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1 東京調査部

 秋葉原―――


 世界最大の電気問屋街。パソコン部品・白物家電等、電気に関するものが全て揃う他、アニメ・マンガ・ゲームの文化が入り混じり、オタク・萌えの文化が発達する街だ。街中にはいつもメイド、学校征服、アニメのコスプレを着た若い女達がメイド喫茶のチラシを配っていた。

 もともとこの地は静岡県の秋葉山から由来している。それ以外にも本来静岡の地名が秋葉原以外にも浜松町、駿河台、銀座もそうである。これは静岡県出身である家康公が江戸をもう一つの『駿府』にするなりかわりなのかもしれない。

 「あっ、また来たの?」

 

 『ラブ×2冥土伝説』これが彼女のバイト先だ。


 「お帰りなさ・・・ああ、ご主人様! また来てくれたのですか」


 「もはや友達当然・・・ってことかな」


 すると、「やめてください!」という女性の声が聞こえた。一斉に聞こえた音源の方に首を向けると・・・・・・

 

 「なんだよちょっとぐらい、いいじゃないかよ。ここのメイドさん何でもやってくれるんじゃないのかよ」


 「胸を触るのは当店では禁止されていますぅ~」

 どうやら胸を触られたらしい。もちろん、店の注意書きには『むやみに店員の体を触ることお断り』とそう記されている。

 すると一人の青年が立って馴れ馴れしく、メイドさんをむやみに触る男に向かってこういった。


 「おいおいおいおいおい、確かに可愛い声してるけど、ちーと嫌がってるじゃないかぁ」


 「なんだぁオマエ?」


 男が苛立って拳を下に下ろしたまま強く握り立ち上がると、

「おいおい、よせよよせよ。俺だって無駄な争いは避けたい。なぁ、これから仲良くしようぜ」と男に右手を差し伸べた。


 男は仕方がないそうな面持ちでもう一人の男の右手を握り締めようと思ったが、手のひらところではなく、腕首を強く締め、ぐぃっと下へ引っ張り、その人を倒そうとした。しかし、男の腕はビクともしなかった。


 「やめときな。『喧嘩両成敗』という言葉知らないのか。喧嘩が起これば俺もお前もすぐさまサツ行きだ」


 若い男が小声でそう言うと、あまりの力強さに耐え切れなかったのか、一人の男が思いっきり男の腕をを離して、舌打ちを打ち、財布から一万円札を床に叩きつくように置き、無言で店を出ていった。男が当たりをキョロキョロすると、メイドさん達を含め、他のお客さんもまるで石にされたみたいに固まっているのを見たら、


