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ぼくからのさくら

またみつけました。これはまさにそった話しです。

      ☆


『さくらが漫画家になったんだって』と、二十歳ごろ友人から聞いた。ぼくは思わず、

「えっ、漫画家?」

と耳を疑った。さくらが漫画家になるとは予想もしていないことだ。たしかによく教科書の隅やノートに少女漫画風の絵を描いていた。チラッと見たとき、さくらは絵が上手いと小学生時に初めて思った。まさか本物の漫画家になるとはビックリする。

妹が月刊『りぼん』を読んでいて、それにさくらの漫画が連載している。漫画を初めて見たとき、あれっ、と思った。絵が少女漫画風ではなく、素朴な漫画の絵だったからだ。

中学時代のさくらはよく、少女漫画風の目が輝いている絵を描いていた。そのためぼくから見る連載の漫画は異様な感じがした。

ある日、妹がさくらの描いている『ちびまるこちゃん』という連載漫画にぼくが出ているといった。

早速『りぼん』を見る。プールのシーンで帽子にハマザキと名が書いてある。

「これがぼくなのか? 細長い顔で不細工だな」

と、妹に向けるとニヤニヤとしている。第一印象はこんなで感じである。

まあ一回きりの出演だろう、と思っていた。

ところが翌月号の『ちびまるこ』にもぼくが出ていると妹がいう。今度は『はまじ』として出ていた。なにを描いているのかと妹に聞くと、小学校三年生の時代の思い出をさくらが漫画にしているといった。

そういうことかと納得するが、ぼくの小学三年時代はプールが嫌いになり、学校脱走や戸川先生が厳しくて登校拒否をしてしまったころ。どちらかといえば出演しないのが正解だ。しかし、『ちびまるこ』でのはまじは普通に学校に来ている。多分さくらの気づかいだろう。

その後はさらなることになる。テレビで『ちびまるこ』が放送しだすことになった。

「すげー! さくら、どうやってテレビに放送出来るようになったんだ」

とつぶやき、目を疑いながらアニメを見た。

さくらとは中一以外、小三から中三まで同じクラスだったが、まさか漫画『ちびまるこちゃん』をテレビで全国放送するようになる女性とは、まったく感じなかった。はっきりいってしまえば、人は見かけによらないということだ。

映画の渥美清さん主演の寅さんにいわせれば、『たいしたもんだよカエルのションベン、見上げたもんだよ屋根やのフンドシ』となるのか。

そして、さくらの『ちびまるこ』はぐんぐんと人気が出て来た。ぼくが素朴な絵を簡単といったことが、世論ではブームになった。そんなとき映画でも全国公開し、密かに見にいった。

映画にまでなるのだから完全に世間は『ちびまるこちゃん』現象状態であ

った。

その映画を見たとき、アニメの『はまじ』が出て来ると独りでニヤニヤとする。映画だと集団で見るので『はまじ』がなにか変なことをいえば、客席はうっすらと笑う。自分のギャグではないのに自分がいっている感じさえし、不思議だった。ということは、はまじを意識している。はまじのあだ名は自分だが、性格はもっとわがままな人物だ。根性も足りず、過去を思い出すと自分へ腹が立つこともある。

その後、『ちびまるこちゃん』は異常な盛り上がりで、ありがたく登場人物のぼくも、

「ハマジさんですか?」

といわれるようになった。それだけ世間はアニメを見たために出演者を知ったのだろう。

ぼくは自分で成し遂げたわけでもなく、本当は嫌だったがあやかりたい心もあって、自分が図々しいと思うときもある。本を出したことでも自分ではなく、さくらにあやかっている。彼女のおかげで自分を出せたので、いまでは感謝している。

『人はひとに生かされてこそ、人と申す』ということかな。NHK放送の『秀吉』でのセリフだった。

ぼくと同級生で実在する『たまちゃん』などは漫画に出てどう思っているのか、気になることもある。数年振りに花やの徳ちゃんにあった。彼もぼくと同じく清水に住み、『ちびまるこちゃん』に登場している人物である。もう店を畳んだが杉浦生花店の主人だった。

以前はぼくが突然家に訪問したので、少し驚きニヤッとする笑顔で迎えてくれた。

店のころはエプロンをしてまさに花屋の主人そのもの。かわいらしい犬もいて家族ともども仲よしこよしという雰囲気でうらやましく感じていた。そのときは徳ちゃんのような家庭を目標にしようと心掛けていたが、いまだ独身である。会ったときアニメに出ていることを『別になんとも思ってないよ』といっていた。

彼はレギュラー出演をしないためそういう回答だったかもしれない。

入江町の彼とさくらの家は近い。これは本を出したころ(二〇〇三年)の話しでさくら家の前を車で通った。するとシャッターが開き、だれかがいた。

ここで八百屋を営んでいたので、片づけに来たのか。さくら家は東京に越してそんなことはとっくに終わっているはずだ。

ぼくは訪問してみたくなる。

当時の愛車、ホンダシビックを家の横にとめ早速、元さくら家の玄関に入った。

「こんにちは」

奥でおばさんがなにやら掃除をしている。一瞬こっちをチラっと向いたがむしをする。もう一度、

「こんにちは、あのすいません」

といったら振り向き、

「なんだね?」

という。訪問販売かと思われたのか。ぼくはそのとき少し驚いた。そのおばさんがあまりにもさくらの母にそっくりだったので『あれっ?』となる。おばさんにぼくはさくらと同級生だったことを話せば笑顔になり『ああ、そうかね』と打ち解けてくれた。

話しをすると、おばさんは親せきとのこと。てっきりさくらの母が空き家である実家を掃除に来たのかとも思った。ぼくは、

「おばさん、さくらの母さんにそっくりだね」

といったら、

「そうだよ、まるこの母とそっくりだとよくいわれるよ」

と自分でいっている。しゃべりかたや口調もアニメで見たときの母とそっくりである。

なんといってもさくらの口調にも似ている。小学校時代のさくらと話しをしているようで、タイムスリップでもした感じだ。

相手はなにをしにきたのかと思うだろうが、ぼくは逆におばさんへ問えば、久しぶりに掃除をしにきたという。空き家にしているとなにかとほこりもたまる。それで親せきのおばさんが掃除をしにきたらしい。

ぼくの来た理由も話し、おばさんが知人になった。帰り際に丁重にあいさつをして帰った。

きょうは行動派だ。この際次いでにと、ぼくが思う丸尾のモデルの家に行ってみたくなりシビックにエンジンを掛けた。

丸尾のモデルの家はさくらの実家からわずか百メートルとすぐだ。丸尾のモデルとはぼくが思っているだけで、実際漫画上の『丸尾』という名字ではない。          

あっという間に丸尾家に着くとチャイムを鳴らした。丸尾の母が出て来た。

どうも丸尾は日曜なのに仕事らしい。丸尾は小学校時代から頭がよくエリートであった。ちびまるこ漫画の様にメガネを掛けていて似ている。だだ『ズバリ』とは言わなかった。

そして丸尾の母も漫画で観たことがあり、母も漫画とそっくりである。        

 丸尾は現在、大手コンピューター会社で働いている。かなり忙しいようだ。みんな働きざかりに暇でウロウロしているのはぼくだけだろう。今後も同級生の家に突然訪問した際は、暇なはまじをよろしく頼む。


こそこそ載せているので、「こそこそのりた」にしました。点数が上がりましたので驚きです。

ずっと0点だったのが、このところ上げてくれました。評価ポイントをつけてくれた方々、ありがとうございます。

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