吉本新喜劇落選脚本「昼のうどん店」
数十年前、吉本興業で新喜劇部門の脚本を募集していました。ぼくはやる気があったのでそれに応募してみました。せっかく原稿があったのでここで掲載させていただきます。
もちろん落選です。
「昼のうどん店」
作 のりた
舞台は小さい商店街のうどん屋。家族で切り盛りしている。昼時は様々な人達の食事処。向かいには暇な喫茶店。うどん屋の繁盛に嫉妬ぎみ。
(うどんオカミ、未知)登場しながら『さて今日も稼がないとなー。とうちゃん、とうちゃん便所か?』
(うどん主人、池野)便所の水を流しながら登場『あー下痢ピーだな。何たって人より食ってから出るまで体短い分早いからな。おい、おかー、ヒロはまだ戻って来ないか?』と息子のヒロがどんぶり回収からちょうど戻った。
(うどん息子、吉田)不機嫌に『二丁目の松本さん、またどんぶり割っちゃただって、そやから五百円もろおて来た。えやろー』
(う主人)『そりゃー儲かったな』息子の疑問も入る。
(うオカミ)『うちのは百均で買ったから、四百円も儲けたわ』息子は怪訝する。
(う息子)『せこいなー、しかしオヤジとオカンは仲ええな。四六時中いて』
商売繁盛の秘訣は夫婦円満らしい。
(うオカミ)『なーとうちゃん、昨夜も激しかったなー』下ねたに入る。
(う主人)『おう、今夜も激しいぞ。ヒロ聞き耳立てるんじゃねえぞ!』
(う息子)『なにっ! 今日もかよ。あんなでかい声でヒィーヒィー言いてたら聞きたくないのに聞こえるわ』
(うオカミ)『なんや、聞こえてたんか、恥ずかしいわ。とうちゃん、あんませめんといて』と主人にウインクする。今時、こんな仲の良い夫婦はない感じに。
(う主人)『わかったわ。静かに行うわ。ヒロ、おまえもはようガールフレンドを作って、一緒にスワップしようぜ』と目をニヤニヤさせる。
(う息子)『アホか!』とまた怪訝する。
すると突然、地震が襲う。
(うオカミ)『とうちゃん、大丈夫?』と主人を体で守る。地震は数秒で収まる。
(う主人)『かあちゃん、かあちゃん怖いよー。かあちゃん、かあちゃん助けてー』
(うオカミ)『大丈夫だとうちゃん、かあちゃんが守ったるで』まだオカミが主人を体で覆いかぶさっていた。
(う息子)『なんや、逆じゃん。オヤジこわがりやな』
そこで池野得意の足バサミをしてオカミを挟む。
(う主人)『引っ掛かったな。ここであったら百年目、このカニバサミから抜けれるものなら抜けてみろ』とギャグをやる。オカミは池野を挟まれながら歩きだし厨房に戻る。息子はまたまた怪訝しながら、店内の掃除をしだす。
一方、喫茶「ハナ」も店前を掃除したり、ランチ五百円の看板を出したりしている。
(喫茶マスター、島木)掃除や店前で『今日も暇かなー』とイキナリ弱きな発言。『ランチ五百円なんだけどなー』とまた弱きなことを言う。「ハナ」のママでカミさんである花子はマスターを元気づける。
(喫茶ママ、山田)『そんな落ち込むなよ。私もやる気なくすわ、営業してればお客絶対来るわそんなん。うどん屋のおこぼれ貰えばええやんか』と強きにママは元気づけた。
(喫茶マスター)『またうどん屋かいな、その言葉聞き飽きたわ。うどん屋、うどん屋って』向かいのうどん屋と喫茶「ハナ」との客のギャップに毎日参っていた。
(喫茶ママ)『解った、解った。おこらんといて。明るくやってりゃー神様だって平等に客来る様するから、大丈夫やて』とママは明るく振る舞う。
(喫茶マスター)『なー、神さま何処におる』
(喫茶ママ)するとママは天をいい加減に指しながら『あそこや、あれが神さまや』マスターもつられ見る。
(喫茶マスター)『あれやな、お客さんを平等にお願いします』と祈る。ママもつられ祈る。
(喫茶ママ)『平等にお願いします。そして私に愛人が出来ます様にお願いします』近隣にいた人達はコケる。
