まる子荷物を持つ
ありがとうございます。
また応募しましたらダメでしたー
よろしければ読んでみてください。
☆
土曜の夕方。まるこは一人テレビを観てゲラゲラと笑っている。そこへ電話が掛かってきた。
辺りを見渡す。
(まる子)だれもいないのかな。なによ、面白いときに……。
ぶつぶついいながらも電話に出た。
(まる子)もしもしさくらです……。なんだ、お母さん。
(母)……スーパーにいるけど、荷物が多くなったので取りに来てくれない?
(まる子)えー、ちょうどいい時なのに。
(母)あんたしかいないでしょ。
(まる子)うーん、そうみたい。
(母)それなら頼むよ。
電話を切ると仕方なく向かうことに。
(まる子)なんでおじいちゃんも、お姉ちゃんもいないのさ。
小言をいいながら玄関のカギを掛けた。
向かっていると、友蔵とおたけが前から来る。
(まる子)おじーちゃーん、おばーちゃん!
まる子は手を振った。
(友蔵)よー、まる子や。老人会でお餅をもらったんじゃ。
友蔵は両手にお餅の入った袋を持ち上げた。
(まる子)なーんだ。おじいちゃんも荷物があったの。
がっかりするまる子。
(友蔵)どうしたんじゃ。
(まる子)お母さんがスーパーで荷物が多いからっていわれ、それで向かっ
てたの。
(友蔵)そうじゃったか、これじゃ、向かえなくて悪いのう。
(まる子)いいよ、それじぁね。
まる子はテンション低めに手を振って別れる。
スーパーへ到着すると母は外で待っていた。
四袋もあるのを見たまる子はギョッとする。
(母)ありがとね。特売もあったもんで袋へ入れると、こんなに増えていたの。
(まる子)わたしは何個持つの。
(母)二つ持ってくれれば。
何をこんなに買ったのかとまる子はのぞいた。塩、砂糖、キャベツと重いものが目立った。肉と野菜もあった。
(まる子)わたしはどれ。
なるべく軽いのを持とうとする。でも母はすでに二袋持っている。それにもう二袋を持つことになる。
(母)どれでもいいわ、こんなにあるので。
(まる子)じゃ重いの持つよ。
少し母の大変さをわかり、塩と砂糖入り、それにキャベツ入りを持った。
(母)ムリしなくていいから、途中で変わってもいいよ。
母は四つも持つことで、まる子にやる気が出たわけではない。
(まる子)がんばるから。
母はまる子へ珍しいと笑みを向けた。
歩きながら母は昔の身の上話をする。
(母)……わたしもね、小さいころはよく母に荷物持たされたのよ。小さな八百屋行ったり、魚屋さん行ったりね。便利なスーパーなんてないし。
(まる子)スーパーってなかったんだー。
(母)そうよ、今はとても便利なの。昔の時代に今のまる子だったら毎日働かされてたわ。テレビなんて公民館まで見に行ったりしたし、一家に一台なんて夢だったわ。
(まる子)ゲッ!
当たり前に観ていたテレビ。笑っていたさっきの姿を想像する。
(母)掃除や洗濯も手伝わされて、なかなか遊べなくてね。
(まる子)洗濯機はあったの?
(母)そんな便利なのはないわよ、手洗いなの冬でも。
まる子は腕が疲れてきたが、寒い中大きな桶で洗う、子どもの母の姿を浮かべると、よりがんばろうとする。
母はまる子を察した。
(母)いいわよ、軽いのにしなさい。
母は軽そうな袋と変えようとする。
(まる子)大丈夫。がんばる。
しばらく歩くと、やはり腕が疲れてくる。
そんな時、手を振ったおじいちゃんが前からやって来た。
(まる子)あっ、おじいちゃーん!
友藏は息を切らしていた。
(友藏)すみれさんとまる子が大変じゃと思ってなぁ、ハァハァハァ……。
(母)お父さん、そこまでしてくれなくてもいいんです。
母は、背中をさすり息切れの友藏を気遣った。
(まる子)さすがおじいちゃんだね、まる子のことを気にしてくれるもんね。
(友藏)そうじゃ、わしのかわいい孫じゃからのう。
まる子は、塩と砂糖の入った袋を友藏へ渡そうとする。
(母)あんた頑張るんじゃなかったの? 軽そうなのにしなさい。お父さんは寄り合いで疲れてるんだから。
(友藏)いいんじゃ、いいんじゃ。まる子が疲れるから。
といい、友藏は受けとった。
(母)すいません、わがままな子で。
(まる子)わがままじゃないもん、まる子の腕を心配したんだもん。
まる子は一袋になったので、母の袋を一つ受け取った。
(母)あんた、きょうは積極的だね。
(まる子)だっておじいちゃんお餅を持ってたのに、ここまで来てくれたんだよ。
まる子は友藏へ笑みを向ける。
前方に三袋を持つお年寄りが、くたびれたように歩いている。
後ろ姿を友藏が察知した。
(友藏)あれ、あれは辰五郎さんではないかな。
(母)そうですね、浜崎さんのおじいさんですね。
(友藏)そうか、寄り合いでの片づけ係じゃったの。おーい、浜崎さーん!
辰五郎は振り向いた。顔から汗が次々と流れている。
(辰五郎)おお、ともぞ~うさん。
まる子たちは彼へ寄れば、三袋にお餅がたくさん入っていた。
こんなに欲張ったのかと、三人とも驚いた。
(友藏)浜崎さん、こんなにもらったのですか?
(辰五郎)いえ~、ハァハァ……。余ってしまって、みんなたくさんもらったようで、仕方なくわたしが持ち帰ることになりました。
(友藏)そうじゃったのー、役員さんは大変じゃったねぇ。
そして友藏が重そうな一袋を持つことに。
(辰五郎)おー、これはありがとう~。
辰五郎は笑顔を振りまいた。
(まる子)おじさん、はまじを呼べばよかったのに。
(辰五郎)電話しても~、だれも出なかった~。
まる子は、はまじのことを想像。帰るとすぐ遊びに行くとわかった。
(母)まる子、お父さんに渡した砂糖の袋を持ちなさい。
両手に重いのを持っている友藏を気遣う。
(友藏)いいんじゃ、いいんじゃ。
(まる子)おじいちゃん大丈夫?
(友藏)なんのこれしき。
といい、バーベルのように両手を上げた。が、顔が赤くなった。
それにはみんな驚く。
(母)お父さん、ムリをしないでください。
これではまずいと、砂糖の袋を母が取り上げた。
(友藏)すみれさん大丈夫じゃよ。
(母)ダメですって、お体を大切にしてください。
(友藏)すまんのう。
そうなるとまる子が砂糖を持つはめに。
せっかく軽くなったのにと、辰五郎を罵った。(はまじのじいちゃんめ)と。
辰五郎と友藏、まる子と母と並んで帰っていく。
家に近づくと結構な重さでまる子もしんどくなった。
(まる子)ハァ、ハァ、ハァ……。
後方から声が掛かった。
(はまじ)あれ、さくらじゃないか。えっ、じいちゃんもいた。
まる子たちは一斉に振り向いた。
(辰五郎)おお、の~り~た~か~。
と、辰五郎は万面の笑みを浮かべた。そしてまる子や母、友藏も笑顔が湧き出している。
(キートン)グローブを持ったはまじは、この後、どんな運命かをみんなは知っていた。
(おわり)
さくらプロへ勝手に応募しましたら、一週間で返答がありました。
でも返答あるだけいいです。文学賞はありませんからね。
ずいぶん早い返答にもう送って来なくていいよ、ってことかな。