父が遺したもの
青いスーツとネクタイ姿の部下の男性が新井東京都知事に説得した。
「・・・しかし新井東京都知事、家康くんが余計―――」
「あの子をこのまま放っておくわけにはいかない。徳川家存続に関わる重要な子だ。また命を狙われる、徳川家には我々、東京都にも関わるものだ。それだけではない、政治、はては皇族にも影響を与えしかねないことになる。そうすると世界が徳川家に目を向けられる。私はそれを世間に向く前に隠し持たなければならない」
「『埋蔵金』・・・っということですか・・・?」
「そうだ。―――これを世間に、マスコミに漏れ出すと日本中が大混乱になることも想定内だ。可哀想なことに、あの事件で一部が漏れ出しているのも事実だ。あの家族は先祖徳川家康の血を受け継ぐ家族だ。父親が殺すようになると・・・」
新井が大きなため息をつき、頭や目線が床に向いた。
「非常に頭が痛くなる・・・。今は言い難い。とにかく、くれぐれもあの家族には用心することだ。今は一人にしてくれ」
新井がそう言うと部下が「りょ、了解しました」と少し震え声で言うと「そこは『承知いたしました』だ! 我々の業界ではそんなこと言わん! 声も震えているぞ、まったく・・・」と少し怒り声で言ったので「も、申し訳ありません! つい・・・!」と震えなしで言い、「もうよい。下がれ」と落ち着いた声で言い返した。部下は直立し「失礼いたしました!」と声を張り背中を向きドアに向かって歩いて行った。ドアを開けると再び体を新井側に向き目線を新井に向くと、そこには頭を右手て抑え込み、悩んでいる新井の姿があった。部下はもう一回新井に返事しようと思ったが、機嫌が悪そうなために、無言のままそーっとドアを閉め、部屋から出て行った。
新井は目線を外に向けた。そこは東京都庁知事事務室。遠くを見ると江戸城天守閣が見える。新井は天守閣をじっと見続けていた。すると、机の上から物音がし、その方向に目線を向くと動く物体があった。
新井はため息をし、
「分かってるよ。今やロボットが動かし、人間の立場がロボットに奪われ職業も制限されてしまう時代がもうすぐそこまで来ている。俺たち人類はどうするきだ? 楽に暮らせる天国か、貧困に陥る地獄か。俺は破滅しか考えられないが・・・」