昼時になり様々な人達がうどん店に入る。
(作業員風A、辻本)『おい、ここのうどん屋この商店街では有名で旨いだとさ』
(作業員風B)『へーそうか、だけんおまえのアゴも有名らしいな』辻本のアゴを触りながら言う。辻本怒りながらうどん店内に入る。入ると『いらっしゃい』と威勢のいい掛け声が掛かり、作業員達は気持ちが良い。オカミは水をもって行きメニューを聞き出す。
(うオカミ)『何にします』
(作A)『そやなー、きつねうどん』
(作B)『俺は天ぷらうどんで』オカミはメニューを厨房の主人に、はつらつと言う。この店は家族三人だが活気がある感じ。
(作A)『このうどん屋、活気があってええなー』
(作B)『そうやな、好きになるわー』オカミは有り難くお辞儀をしている。
つづいて詐欺師的な怪しい男が店内に入ろうとする。
(詐欺師、チャーリー浜)店前でチャーリーのギャグ『ごめんくさい 』と続くギャグを。この時、店内ではコケる感じで。
詐欺師は店内に入り適当に席に着く。オカミらは威勢が良い掛け声。
(詐欺師)それを聞いたら『威勢が良いじゃあーりませんか』のギャグ。
オカミが注文取りを詐欺師にする。
(うオカミ)『何にしますか?』
(詐欺師)『じゃ、レバニラ定食!』作業員らは『えー』と声をあげた。
(作A)『おじさん、ここうどん屋やで』詐欺師が頭おかしいと思い親身に言う。
(うオカミ)『レバニラ定食一丁!』作業員二人はコケる。
(作B)『なんでんねん。なんで中華があるやね?』と二人は不思議がっている。
(うオカミ)『うちはうどん屋ですが一年ほど前から裏メニューが出来たのです』
(作A)『何でや?』
(うオカミ)『今、不景気やないですか。だもんで何でも作ってお客さんに満足いく食べ物を提供しないとアカンと思い、主人と始めたんです』事情を説明。
(作B)『そうやな、ウマイ商売考えましたなー。ラーメンも出来るんか?』
(うオカミ)『出来ます。ただ修行には忙しく行けなく味は保証出来ません。そのぶん中華は料金が安くしてます』と自慢げに言う。
(作A)『おーそりゃええよ。じゃ、ラーメン幾らや』
(うオカミ)『三百円です』
(作A)『安いな、うどん屋のラーメンどんなか、一杯もらおう』とラーメンを頼む。
そこに先程うどん屋に入った詐欺師を尾行していたサラリーマン風の刑事二人が現れる。
(刑事A、石田)『奴はうどん屋に入りましたな』
(刑事B、井上)『じゃ、俺らも昼やし気づかれん様、入るか』二人は店内へ入る。活気ある掛け声。刑事らは詐欺師にバレない様、サラリーマン風に会社の話しをしながら席に着く。
(うオカミ)『何にします。うちは中華もありますんで』
(刑A)『僕は天ぷらうどんで』
(刑B)『じゃ、俺は酢豚定食を』うどん以外のメニューを言ってしまい相方が少々コケるが詐欺師ほどでは無い。オカミは了承し声高々にいう。
(うオカミ)『酢豚定食一丁!』オカミは元気に言うので全員笑みを浮かべてる。厨房で主人は豚を切らしていたのを知った。が、何とか鳥でやることにした。
(作B)『なんでもあるんだな』作業員同士ぶつぶつ言っている。
うどん屋は何でも作れるのも人気の一つになっている。厨房で手伝っていた息子に出前の電話が入る。
(う主人)『おいヒロ、二丁目の松本さんにカレーうどんの出前だ』
(う息子)『またかよ、あそこは一日置きだし、どんぶりは割るし』不満げに。
(う主人)『だけん繁盛してるのは松本さんのお陰っちゅうこともあるだろ。商売人はお客様は神様や』と息子に訓示。
(う息子)『じゃ、このお客さん達は神様なんだな。神様お客様、僕に彼女が出来ます様にお願いします』息子以外こける。厨房にいき出前の支度をする。
主人が客のメニューが出来たことをオカミに威勢よく言う。そして客に運ぶ。
(作A)『おー! このきつね旨いよ、だしも取れてて』
