異変
式を終え、これから離れ離れになっていく友人達との最後の楽しい交流をしていた時、家康のスマートフォンからハイプレーションが響き渡る。
「ちょっと、ゴメン」家康は話し合っている仲間の輪を離れ、とっさに電話を出た。
すると、電話から・・・
『家康くん! すぐ戻ってきて! お父さんが大変なんだ! このままでは私たちも・・・きゃあっ――――』と叫び声をあげた瞬間、電話が切れてしまった。
(親父が・・・!)とすぐさま実家のほうへ掛け抜こうとした。すると時が止まったかのように固まった。というのも、友人との最後の交流を大事にしないといけない。家康は迷っていた。
すると、「聞いたぞ、なにかあったんだろ、行けよ!」と励まし、「僕の親父が送ってあげるよ!」と一人の友人が車を用意し、すぐさま家康は「ありがとう!」と車に乗せて貰い、友人の父親が車を飛ばし、家康の家に急いだ。
(そんな・・・、親父・・・、何があったんだよ・・・!!)
途中渋滞に巻き込まれたものの、それでも必死にアクセル、ブレーキをうまく使いこなし、速度違反ギリギリの猛スピードで家路に飛ばした。
家康の家は、学校からおよそ一時間掛かるか掛からないかのところにあり、それをたった10分程度で着いた。
家路には無数のパトカーに占領されていた。
急いで家康は車を降り、パトカー等で停車する群れの中に入り込んだ。抜けた先は家門にはバリケードが張ってあり、それと同時に警察官二人が家康の両腕を強く握り締めた。
「こらっ! 危険だから入ってはいかん!」
「入らせてくれ! なかには親父が・・・!」
「今交戦中だ! 危険だから入ってはいかん!」
「中で何があったんだよっ!!」
家の中には警官と機動隊が銃と刀、盾を構え一斉に家の中へ突入した。
しばらく経ち、中から父親らしき人物が仰向けの状態でタンカーに運び込まれてきた。毛布から出している手には血が立たれていた。
「お、親父!」
慌てて家康はその父親に駆け寄った。
「親父!!」
家康はまず最初に運んできた父親に近づき、「親父! 親父!」と、血だらけの親父の手を握って何度も何度も叫んだ。
「親父っ、おやじぃっ!」
父親は声で反応したかゆっくりと眼を開けて首を家康のほうへ向いた。
「親父!」
「いえ・・・やす・・・か・・・・・・」
「そうだよ、親父!」
「アハハ・・・悪い・・・こんなことが起きちゃって・・・・・・」
「何いってんだ! そんなことより何が起きたんだ!」
「何者かは知らんが・・・奴らは・・・俺たちと同じ・・・葵の家紋を・・・付けていた・・・・・・」
「そ、それから・・・どうしたんだ?!
父親が苦しみ始め、危険を察したのか救急隊員に止められた。
「これ以上喋らせると危険です」
「親父・・・すまん・・・」
「ああ・・・すまない・・・・・・」
と、このまま目を閉じ救急車に乗せられた。家康はただ黙って足を少し広げて立ち続け、まるで石になったかのように口角も体も目線も固まったまま、乗せられる父親を見送った。家康に出来る事はただそれだけであった・・・。