第十四話「リグレット部──後悔を乗り越える」
僕は物心がついた時から孤児院にいた。両親の顔はわからないし、興味もない。僕は昔から境界を操ることができ、周りから奇怪な目で見られていた。そんな時、警察官の男が僕に
「やあ、君がキョウであってる?」
僕は睨みつけ、話すことは何もないと目で訴えた。
「ああ、ごめんね急に話しかけて、早速で悪いんだけど俺の家族にならない?」
.....頭がおかしいのか?急に話しかけてきたと思ったら、そんなことを話してきた。
「説明するとさ僕の息子も能力を持っていてさ、もうすぐ家にくる能力持ちの子も居るんだけど、来ないって話」
男は簡単に説明した。.....くだらない、どうせこいつも企んでいる。これまでの大人も僕を引き取ろうとして、能力を利用して金儲けに使ってきた。
「しょーもない」
僕はそう口からこぼれ出ていた。大人は毎回そうだ、自分の欲の為ばかりでなにも僕のことを考えてくれない。
──沢山のことをした。色んな家に引き取られては利用され、騙されて、手を汚して、
許せない。大人が我が物顔で
僕の能力を利用しようと企む奴らがだから、僕は
「いいよ。着いていって。」
──復讐してやる。
僕を何度も利用できると思うなよ。
この男がなにを考えているかはわからんが、僕と同じ苦しみを味合わせてやる。
*
僕は警察官の車に乗っていた。
横には生きる気力がなくなった少女
こいつが能力者なのだろう。
.....やっぱり来なきゃ良かったかもしれない、少女の異様な雰囲気にこの子は大切な人を失ったばかりなんだろう。そんな子を連れて行く男はやはり怪しくて、僕の大人への復讐の炎はまた激しく燃え続けるのであった。
*
家に来て、この男の子供らしき人物が玄関にいた。その子は「誰?」と言いながら、実の父を睨みつけている。.....僕と似た目をしていることに多少の違和感を感じつつ、この状況を作った元凶であるこの子の父は
「今日からお前たちは俺たちの家族だ!」
少女と、それを聞く前から口を開けて唖然としていた少年の姿があった。
*
僕らは部屋に入り、互いの自己紹介をしようとした。こいつの父親はさっき上司に呼ばれてしまったと言って家から出て行ったせいで、先に挨拶をすることになった。
.....空気が地獄だ。目が虚な少女、僕を睨みつけてくるあいつの子供。だが大人に復讐と言ったが、
こいつらは恐らく僕とほぼ同じ境遇にいる。なら敵対的にする必要はない。そう考えて
「僕の名前はキョウ。突然この家に住むことになったけどよろしくお願いします。」
僕は営業スマイルで挨拶をしたが、
誰からも返事がなく、少しの沈黙が支配した。
「レイ。それだけ」
先に声を上げたのは少女だった。
僕が少し可哀想に見えたのか。それともさっさと自己紹介を済ませたかったのか。それを見て、少年は僕を睨む目をやめて、諦めた声で、
「俺はトウマだ。そして、俺の能力は思考を読む能力。これからよろしく。レイと──」
「キョウさん」
トウマは僕を再び睨みつけながら喋った。なるほど僕が大人が嫌いで復讐してやろうとしたのが、バレているのか。
.....これは詰みだな明日にでも家から追い出されるだろう。まあでも、やることだけやってから逃げるか。
*
そして深夜になり、タンスを見ていた。なにか金目な物を探してこの家から去ろうと考えながら物色していた。
「だから言っただろう?思考が読めるって。」
壁にもたれかかっている。トウマがいた。
「しょうがないか.....」
僕は境界を使い、逃げようとしたが
「あー待て待て、俺たちは別にあんたのことを取って食おうとしていない。」
「ハッ、それはどうかな信用できないね。」
僕は鼻で笑い飛ばし、トウマを睨みつけ、いつでも逃げられるようにしていた。
「俺は人の気持ちが読める。嫌なことも聞きたくないことも」
やつは急に語り出した。