(作B)『本当だ、メンもうめーな。早速、現場衆に報告だな!』
このうどん屋に初めて来る人達は皆、旨さに圧倒する。オカミは詐欺師にレバニラ定を運んだ。
(詐欺師)くんくん匂いを嗅ぎながら一口食べる。皆、詐欺師に注目していた。『ニラがネギじゃあーりませんか』全員コケる。『旨いですなこのネギ』とネギを褒める。
刑事達にもうどんと酢豚定が運ばれた。
(刑A)『おー、旨いよオカミ』
(刑B)オカミは豚が無かったので鳥肉になってしまったことを詫びた。刑事は構わないと言う『これは酢鳥になるんだな。初めてだどれどれ、んーオカミ酢鳥もいけますなー』とうどん屋に絶賛している。
(う主人)『松本さんの出来た。行って来い!』息子は調理手伝いを止めいそいそと配達に自転車で行こうとする。店は忙しい。
ちょうどそこへ貧乏風の学生がうどん屋に入ろうとしたら息子とぶつかり、二人はコケた。息子の出前うどんは大丈夫。貧乏風学生はめがねが外れ今時、四つんばでめがねを探す。息子は申し訳なくめがねを見つけ渡す。そして店内に入る。活気ある声がする。
(貧乏学生、内場)オカミが注文をとる。『海老チリソースのナッツ揚げ定食を』顔に似合わない物を頼んだので一同コケだす。
(作A)『凄いの頼むなあの貧乏風。またあんのかい、そんなメニュー?』
(うオカミ)『とうちゃん、海老チリソースのナッツ揚げ定一丁!』
(う主人)『あいよー』
(作A)『あるんかい!』と言いながら少しコケる。
そこに作業員にラーメンが運ばれた。
(作A)『おっ、来た来た、さて味はと。んーまずい』全員コケる。今まで旨い旨いと言っていたギャップがここに来た。
(うオカミ)『すんません、修行してないもんだから』恐縮している。
(作B)『ええで、ええで試しに頼んだだけやから』
(作A)ひそひそと『うどんはいけるがラーメンはアカンな。まあ三百円やから大目にしたるが』ひそひそで偉そうに言う。
その頃、喫茶「ハナ」は客一人である。
(喫茶マスター)『何でだろー、なんで一人やねん』
(喫茶ママ)ベースを首に掛けながら『HANAは暇、HANAは暇、HIMAはハナ』と歌って現れる。
(喫マスター)『何のこっちゃ、しかしうどん屋ってそんなにええのかな?』ママに語る。
(喫ママ)『あんたがダメとちゃうかなー、その風体が』とマスターの体をジロジロみる。
(喫マスター)『わしのどこがダメやねん』マスターは一挙に裸になり体を自慢して、次にポコポコヘッドをやる。
(喫ママ)『あんた何さらすねん、恥ずかしいわ。いい年こいて』怒りながらママは言う。
(喫マスター)それを聞いたら『ん ん、ジョージショック!』のギャグ。全員コケる。マスターとママはブツブツと店に戻る。そして舞台はうどん屋に移る。
ちょうど貧乏学生の海老チリナッツ揚げができ、もって行く所。
(うオカミ)『はい、お待ちどうさん。これは特製ですからね』
(貧乏)『うー良い匂いだ。旨そうだべ』貧乏学生は腹が減っていたので、むさぶりつく様に食べるのだ。
(うオカミ)『とうちゃん、あの学生さん相当おなか空いてたんだな』
(う主人)『そうみたいだな。俺も昔は食えない日が何日もあっただよ。あの学生を見てるとまるで俺の童貞時代を思い出すなー』主人は懐古になる。
(うオカミ)『なんだい、その童貞時代とは』詐欺師や作業員らも聞きたがる。
(う主人)『昔あんな学生の頃、毎日毎日が女とやることしか頭になかった。女を買う金も無いし、女学生を襲おうと企んだが勇気もない。そんなある日、友人がエロ本に載っていたダッチワイフを買ったんだ。友人は後にダッチワイフを俺に貸してくれたんで、童貞を捨てれただよ』一同ガクッとコケだす。
(作業員A)『そのダッチワイフの名は何だね?』
(う主人)『たしか南極探検隊愛用Z号だったな』また一同ズッコケる。