「いやぁ~、悪い悪い。ついカッとなるところだったのかなぁ。ほら、気にしないでパァ~と楽しんで、ゆっくりしていってね!」と微笑みながら席を座った。


しかしどうしても他の人も気を取られていたので、男はゆっくりメイドさんのほうに

「俺、ここにいちゃマズイかな?」と悟るとメイドは

「え!? あ、いえいえ。大丈夫ですよ、家ちゃん!」と戸惑いながら笑顔で返した。それと同時に自然と争う前の雰囲気に戻って男はホッとしていた。




 しばらく経って店の外を出て見ると目の前に茶髪で、少し大きい胸で茶髪の女性が腕を組んで待っていた。結城秀美だった。


 「またやらかしたの?」


 男は「ゲッ!」と驚き逃げようとすると洋服の後ろ襟を大きく掴み逃げないよう喰い止めた。男は駆け足と手を大きく振りながら逃げようとするが、なかなか進まない。


 「あんたさぁ、これで何度目よ!」


 「俺は決して抵抗なんかしてねぇから!」


 「抵抗していたと何だろうと、これからの将来、あんたがもし死んでたら・・・」

 女は目頭に涙が少し溢れた。


 「お前、そんなことを気にしていたのか。俺はそんな一級フラグ建築士ではないから、俺はどんな目があっても生き抜いてやるからな。それが徳川家の使命だからな」


 女は大きくため息を吐き、強引に男の左腕をグッと掴み、腕組をした。

 「ちょ、ちょっと秀美さん!」

 「あんたのためだから、一生守ってあげるよ家ちゃん!」

 「やれやれ・・・」とその男、家康は秀美とは反対側の方向に首を下ろし、目を瞑って大きなため息をつけた。

 外はそろそろ日が暮れる時であった。




 家康の家は王子駅から徒歩20分程度である。二階は存在しない平屋建てで見た目では立派さが伝わらないが、それはそれはどぎを抜くような屋敷であり、ここを暮らす人々は「御殿」と呼ばれていた。父親と兄が殺され二ヶ月が経ち、庭の桜の木が萌黄の葉に変わりつつあった。その中に従姉妹の母と姉、妹と暮らしていた。家康は丁度真ん中っ子であるかなり珍しい家族構成だ。今日も実家の隣にある道場からここに通う子供達の稽古の声が響き渡っていた。勿論そこには姉と妹がいた。すると稽古が終わったのか威勢よく「ありがとうございました!」の掛け声が家中に響き渡った。

 お屋敷に相応しくどこの家にもない寺や城見たいな門の小さな戸に家康が鍵を開けて「ただいま」と言いながら家に入り込んだ。戸は小さく家康が腰を下ろさないと入れない作りである。

 「あっ、お兄ちゃんだ! おかえり!」


 「お帰りなさい、ご苦労様です!!!」


 稽古の子供たちが大きな声で家康に向かって挨拶をした。


 「おいおい、恥ずかしいなぁ。ただ出かけていただけなのに」


 すると、「みんな・・・、あら、家ちゃんも帰って来たの? ちょうどいいわ! はいこれ、みんな食べて」と母、篤子に大きな袋を取り出した。それは、江戸時代からここ王子に長く続く玉子焼きの店の玉子焼きと親子焼きだった。


 「おお、玉子焼きか!」


 家康も待ってましたといわんばかりに早く早くと体を揺さぶっていた。家康はここの玉子焼きが好物のようだ。その揚げたての玉子焼きを真っ先に家康が口にしようとした。


 「こら、お兄ちゃんったらまだ早いでしょ!」


 娘、葵に注意されみんなが笑うと、家康が少し赤くなり頭の後ろに手をポリポリとかいた。


 「みんな、お兄ちゃんみたいになっちゃダメだよ!」


 葵の言葉に家康は「うるさいなぁ」と小声で言うと、「ほらほら、みんなの分も用意してあげたから仲良くわけて食べましょ」と篤子が玉子焼きと親子焼きを取り出し、それをみんなで一人一個ずつ取り出し、和気あいあいと談笑し合い、いつの間にか明るい場となった。日は少しずつ暮れようとした時だった。




 家康は母と妹の三人暮らしである。しかし父がいない。そう、卒業式のあの日、何者かに殺されたのだから。家康はおよそ十畳ほどの畳の和室で体育座りをし、外の庭を見ると、そこに一本の巨木。桜だ。すでに満開し、桜吹雪が庭に神秘的な光景を映し出す。


 「あの桜が満開になろうとした日、俺の親父は殺された」家康は萌黄に変わりつつある桜の木を見てムッと怒っているかのように少し低い声で言った。


 「そんな、少し落ち着きましょう」


 「そうだよお兄ちゃんっ・・・!」


 「こう見えて俺は落ち着いているっ・・・!!、俺の親父が殺されたところを見たんだ! 毎晩親父の夢ばかりだっ・・・。こんな日が続いたら、流石に我慢出来ねぇ! 今でも親父の仇を取りたくて取りたくてウズウズしてるんだ!!」


 少し怒り出したかのように強く言った。「だけどどうやって・・・!」家康の目頭には少し涙がこぼれているように見えた。


 桜の花びらがまた散り始めた。


 父の死からちょうど一ヶ月が経とうとしても尚、心の傷はまだ癒してはなかった。庭のししおどしがまたボトンと音が鳴った。


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