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4 都会の妖獣

世におそろしいのは、勇者ではなく、臆病者だ。

             ―――――徳川家康

 「や・・・やめて・・・・・・くれぇ」


 一人の老人が鼻血を出し顔面痣だらけでかばんを抱えたままビルとビルの間の路地裏に寝転がっていた。老人が寝転がりながら後ろを振り向くと、バイクを乗った若い青年達が群がっていた。


 「なんだよ。ただ中身が興味あるだけだぜ?」

 オレンジにどくろのペストを着た青年が言った。


 「おいおっさん。いい加減にしねぇか。本気で殺すぞ」


 老人はもがきながら「そ、それは絶対に渡しちゃ・・・いかん・・・」と息切れしていた。


 「小癪(こしゃく)な。おい、とっとと片付けようぜ」


 「おっさんいい加減にせんか!」


 すると、

 「なんだテメェは。テメェも死にたいのか?」

 一人の男がバイク集団の背後に突っ立っていた。とっさに男はバイクのライトによってまばゆい光を放つ棒みたいな物を取り出した。握っていたのは日本刀。


 「おいおい、正気か? どうみてもオモチャにしかみえんぞ。冗談はよしな」

 バイク集団は一斉に笑い出した。


 「アンタも引いたほうがいいぜ? いいや、引かせないなぁ。ちょいと見せられないものを見せられてしまったら困るぜ。俺の仲間に入るかあのおっさんのようになるかだ」


 男は黙っていたままだ。


 「どうしたんだ? どっちにしたいのかはっきりしたほうがいいぜ」


 一人の少し太った黒い服の青年が男に近づいた。手には金属バットが握っている。


 すると男は「お前達だって、命拾いしてもいいんだぜ」と口をだした。


 青年は微笑み「フフフ・・・勘違いしちゃ困るぜ・・・・・・なめてんじゃないぞ!」と、とっさに青年が金属バットを男に目かげて大きく振った! 


 その時だった。青年達の頬に何か付いた。人差し指に頬を軽く付け見ると赤い液体が付いていた。青年は男を見る途端に目を大きく開いた。そこには血まみれで倒れている太った黒い服の青年が目の前に映って、男が持っている日本刀は赤く光っていた。頬に付いていたのは、その青年の血だ。


 「おい、嘘だろ・・・」


 青年達は怯えた状態ですぐさまバイクに乗り、「勘弁してくれぇ!」「助けてくれ!」と叫びながら、まるでバリアを張っているかのように男を交わし、そのまま背後の街中へ去っていた。バイクのエンジン音が街いっぱいに響く中で、男はゆっくり歩いて倒れている老人のほうに向かった。





長谷川宣蔵は軍鶏鍋の軍鶏を口に入れ強く軍鶏を噛み締めた。宣蔵が食べている軍鶏鍋は人形町にあり、江戸時代創業の老舗あるお店。親子丼発祥の店とも言われている。


宣蔵は軍鶏鍋を食べながら新聞の一面を読んでいた。内容は、『渋谷で男性二人の遺体 一人は顔にあざ もう一人は胴体に真っ二つ』である。


「また刀を使った事件か? 物騒な世の中だなぁオイ」

宣蔵が言うと、

「お父さん、せっかくの老舗の軍鶏鍋だから新聞を読みながら食べるのはダメ」

その娘の姉、志乃が止めに入った。

「ああ、すまない。美食家としてはあるまじき行為だったな」

「自称『美食家』だけどね」





一方こちらは東京調査部。

新聞の一面を見て、

「こりゃ、こっちも黙ってはいられないな」


「東京調査部、始まって以来の大事件だ」




「妖怪か、もしくはヤンキー狩りかもしれん」

家康はこう言った。

「こうなると大物かもしれないぜ。こっちはうずうずたまらなくなってきた!」

「そうそう、狙った獲物を逃してしまうともうどうにもならくなってしまうもんね」

「そうだよ、わかってるじゃねぇ・・・」

聞き覚えのない幼い声だったので家康が辺りを見回してみると、背の低い女性3人と男性1人が家康の後ろに突っ立ていた。

「・・・って、いつの間に!」

家康はビクッとして背筋を凍らせた。

「いやいや君たち、部活の見学かぁ。用があるなら何か一言かけてほしいがぁ・・・ってもう5月だし・・・」

家康がこえをからげながら言うと、信夫が

「あぁ、家康にはまだ紹介していなかったな。近くにある大江戸学園中学校から来た平清香、源瑞希、橘郁海、藤原翔太だ」と言った。

「平清香です。よろしくお願いします」

「み、源瑞希です。よろしくお願いします!」

「藤原翔太です」

「ウィッス橘郁海だよ。よろしくねっ!」

橘郁海の意外にのん気な性格に一同ビクッとした。

「・・・んまぁ、とにかくよろしくね」




その夜、家康は夜道を歩いていた。きらびやかなネオンが入り混じる中、唯一光がさえぎるとある神社に足を止めた。家康は神社に見とれていると、後ろから男が現れた。

「やはりお前だったのか」

家康はその人に目をくれず、背中を向いたまま言った。

すると男は日本刀を取り出し、刃を光らせた。家康は抜き出す音が鳴り終わるとくるっと後ろを向いた。


すると男の全身から大規模の気が出たかと思うと全身からムキョムキョと気味の悪い音を出しながらその姿を変化へんげした。いつの間にか、男の身長が伸び、その姿は妖怪の大入道だった。入道はこれまた大きな金棒を片手に握りしめていた。

「うわー、悪いが、男で気持ち悪い変身シーンはごめんだ」

家康はその不気味さに耐え、むしろ平気な面持ちで日本刀を取り出し、一気に日本刀を振り出したかと思うと、今度は入道も金棒を振りさしかかってきて家康の刀を抑えた。そのばかでかさにさすが家康もなすすべない。(うまく刀を抜き離しておけばかわせるのに)と思った家康はとっさにいったん身を離れ、その場で大きく息を吹きかけた。すると入道が大きく金棒を振りかざし、家康の刀にぶつかった。刀と金棒のぶつかり合って離れてを繰り返し、入道が大きく両手で金棒を振りかざしたそのすきに刀を入道の腹に突き刺した! 入道は雄叫びをあげると気がどんどん増し、家康の刀を残して、そのままその姿を消した。家康は長い苦闘の末、ひざを地面につき、息切れをし、首を地面に向いて過呼吸をした。

しかし、彼は思った。(いや、コイツじゃない。むしろ妖怪でもない。世の中には俺を含む仲間以外にもましては俺以上の剣客が存在するということか・・・。ヘヘッ、コイツは面白くなってきたぜ・・・!)

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