(うオカミ)『あんた、そんなんで童貞喪失なんてバカじゃない』怪訝する。
(う主人)『だって、おまえとまだあの頃、知り合ってなかったろう?』
(うオカミ)『じゃ、早く知り合ってればあたいに童貞を捧げてくれたのね』と店内は恋愛場面になる。
(う主人)『そうだよ僕は君に捧げていたのさ』とそこに出前の息子が帰ってくる。その場面を見て驚く。
(う息子)『何しとんねん』とツッコミ、場を止め怪訝しながら夫婦をみる。
(作A)『あの夫婦は異常だな。いい年こいて恋愛ゴッコを店内でやるとは』怪しがる。
(作B)『いや、これは店の印象を強くするための一種のショータイムかもよ』
(作A)『うどん屋でか? でもそうかもな。この不景気だし』
刑事らは詐欺師をチラチラ窺っている。うどん屋の息子はまた出前に行く。すでに貧乏学生は海老チリ定食を食べ終えていた。
すると突然、貧乏学生が素早く店内を出て行った。食い逃げをしたのだ。
(うオカミ)『あっ! ちょっとあんた、学生が食い逃げしたよ』慌てる。周りの人達はポカンと見ていた。
(う主人)『何っ? 食い逃げ? よし、追いかけてやる』主人は学生の跡を追った。店内には足の速い刑事もいたが、詐欺師を見張っているため無視する。オカミは警察に電話を掛ける。
(うオカミ)『あっ、警察ですか、四丁目の池野うどん店ですが食い逃げが起きました』 店内ざわめく。派出所の警官は割りと早くきた。そしてうどん屋の入り口で桑原の『ごめん下さい 』のギャグで一同コケて、店内に入る。 ちょうど主人も帰って来る。
(う主人)『ダメだ。逃げられちまった。奴を見て恋愛シーンをやったのが損した感じだ』 警官は事情を主人とオカミに聞く。そして事情を聞いていた時、店内に管轄の刑事がいることに気が付く。警官は不思議に思ったが馴染みの挨拶をする。
(警官、桑原)『これはどうも派出所の桑原です』と敬礼をする。
(刑事A、B)『……』バツが悪そうに無視する。咳き払いもしたりと。
(警官)『あのー何で私を無視するのですか?』警官は事情を知らない。
それに気づいた詐欺師は急に慌ただしくなる。刑事は見て見ぬ振りをしている。
(詐欺師)『あのー、お勘定をお願いします』急いでいる。
(うオカミ)『えーレバネギ定ですね、六百円です』詐欺師は速効で五千円を出す。レジを開くとお釣りが足りない。
(うオカミ)『あれ、三千円足りない。すんませんお客さん、近くで両替して来ますんで待ってて下さい』とオカミは店を出た。詐欺師は刑事を見ながら苛々している。
警官を無視し、刑事達も詐欺師を気にしながら店を出る態勢になる。
(警官)『井上刑事、食い逃げ犯をなぜ追いかけなかったんですか?』刑事の腕を掴み聞く。警官は疑問だらけである。
(刑事A)『うるさい!』
(警官)『うるさいとは何ですか! あなた方は刑事ですよね。何で追いかけなかったか聞いているんです』
(刑事B)『今は言えん』だんだんうんざりしてくる。
(警官)『何ですか? 何か事件ですか? 食い逃げ犯の人相見たんですよね。あなた方は警官ですから人相や特徴を瞬時で解るから、その位は教えて欲しいです』
(刑事A)『店の衆に聞いてくれ』と冷たく言う。警官は怒ってくる。
(警官)『あなた方は職務怠慢ですな。刑事課長に報告しますよ』
(刑事B)『バカ違う、今捜査中だ!』と静かに言った。だが詐欺師は感づいたのかギクっとした。
(作業員A)『俺らも勘定頼みたいが』だが両替に行ったオカミが帰って来ない。そこへ出前に行っていた息子が帰って来る。店内に入ったら警官がいるので不思議がる。
(う息子)『どないした? お巡りさんがいてるし』
(う主人)『学生風がいただろ、奴が食い逃げをしたんだ』
(う息子)『あんな真面目そうな人でもなー世の中、解らん。だけど警官とあのサラリーマンと何で揉めてるんだ?』