「どこへ行っても悪口、企み、嘘、もうたくさんだ。俺も人を信じない、お前もレイもだからお互い騙し続けよう。この世界を生き抜くため。」
【俺はピエロにでもなってやる。】
やつはニヤリとしながら僕を見つめていた。その言葉が嘘かはわからない。だけど僕と同じ境遇の子がいて、少し救われた気持ちになった。
「.....ああ、わかったよ。」
そうするとトウマはにっこりしながら、
「よし次はレイをどう元気にさせるかだな!」
とトウマは言った。.....僕は沢山の人の未来を奪ってきた。騙されたとは言え僕がやったことには変わりはない。僕はこれを背負いながら生きていくことだろう。僕は窓を見て
──満天の星空を見つめながら、僕たちの未来のことを考えた。
*
明日になり、トウマと僕はどうやってレイを励ますか考えていた。
「僕の予想だとレイは大切な人を失ったと思う。」
トウマは少し驚いたのち、眉を顰めながら、
「どうやって気づいたかは知らないが、そんなとこだ。」
レイは昨日の夕飯や今日の朝飯からずっと部屋に引き篭もっている。
僕は苦しんでいる人の励まし方があまりわからないが、
「やっぱり、話してみるしかないか」
何事も話さなければ始まらない。僕らはレイのところに行き、扉の前に立った。
「おい結局どうするんだよ」
「しらねぇよ考えとけよ。」
当然、何も思いついているわけもなく。しょうがないなあと言いたげにトウマは
「わかったここは俺にまかせろ」
と世界一頼りない返事をし、
「おーい今日の昼飯パフェだぞー。
あーでも部屋から出ないんじゃ食べれないよな!安心してくれ、俺がちゃんと食べとくから!」
と嫌味ったらしく言ったら、トウマの体は動かなくなり、ドアの下から紙が出てきて、殺すとだけ書かれていた。
僕らは部屋に戻り、また作戦会議をしていた。
「バカかお前!あんな挑発で出てくる訳ねぇだろ。」
「でも面白かったろ?」
トウマはニヤニヤしながら僕に話しかけてきた。
それから数日間トウマはレイにイタズラをし続けた。食べ物にからしを入れたり、レイを腹立たせて心を開けさせようとしているのか?いや、あいつ自身も楽しんでいるな。
レイも少しだけ、怒ったりするようになったが、まだ人を信用できないようで、トウマの父と話す時は手が震えている。
僕は夜に急な尿意に気づき、トイレに行き、帰ろうとしたが窓際で泣いているレイがいた。僕は
「隣いいかな?」
と近くのイスに座った。少しの間静寂が訪れた。
「私.....」
意外にも先に声をかけたのは彼女だった。
「大切な人と離れ離れになって、その人は悪い組織に捕まっちゃって、助けに行かなきゃいけないのに!」
レイは歯がギシギシと鳴るほど、現状を噛み締めていた。レイは今まで我慢してきたのだろうか?それが今になって、言葉が、思いが止まらなくなっている。
「どこに居るかもわからない!それに.....怖くて、怖くて、あの時私は自分が自分じゃないような感覚だった。純粋に殺戮を楽しんでいた気もしていた。」
レイは手のひらを見ながら、あの時のことを話している。
「私は人を殺めてしまった。取り返しのつかないことを.....!」
僕はわからない。彼女の気持ちが、僕は彼女ではないから。だけど少しだけ理解はできる。僕も沢山のことをしてきた。その度に罪悪感と後悔に苛まれた。だから僕は
──レイを抱きしめた。その辛さは僕が知っているものであるから、分かち合いたい。そんな意味を込めて
「僕は怖いさ。大人が怖い。平気で騙してきて、その上捨てる。でも君たちは助けたいと思えた。」
二人とも、僕と同じ境遇で涙を流して苦しんできた。だから──
【僕たちでその悪い組織をぶち壊そう。】
もうすぐ僕らも中学生それなら──
【後悔を乗り越える。部活、リグレット部をここに結成する。】
僕は立ち上がって彼女に手を差し伸べた。彼女は目から涙を出し、「うん!」とだけ返事をして、僕の手を握った。




