクール』の水瀬絵梨だよ」
「着ていて恥ずかしくないのかい?」
「これぐらいどうだってことはない、平香もロリータファッションをして平気だから。そんなことより君もオタクだからそうしたっていいんだぜ?」
「これを着るのはアキバとブクロぐらいだよ。こんな公共の場で恥ずかしくて着れないよ」
「消極的だなぁ、もっとポジティブにいこうぜ」
「いや、すごい目立つほどのインパクトだが・・・」
秀美がツッコんだ。
家康がスマートウォッチで時刻を確認すると「そろそろおなか空かない? 鴨鍋食べたいな」とみんなに言いだした。
するとどこかで叫び声が聞こえた。
家康も叫び声の元へ向かった。
駆けつけると、一人の女性が男性の集団に絡まれていた。
家康が笑顔で止めに入った。
「おいおい、その辺にしておきな。彼女が困ってるんじゃないか」
「あぁ~ん? ガキが、名を名乗れ」
「俺は、徳川家康だ」
「トクガワ・・・イエヤス・・・?」
周囲がその名前にどよめきだした。
男の集団はしばらく黙った後、大声で笑いだした。その途端、家康の過去の記憶がフラッシュバックした。
「おまえ、マジで言ってんの? 徳川家康って・・・ お前ふざけてんじゃねぇのか? 馬鹿な名前を考えたなぁ、お前の親は。それにこの服装、親も本家将軍もあきれてるにちげーねぇ!」
さらに大声で笑いだした。家康は無言のまま下を向いた。
「いい加減にしろ!」大声で怒鳴ったのは光だった。
すると、家康が突然笑いだし、一斉にドン引きした。
「そうだよな、おかしいよな。こっちも笑っちゃうくらいだ! 俺もおかしいと思ったのさ、なんて名をつけたのだろうな俺の親は。納得するまでバカにすればいいさ!」
ケラケラと偉そうに笑いだす家康。
集団は呆れた顔をして「へっ、わかったよ。彼女に近づくなっていうんでしょ。今はこの辺にしとこう。だが、次あったら容赦しねぇからな」そういって彼女の拘束から解放され、「じゃあな、将軍さんよ」と高らかに笑いながらこの場から立ち去った。
「おい、家康、大丈夫か」
光が家康にそっと声を掛けた。
「え? あぁ気にすんな! これぐらいどうだってことねぇよ!」
いつもの笑顔を見せた家康。他のみんなは心配そうに家康を見つめていた。
その日の夜のこと、王子の川を流れる公園の高架下で、助けてほしいというSNSの反応を聞きつけ、東京捜査部が集まってきた。
「で、どうするの? またアイツらだぞ」
その助けのあるじはショッピングモールで助け出した女性だった。
「アイツら、二度と手を出さないって言ったろ」
光は大きくため息をついた。家康は無言のままだ。
午後9時をまわった頃、家康は一人、黒いパーカーをフードで顔を隠しポケットに両手を入れながら、あの日起きたショッピングモールにいた。店舗はすでに閉店し、ところどころシャッターが下ろされている。
誰かに見られている。一人ではない、複数いる。横から昼間の大男が姿を現し、こちらを恨み目線で近づいてきた。
「よぉ、将軍さんよぉ〜。一人で来るとはいい度胸だなぁ」
「一人じゃないぜ」と答え、フードを取ると同時に素顔を見せ、「彼女が大事なものをお前が持っていると噂で聞きつけた。返してもらおう」と本来ならば怒りを込めていると思いきや、普段ののほほんとした雰囲気で言った。
「ふん、タダで返すとは思うなよ」
「そうくると思ってた」
ヤンキーが刀を取り出した。
「ほぉ〜。そうくるか」
家康は納得するかのようにぼやき、家康も刀を抜こうとしようとした。と、とっさに相手のヤンキーから刀を構え、斬りかかった!
家康はその瞬間、独自の抜刀術でヤンキー大男を一瞬で斬りつけた。ヤンキー大男も奥から手前を倒すように刀を振り落とした。
その瞬間、一体どっちが勝ったか周りの人はうずくまった。何秒間両者とも同じ体勢を取っていたが、ついにヤンキー大男のほうが先に倒れた。同時に家康は斬る体勢から元に戻した。勝者は家康だと誰もが確信するはずだった。
すると、ヤンキーが起き上がった。ヤンキー大男の斬りついた痕には血が吹き出すどころか斬り口もなかった。
「安心せえ。単なる峰打ちだ。俺は無用な殺生は好まないものでね」
と余裕の表情をする家康に男は憤り、
「なにぃ!? 馬鹿にしやがって!!」
家康に向かって思いっきり剣をふりかかろうとしたその時、
「あいたたたたたたたたたあ〜ぁ!!!!」
突然大男に斬ったところから激痛が走った。
「だが、その痛みは精神が思いやられるほど残る。命拾いしてもらったことをありがたく思え」
「や、野郎・・・。よくもリーダーを!!」
周りのヤンキーたちが一斉に刀や棒、バット、さらには釘バットを構え家康に襲いかかった。
一人は刀を縦に振りかざすも弾かれ、バットも棒もごとごとなく弾かれた。
一時、家康は苦戦を強いられたが、家康の見事な剣さばきになすすべなく、次々とヤンキーたちは倒れていった。それでもやはり斬られたヤンキーたちに血は出していなかった。しばらく経ってヤンキーたちに激痛を訴える嘆き苦み身体をうずくまり、バタバタした。ふと思った家康は最初に斬りかかったヤンキーに近づいた。
「や、やめてくれ・・・」
「そうじゃない。ちょっと見たいものがあってな。上半身裸になってもらおう」
「裸・・・だと・・・」
ヤンキーはとくに脱げと命令させたわけでもなく、なんも抵抗することなくその場でTシャツを脱いだ。
脱ぐと、今度は背を向けと命令させ、ゆっくりと背を向くと龍の刺青が描かれていた。
「やっぱり・・・」
家康は何かを確信したそうだ。とっさに家康はスマートフォンを取り出し、その刺青の写真を撮り続けた。
「ほーら、いい写真撮れるじゃん~♪」
すっかり気を取られると、
「見させておいたよ」
声の主は秀美だ。
「お、お前いつの間に!」
「やはり只者の剣客じゃないわね」
「ところで、その刺青を調べて何か思いついたの?」
「こいつは・・・、親父がもっとも嫌われ者だったヤクザ集団にちがいない・・・」
秀美は少し驚いた。