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うちミィ

彼女がやってきた日

作者: 京 高

 暦の上では秋だがまだまだ残暑が厳しい季節、彼女がうちにやって来たのはそんな頃だ。


 知人に紹介された彼女は愛らしくもどこか儚げで保護欲をかきたてられる、そんな存在だった。


 家族にどう説明するのか?

 それ以前に本当に彼女を連れ帰っても良いのか?

 それを彼女は受け入れてくれるのか?


 私はさんざん迷った挙句、彼女を引き取ることにした。


 家への帰り道、寂しく不安だったのだろう、彼女は延々と泣き続けていた。私はその声に合の手を打つようにして彼女をあやしながら、泣き声を聞く時間を少しでも短くするために懸命に車を走らせたのだった。しかし泣き過ぎたのか、家にたどり着いたころにはもう彼女の声は掠れてしまっていた。


 結局その愛らしい声を再び聞くことができるまで数日の時間を要し、その間私を含めた家族は不安な日々を過ごすことになった。


 またその影響だったのか、彼女はその思いの内をなかなか言葉にできなくなってしまった。

 その後、我儘を言い始めた彼女に対して、私たちが嬉しく感じたのはある意味当然のことだったのかもしれない。まあ少し甘やかし過ぎているきらいはあるのだが……。


 彼女を紹介された家族は呆れつつも受け入れてくれた。今更放り出すことなどできはしない、と半ば諦めの心境でもあったのだろう。


 あの日から今日に至るまで彼女と同棲していく覚悟が最もできていないのは私自身であった。情けない話だが、今でもその覚悟ができているとは言い難い。


 経験も知識もない私が彼女を『立派に育てる』ことなどできるはずもなければ、口にする資格もない。それでも彼女を引き取った義務がある。せめて彼女が寂しく感じることのないようにしなければならない。

 私一人では無理だが、幸い家族を巻き込むことができたので何とかなるだろう。

 なんとも他力本願ではあるが、おかしな見栄を張ることで彼女が不幸になってしまっては本末転倒だ。できることからやっていく他はないだろうと思う。


 さて、その日の終わりにもう一つだけ事件というか、ある出来事があった。

 ふとした物音に目が覚めて彼女の様子を見に行った私がそこで見たのは、与えられたベッドの上ではなく部屋の隅、家具との狭い隙間に隠れるようにして眠る彼女の姿だった。

 その時、彼女を私たち家族の一員とするのではなく、私たちの方が彼女の家族になれるように努力しなければならないのだと感じたのだった。

うちのにゃんこのことを小難しく書いた話でした。


人間だと思った?彼女?そんなのいたこと無いよ、こーんちーきしょー!(キレ芸風味)


出来事については本当にあったことですが、心情描写は過分に誇張してあります。実際には「可愛いけど飼うのは大変かな?大丈夫かな?」といった程度にしか悩んでいません。


このうちの猫については後日ちゃろちょろと連載していく予定です。

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