カチッ。
「おはようー!シュウ、奏ちゃん!」
「ん。おはよう」
「おはようございます、山瀬先輩。朝練があるので先に行ってます。」
「ウンウン。頑張ってきなさい」
「おまえは母さんか」
玄関で待ち構えていたのは、幼馴染み&同い年の女の子、山瀬 柚だった。
《ゆず》って書いて《ゆう》って読むのはなかなか珍しく、僕も昔は「ゆずちゃん」って呼んでたような気がする。
柚は身長156cm、髪は少し短めの茶色、明るい雰囲気を纏っていて誰にでも好かれそうな元気キャラである。実際、モテるらしく先週は2回も告白されたらしい。んー、そのモテ度を僕に少しでもあれば高校生活が華やかになるのに。とか、思っている。
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「...でねぇ、マジでヤバイ話がね、ほんとに怖くてさ、特にあのグワッ!っていきなりでてきたときとか怖すぎて夜なのに悲鳴あげてお母さんに怒られちゃったんだよね♪。それでね、終わったらいつのまにか12時過ぎてたから寝ようと思ってたんだけど、怖くて全然眠れなかったんだ~。
って、ちゃんと聞いてる?」
「うん、グワッってきてキャァーってなって、そのまま怖くて眠れなくて、震えてたんでしょ?」
「いや、震えてまではないよ~。(笑)」
僕自身、あまり自分から話す方じゃないので、彼女のマシンガンのような話の連発を僕はいつも聞いている。柚といるのはすごく楽しいし、僕から笑わせるというような高度なテクニックがない僕にはとてもいい相手だ。
ピーポーピーポーピーポー....。
「ん?救急車の音が聞こえるね~。何かあったのかな?」
「さぁ?交通事故じゃない。最近、事故多いし。」
ドップラー効果ってなんで音変わるんだろとか昔は思ってたんだけど調べたら、
「音の波が近づくのと離れていくので変わるから」ってことだったのを覚えている。
ドップラーの意味も知らないのに何かと好奇心は高かった。
「ねぇ、ちょっと見に行かない?」
「え...。もし、ほんとに事故で死んでたら気持ち悪いしヤだよ。」
「いいじゃん、これも何かの出会い?だと思って!」
「死体と出会ってもなにも生まれないよ。」
「まぁまぁ、貴重な体験だし行ってみようよ!」
「はぁ。。わかったよ。」
結局僕は話に乗せられて現場に向かった。
現場にはケータイで写メを撮っている人やすごく心配そうな顔をしている人で溢れかえっていた。
「ちょっ、見れないよ~。」
身長の低い柚は人の壁で見えなくなっていた。僕は身長が一応170cmあるためここからでも見える状態にあった。
「ぇ、奏?」
そこから僕のメトロノームが動き出した。