自動車
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十九歳のとき、初めて車を購入した。二年ローンを組み、買った中古車はトヨタマークⅡ。義父の車でとりに行くときは、とてもわくわくした。ぼくもついに大人の仲間になる。早くハンドルを握りたい、決めて乗ったら彼女ができるかもしれない。そんな思いで中古車屋へ着くと白のマークⅡがあった。きれいに洗車されて外観はいい。
そして義父と二台で自宅を目指す。いきなり事故をしないよう慎重にハンドルを握った。自分の車を持てたので、ニヤニヤして見えているかもしれない。でもそんなの気にならなかった。まるで新しい自分の部屋を持ったようだ。信号のときは振り向いて後部座席を見渡した。
車があると行動範囲が広がるので楽しみだ。なんといってもサーフィンで、ほかの海まで行ける。いつもと違うビーチで満喫出来るはずだ。
毎日運転しているとマークⅡの特徴がわかった。
ハンドルが重いことと、燃費がわるいこと。左折や右折のたび、重労働に感じる。
マークⅡのガソリンタンクは五十リットルほど入る。いつも乗っていると消費が早かった。
これは金がかかるなーと。
車で遠くまで行ける、でもガス代は掛かる。世の中うまい具合だ。次回は燃費のいい車を買おうと思った。
駐車場は一家に一台。義父がとめるため、ぼくの車は新幹線の道沿いにとめていた。当時は駐車禁止ではなく、近所の人も路上駐車している。だがこの路駐で後々痛い目にあうのだ。
一台目のマークⅡを三年乗って二台目を買った。車種はホンダシティーターボ 。一三〇〇ccと小さく燃費もいい。また二年ローンを組んだ。
三カ月目のローンを払った夏の夜、台風が接近中。
こんな日に友人ニモネニが自転車で遊びに来た。よく傘を差して来たなと、雑談をつまみに酒を飲んだ。
友人も帰り、酒も入っていることですぐに寝てしまった。外は大雨だ。
その夜、交替勤務明けの弟がぼくを起こして、
「車が水没してる」
ぼくは酔いと眠気の狭間で起き、ベランダから外の公園を見た。湖のような状態だ。
これは夢か。車は公園の奥側の新幹線沿いにとめた。見るからに車が水に埋まる感じだった。
弟の作業着がびっしょりと濡れている。どうやら車の近くまで見に行ってくれたらしい。ぼくはうつろの状態だ。
弟は車の屋根まで水に浸かっているという。小学三年時代の七夕豪雨を思い出す。ぼくは登校拒否のときだったので、母にいわれるまで知らなかった。あの日は中学に避難すると、川が氾濫して近隣の家が水に浸かっていた。ぼくの家は大丈夫だったが、いまは自分に起こっていた。でもとにかく眠い。
翌日、新幹線沿いは海抜が低いことを知った。まだ三カ月しかローンを払ってない車だ。
引きとりに来た車屋は、オーバーホールするより買い換えたほうがいいといわれ、また同じホンダシティーを買うことになった。前の車のローンと買い換えた車のローンが合わさって、支払いが高くなってしまった。このホンダシティーは、五年位乗ったはず。
さらに乗ればいいのに、オーバーヒートしたこともあって長く乗るのは控えた。
その後の自動車歴は、スバルのドミンゴを一年、平成元年のホンダシビックを四年、平成四年のホンダシビックも五年、平成十一年のダイハツアトレーを三年、平成十四年のスズキエブリーを半年、平成十一年のバモスを六年乗った。でも二〇一六年二月に売った。
たしか十一万キロで手放した。
なぜ売ったのかというと、長くなるため、そのことはまた話すことにする。
いまではレンタカーがガソリンスタンドにもあり、維持費が掛からなくてもすみそうだ。カーシェアというレンタカーも探せば近くにあるようだ。低収入なのでこれからの生きる術を考えないとならない。