鰻、導く
タカ兄…僕達の兄である隆元を探すことにした僕と春兄
「春兄、君も僕も容姿が変わっているけど、タカ兄も変わってるのかな」
「え…んー……まだ会ってないんだよな
だからわからない」
「そっかー」
「でも、御先祖様のお手紙には容姿も口調も性格も変わっちゃった!…らしい」
僕はあまりタカ兄が好きじゃない
なんていうか、陰湿なんだよね
考えてることすべてがそう見えちゃう
そうとは限らないのはわかってはいるけど
もし、所謂、覇気に欠けた当主が全くの正反対になってたら
それはそれで気持ちも変わるかな
「黒い翼……」
「ん?鴉の羽根かい?」
「どちらかといえば猛禽類の羽根だな」
「なんでそんなもの」
「…わかんない」
ズコーッ!!
わからなくて羽根を拾ってたのこの賢者は!!
意味ないことするなよ!!
盛大に突っ込みたかった
でもやめた
冷静さを失ったら清く美しい小早川隆景がただのヒレカツ(自虐)になってしまう
「それにしても…懐かしい香りがする」
「………蒲焼の匂い?」
「もしかして……」
僕達は期待を膨らませて言った
「鰻だ!!」
匂いの方向へ僕達は向かう
「タカ兄によく焼いてもらったよね!」
「うん!」
お互いに感じた心の何処かにある幼さ
好きな食べ物の前だと春兄も思わず笑顔になる
もう、可愛すぎるよ!!
木々が生い茂る森を抜け、僕達は鰻の焼ける匂いを追った
そして、なんとかしてたどり着いた
「うわぁ……美味しそう」
「山椒かけたらもっと美味しくなるよ…」
「ん?おまえらなにしてんだ?」
「んゅ?」
「あいえ?」
人の声が後ろからした
僕達は振り向き、声の主を目の当たりにする
「おまえらも食ってくか?」
随分と気さくで心が熱そうな人だった
「ありがとうございます」
「あ、ありがとう」
「………んー、やっぱおまえらどっかで見たことあるんだよなあ…特にヒレの方」
あいえっ!?僕!?
まあ、確かにヒレが生えた以外そこまで容姿変わってないしね
「よし、名前当てるぜ?
ヒレの方は小早川隆景だ!!!」
「アイエエエエエエエエエ!?」
だ、誰コイツ………