(う主人)『あのサラリーマン風の人達が刑事で職務怠慢だとか、捜査中だとか言っていたが、よく解らん』主人の説明で息子は納得してない。
(う息子)『まあ要は、食い逃げが一番悪いんだな』
そしてオカミが両替から戻る。
(うオカミ)『お待たせしました。四千四百円です。ありがとうございました』詐欺師は受け取ると直ぐ店を出て捜査撹乱させるためか、向かいの喫茶店に素早く入る。
(刑事A)『畜生、すぐに追いかけないと。ワシらは今勘定した奴を詐欺の疑いで尾行していたのだ』警官は事情を詳しく聞いたら漸く解り出す。
(刑事B)『それを敬礼したり刑事だとか職務怠慢などホザいたもんで奴にバレたじゃないか。お前のせいだからな』
(警官)『すみません。ただ私は職務を行っているので』と申し訳なさそうに言う。
(刑事B)『詐欺師を昨日から尾行してたんだぞ! 次の事件を起こしたら現行犯で捕まえ様とわしらずっと追っていたがパーになったやないか』
警官はしょぼくれる。そこに主人が刑事に言う。
(う主人)『刑事さん、あまり怒らんで下さい。この警官さんもまさか詐欺師を見張ってたとは思わなかったんですよ。僕らでさえ、お宅が刑事だとは誰も気づきへんかったな』周りの衆に同意を求める。
(作業員B)『そうですよ、ただのサラリーマンだとばかり思ったで』
(う主人)『ほら、他のお客さんらも言っているし、そんだけ詐欺師も見抜けない程の演技だったんですよね』
(うオカミ)『私も会社の方かと思ったのでここは穏便にお巡りさんを許してやって下さい。食い逃げ犯も調べないとならないし』
スッカリお客に同情され警官はメソメソ泣き出す。
(警官)『ウェーン、エーン、エーン 』警官はだんだん大きな声で泣く。
刑事も突然泣いた警官に近寄る。
(刑事B)『解った。悪かった、俺らが言い過ぎたよ。誤るよ』刑事も反省態度になる。
(警官)『エーン、エーン、エーン(と最後に)おかーちゃーん!』警官の一言に一同ドテっとコケる。
そんな時突然、貧乏学生がうどん屋に現れた。
(貧乏学生)『スイマセン、お金払いに来ました』
(刑事A)『お前のせいで詐欺師逃がしたやないか』と貧乏学生の頭をド突く。
(警官)『そうだ、お前が食い逃げ何かしなけりゃこんな事態にはならなかったんだぞ』と泣きながら言っている。
(う主人)『まあみなさん、食い逃げたが一応戻って来たので学生の事情とやらを聞こうじゃないか』主人は一同を静める。
(貧乏学生)『池野さんごめんなさい。とうちゃんが向かいのうどん屋で食い逃げしろと言ったんです』申し訳なさそうに言う。
(うオカミ)『向かいって、島木さんの店?』と貧乏学生の顔をジィーと見る。
(うオカミ)『あれっ、かっちゃん? かっちゃんでしょ。あんた、かっちゃんだよ』
(う主人)『どれどれ、あーあっ、島木の一人息子のかっちゃんじゃないか。随分大きくなったな。分厚いめがね掛けて髪型がボサボサだしカッコも貧乏臭いし解らんかったよ』
(貧乏学生)『スイマセン。この風体なら向かいの息子とバレ無いから、食い逃げをやって池野を困らせろと。僕は地方大学に行ってて、長い休みでも帰らなくバイトをしてました。休暇もらって四年振りに帰って来たら、とうちゃんに言われて……』
(う主人)『とんでもないオヤジだな島木は』主人は怒っている。
(刑事B)『て言うことは主犯は向かいの喫茶「ハナ」のマスター島木と言うことだな』
(貧乏学生)『いえ、やったのは僕なので僕を逮捕して下さい。とうちゃんの店は客が入らなく店じまいしそうで、捕まったら潰れます。とうちゃんは許してやって下さい』
(刑事A)『そうか、うどん屋の繁盛に嫉妬して息子に食い逃げさして困らせ様としたんだな。学生さん、あんたよりオヤジを捕まえないと近隣への秩序が保たれなくなるので、悪いがオヤジは捕まえるしかないやな』
