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入院

骨折したところがわるかった……。

入院


この話しは『高校に入りたい』で簡素に書いたが、じっくりと書きたくなった。

二十五歳になったばかりの一月下旬、自分の不注意でアクシデントが起きた。前日の夜、自分は陽気に独り酒を飲んでいた。

当時、通信制の東海大学付属望星高校で勉強をしていた。もうすぐ卒業ということもあり、勉強もほぼ完了していた。そんなこともあって、浮かれ気分で飲んでいた。

だんだんと酔いが回ってくる。友人に電話をしたり、ベースギターを弾いたりと、独りでテンションが高くぐいぐいと飲んでいた。

次の日、朝起きようとしたら、腰に強い激痛があった。ちょっと動くだけで激痛が走る。

これではトラックを運転できないだろうと判断し、会社に電話で休ましてもらいたいといったが、代わりがいないから仕事に出てくれとのこと。

この激痛で荷物を降ろせるかと思いながら会社に向かう。

義父の話によると、昨夜トイレから『ドスーン』と音がして義父は飛び起きトイレに行ってみた。するとぼくが便器に腰をぶつけて倒れていたようだ。そして布団へ運んだらしい。

それで腰がこんなに痛いのかとわかった。自分はなにも覚えてなく、それに二日酔いだ。

激痛で動きは遅いが二トントラックに乗り換え、沼津方面の配達に向かった。当時はアルコール検知器などなかったので二日酔いのドライバーは多かったはずだ。

運転はなんとか出来たが、荷物を降ろすとき、腰に力が入らず他の運送会社ドライバーさんに事情を話し、手伝ってもらった。九割り降ろしてくれた。お礼をいい、ジュース二本あげた。

腰をかばいどうにか会社に帰って来た。早退し、医者に行かしてもらう。

整形外科医院に行きレントゲンを撮り診断の結果、腰近くの右突起部分が二本折れているというではないか。透かさず先生は、明日から入院しましょう。という。


「えぇっ、にゅういん?」


いままで腰の調子はよくなかったが、まさか『入院』とは思ってもいなかった。かなりショックな状態のときに、腰にギブスという名の石膏を巻かれ腰を固定される。

会社に事情を話し、明日から入院しなければならないといったら驚き、配車に困っている様子だった。ぼくが仕事に穴を空けることを詫びた。

翌日、初めての入院生活に入る。最初は個室部屋だった。なんしろ安静にしてくれとのこと。どうせ腰は痛いし固定されているので、あまり動けない。そして初の点滴が始まった。この点滴は四十分ほど掛かるし、苦痛だ。じっとしてなければならない。しかも二回ある。つまり午前中に四十分二本立てということになる。これは天敵だ。

入院生活の一日は、早朝に検温、朝食、回診、点滴、昼食、夕食、九時消灯という暇な生活である。初めのころ、なにもしないので三食は食べられなかった。毎食、半分ちょっとだけ。だけど二週間位たつと胃が拡がったのか、三食とも完食になった。

この整形外科医院の一階は外来で、二階が入院施設。入院部屋数は五部屋ある。内訳は個室二、男性相部屋一(四人)、女性相部屋一(三人)、年寄り部屋一(二人)という感じで自分が入院して満室になった。

入院から一週間たったころ、退院のため男性相部屋がひとつ空いた。ぼくは直ぐ相部屋にしてもらった。個室は値が高いからだ。

相部屋の人は自分をいれて四人。バイクの事故で足を折った大学生、車に跳ねられ足を骨折した会社員、レースによる落車で鎖骨を折った競輪選手、という人たち。みんな怪我の回復を気にかけて励まし合っていた。なんとも寮のような感じ。

この相部屋で寝るときはカーテンで仕切るので、究極のプライベートは確保された。それはやはりオ○ニーだ。

友人のタカオが見舞いに来てくれたとき、エロ本を持って来てくれた。

その夜、消灯してからカーテンをして久々に発電してしまった。

感想は腰のギブスが邪魔でやりずらかったが、下は元気だった。

そのほか見舞に来てくれた会社の友人ニシヤンは、


「われ、これんなきゃ、たまんねぇら」


と、ビニール袋に入れて焼酎とウーロン茶を堂々と持って来た。


「よくニシヤン、看護婦に見つからなかったじゃん」


ちょうど一階に人はそれほど人がいなかったらしい。

ニシヤンの背は低いがぼくより三つ年上で元暴走族だ。運送会社に入ってからの友人で、よく飲みに行ったり、ソープランドにも行った。冗談をいい合うのが好きで、気が合った。大型トラックに乗っていて、まさに小さな巨人だった。

ニシヤンが持って来てくれた焼酎を早速、消灯してから飲みだした。当然、入院の原因である酒による腰の骨折の日から飲んでないため、すぐに酔った。それはとてもいい気持ちになった。入院しているというのに、まったく反省の色がない。

早朝の検温時、看護婦がカーテンのなかに入って来るので、酒を飲んだことがバレないように息を殺していた。

しかし同部屋人にはバレていた。湯飲みカップに何回も、なにか飲み物を注いでいた音が聞こえて怪しかったという。その日の夜は残りの焼酎を同部屋の人達と飲んでしまった。これが病みつきになる。

 そのころ一人退院し、ぼくと大学生のハヤくんと競輪選手のヒラさんの三人になった。 この三人が酒を飲もうとなると、金を出し合いジャンケンをして負けた人が外出許可をとり、酒を買って来る。そして夜、寝間着三人で静かめに飲む。が、酔ってくるとみなさん陽気になり、声が大きくなってきた。

夜勤の看護婦にバレないことを祈る。毎日一人、夜勤の看護婦がいた。見つかったらものすごく怒られるだろうと思う。理由は風呂に入れなく、頭の髪がたまらなくかゆくなり、ガマンできずに一回洗面所で頭を洗った。看護婦に見つかるとずいぶんと説教されたので、酒飲みを見つかれば説教どころではなさそうだ。

その後も週一、二回はローからハイになる三人の酒飲み会は続いた。ある夜は酒が飲み足りず、寝間着のまま病院を脱出して自販機まで買いに行ったこともある。飲んだ次の日はみんな二日酔いなのによくバレなかったと、いまでは不思議なくらいだった。

三人とも骨折のため、内蔵は元気だ。酒を飲んでも骨折は回復していくのだ。

ハヤくんが明日、退院することになりその夜は三人最後の退院祝いをした。翌日ハヤくんは、二日酔いで退院した。

それから五日後、競輪選手のヒラさんが退院することになり、二人で退院祝いをした。競輪選手は生死を懸けている。落車をして運がよければスリ傷ですむらしく、わるければ骨折以上のことが起きる。ヒラさんはすでに三回は入院しているといっていた。

たしかに体を張った仕事である。


「今度、ヒラさんのレース見に行くよ」


と約束し、ヒラさんに酒を注いだ。退院したらトレーニングをして体をつくらなきゃ、といい気分で語っていた。

そして、世話になったヒラさんが退院した。ぼくは相部屋で一人ぼっちになった。

独りでいると部屋がとても広く感じる。ついこないだまで、みんなでの食事や雑談、そして飲酒会と楽しかったことを思い出してしまう。さすがに一人だとつまんなかった。

そんなころ、通信高校の卒業式が東京であったが、出席できず静岡の謝恩会で卒業証書をもらい病院に帰って来た。卒業生たちは飲みにでも行ったというのに、自分は家ではなく病院に帰る。ちょっと落ち込む。そして独りぼっち。

しかし、今日の自分は念願だった高校を卒業した。病院に向かう途中でビール三本とワンカップ三本を買ってしまった。つまり自分を祝う独り酒だ。

消灯になり、一人しかいないのにカーテンを閉じた。カセットデッキで当時好きなXジャパンを聴きながらぐいぐいと飲んでいた。ときおり卒業証書を見ながら独りニヤニヤと笑みを浮かべている。

それは三時間にわたった。

翌朝、ぼくは腰をまさかと思い動かしたが、大丈夫であった。ここでベッドから落ちてまた腰を打っていたらシャレにならないからだ。

数日後、退院の日が来た。やっと自由になれる。荷物をまとめだす。あまりないのですぐ終わった。それは五十日間の入院だった。

早速、退院手続きをして、先生と看護婦さんにお世話になったあいさつをして義父の車で帰った。腰のギブスはとれて、コルセットになった。

その日に友人のニモネニが、退院祝いと称して飲みに連れてってくれた。それは朝方まで続いた。しかし、楽しんだ後には苦痛が待っていた。

翌日は当然二日酔い。いつものことと思っていた。だが、夜になると体の調子がとてもわるくなってきた。頭は痛く、吐き気があり、血圧が高い感じ。

 翌日は一睡もしないで、入院した整形外科へ向かった。

先生に朝まで酒を飲んだことを話したら、先生と看護婦に怒られた。ぼくもそう思う。そして、点滴をさせられた。終わると少しよくなった。先生にハメの外し過ぎと注意され、さすがに反省した。

さて、腰はまだ痛くてリハビリ通院しなければならないが、仕事に戻ろうと会社に報告しに行ったら自分が乗っていたトラックがない。それに上司の顔色がよくない。トラックは代わりの従業員が乗っているのだろうと思うが、上司の態度が気になっていた。

そして上司はいった。


「浜崎君、わるいけど辞めてもらうから」


「えっ?」


 まったく意味がわからなかった。だけどそういうことになった。

 首と卒業、人生の明暗が出るときだったし、厄年もあってその後はお払いに行った。



なんのための入院だったのでしょうねー。

いまでも毎日腰痛が続いている。加齢ととともに骨も弱くなり、維持していかなければなりません。

あそこもだいぶ弱くなったよ。

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