(刑事B)『あーそうだ、ここで食うてたオジサン知らんか?』
(貧乏学生)『店におります。とうちゃん捕まるんかな』貧乏学生は落ち込む。
(刑事・警官・作業員・主人ら一同)『なにっ!』全員驚く。
(貧乏学生)『実はとうちゃんとその詐欺師さんは知り合いみたいです。昨日、久々に家に帰って来た時も店にいて二人で何やらコソコソ話してました。今もまたコソコソ話してる感じです。多分詐欺師さんはここの下見に来た感じだと思います。なんか刑事がどうのと言ってたし、儲かっているなどと聞こえましたから』
(刑事A)『すると、池野さんちを何かの詐欺に陥れ様としていたかもなー』
(刑事B)『息子さん悪いが証人になってくれな、食い逃げ主犯と詐欺計画未遂容疑で現行犯で捕まえられるな』
(貧乏学生)『とうちゃんが、とうちゃんが捕まる。ウエーン 』と泣きだす貧乏学生。
(うオカミ)『いいじゃんあの店はよっちゃんが大学出て継げば』
(う息子)『そうや、そうや』
(貧乏学生)『そうかその手があったか!』と急に泣き止む。一同ガクっとくる。
警官、刑事らは「ハナ」のマスターと詐欺師を捕まえに行く。
そして突然「ハナ」のドアを開け刑事は警察手帳を出し二人を捕まえる。島木と詐欺師を表に連れ出す。
(刑事B)『島木譲二とチャーリー浜、詐欺共謀容疑で逮捕する』島木とチャーリーに手錠が掛かる。
(喫茶ママ)『あんたって人は、迷惑掛けてバカヤロー』怒鳴る。
(刑事A)『息子さんやみんなに何か言うことあるだろ、言ってみろ』
(喫茶マスター)『みなさん、みなさん……、ジョージショック!』一同コケる。
(刑事A)『同じギャグ二回もやるな』と島木とチャーリーを連れて行く。
(警官)『学生さん良かったな。今回は池野さんが被害届けを出さないことになったから。オヤジさんも反省して帰ってくるよ』
(貧乏学生)『池野さんありがとうごさいました。とうちゃんも心入れ替えて帰って来ると思いますんで。あと先程の海老チリナッツ揚げ定食の勘定を払いますので幾らですか?』
(うオカミ)『あっそうか、えー八百円だよ』貧乏学生は勘定を済ませる。
(作業員A)『オカミさん俺らも払うてないから勘定頼むわ』ゴタゴタで作業員らもこの時うどん代を支払う。
(う主人)『かっちゃん、オヤジが居なくても喫茶店、かあちゃんと繁盛させてけなー』
(喫茶ママ)『あの人いなくなって本当スッキリしたわ。いつもネガティブだし、池野うどん店の繁盛を嫉妬するしで一緒にいて疲れるわ。まあ、とうちゃんもすぐ戻って来るやろな、今度は気持ちを変えてもらう』
(うオカミ)『わたしらに見られ捕まったから、ギャグでジョージショックなんて言ってたが本当は偉いショックだと思うよ。だいぶ気が変わるよー』
(喫茶ママ)『そやな、勝則が大学出るあと少しまで私一人で頑張り、店を継ぐか就職するかは自分で決めさせるわ』
(貧乏学生)『解った、かあちゃん店たたまないで待ってろな』一同笑顔で感動する。
(警官)『よかった、よかった』
(う主人)『かっちゃん、また食べに来いよ』みんな笑顔で、作業員達は声援してる。
うどん屋オカミが何やら考えごと。
(うオカミ)『あっ!』と突然大声を出す。
(一同)『どうした、どうした!』不思議がる。
(うオカミ)『刑事さん、食い逃げた!』みんなガクっとコケておしまい。
(完)
配役
うどん屋主人(池野めだか) 作業員A(辻本茂雄)
うどん屋オカミ(未知やすえ) 作業員B(?)
うどん屋息子(吉田ヒロ) 刑事A(石田靖)
喫茶マスター(島木譲二) 刑事B(井上竜夫)
喫茶ママ(山田花子) 警官(桑原和男)
貧乏学生(内場勝則)
詐欺師(チャーリー浜) 他
配役には亡くなったかたもいますが、当時はその人たちのキャラを踏まえて初めて脚本を書きました。
読んでくださった方々に感謝します。