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人見知り魔法使いののんびりきままな錬金店  作者: 牛乳寒天


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8.イシュネとの出会い

「では、営業開始のお祝いの品を贈らないといけませんね。二週間ぐらい待ってください」

「いえお構いなく」

「この後迷惑をかけることになるかもしれませんから、受け取ってください。いいですね」


 わお。圧が少々強くないですか師匠。てか師匠に迷惑かけられるようなことこれからもないと思うんだけどな…なにを心配しているのやら。


「では、その紅茶を飲み終わったら案内してください。弟子のことをよく知るのも師匠の務めというものでしょう」

「わかりました!」


 ──師匠と話をしているとあっという間に紅茶がなくなり、私のお店に案内することになった。少し緊張するな…いや、もう後悔したって置けるものもなんにもないから変えようがないんだけどさ。そういうことじゃないんだよ。


「ここです!」


 そう言ってドアを開けようとしたのだが、開けることはできなかった。どうやら誰かが同じタイミングでドアを開けようとしているらしい。ドアノブから手を離した。


 すると褐色肌の赤髪の少女が出てきた。桃鍵ともユリ丸とも容姿が異なるので、NPCだろう。こうやってNPCとプレイヤーを分けて考えてしまうのは悪いとわかっているけど、どうか許してほしい。こうでもしないとNPCとも話せないのだ。


「ん?ここの店主か?」

「えっと…はい、そうです」

「そうか!ポーション、たくさん買わせてもらったぜ!今巡界者たちがこぞって買いにくるから稼ぎ時だと思うんだが値上げとかしないのか?」

「巡界者は限られた人しか入れないようにしてるので…値上げする必要がないというかなんというか…まぁとにかく気にしないでください。お買い上げありがとうございます」


 そこで師匠がなんだか驚いていることに気づいた。変化が少ないから憶測にすぎないけどね。でも目を少し見開いているのでそうなのだろう。


「…イシュネ。ここで会うなんて奇遇ですね」

「宵凪!久しぶりだな!集会以来か?元気そうでよかったぜ!」


 イシュネさんは満面の笑みでそう言った。さっきの態度とこの態度を見るに明るい人なのだろう。師匠とこの人は知り合いっぽい。…集会ってなんだろう?


「そういえば、どうしてお前がここにいるんだ?あんまり外にいるところ見たことないんだが」

「この子の付き添いです。師匠として見にきました。…ああ、それと。あなたが気づいてないだけで結構外に行っています」

「…師匠?お前、弟子とったのか!?そんなぽんぽん弟子とるようなタイプじゃないだろ。どうしたんだ?」

「生命の輝きがとてもいいのにそれを利用していなかったからですね。もったいないので教えようかと」

「生命の輝き…前にそんなの見えるって言ってたな」

「ええ。私の種族限定ですけどね」


 生命の輝き…。理解できない。初対面の時もそうだったけどなんなんだろう、それ。というか種族限定って言った?…なにか特別な種族なのかな。


「…種族、言っていませんでしたか?」

「はい。聞いたことないです!」


 え、心覗かれてるのかな。ピンポイントで言ってくるね…。


「言ってなかったのか。お前、そういうところ抜けてるよな…。」

「なんのことでしょうか。──私の種族は影です。字の通りですね。」

「影…!?」

「はい。ですから影のあるところではどこでも出られますし、何かを連れてくることもできます。…あなたに渡したネックレス、覚えていますか?」

「『闇夜のネックレス』でしたよね」

「合っています。それは一瞬だけ魔法で暗闇を作り出し、それによって生みだされた影を利用しあなたを連れてくるという効果が込められています。また、影は光に敏感ですのでその人の輝き、つまり生命の輝きを見れるんですよ。」

「そういうことだったのか!なるほどなぁ」

「もうあなたはいいでしょう。早く帰ったらどうですか?」

「えー…わかったよ。じゃ、またな!!」


 最後まで元気いっぱいの人だった。聞き分けいいんだね。師匠が帰宅を提案したら本当に帰っちゃったよ…。


 ──それにしても師匠の種族が影だったのは驚いたけど…同時に納得もした。だってもらった称号の名前が【生死の領域に触れる影の弟子】だし。なんか影とかかっこいい言い回ししてるなと思ったけど、これ本当に影、師匠のことを指してたんだ。


「…でも師匠、今日向のとこいるじゃないですか。それは大丈夫なんですか?」


 日向だと影が消えるから大丈夫なのかなと心配になった。けれど師匠は首を横に振り、


「いえ、影があれば便利だというだけで、なくてもなにか問題があるというわけではありません」

「なるほど…」

「私自身が影ですから」


 …よくわからないけど、そういうものだということで納得するしかないだろう。とりあえず、師匠は影があると便利。これだけ覚えておこう。


「それで、一つお聞きしたいのですが…。看板はないのですか?」

「看板」

「ええ、看板です。…まさか忘れたわけではないですよね?」


 看板…え、これ必要だったの!?看板なんて頭になかった…。今から作れば間に合うかな?


「すみません、忘れてました…今ぱぱっと作ってもいいですか?」

「ええ、どうぞ。看板がないとどんなお店なのかわからず、私たち(NPC)はそこまで入ろうとしませんから」


 なるほどね。怪しいお店には入らないってことか。ここは路地裏でもあるしね、ちょっとやんちゃなやつの溜まり場とかだったら嫌なのだろう。


 素材は木材二個で足りるようなのでぱぱっと作ってしまった。どんな文字を入れるかはこちらで設定でき、作成が終わった時はその文字が書かれた状態で看板がでてくるのだ。便利だね。


 あとフォントの設定とかもできるみたい。書道で書いたっぽいフォントにしたよ。これが一番かっこいいと思ってるんだ。


「貸してください」


 作成した看板を師匠が手に取り、魔法をかけはじめた。

 どうやら風魔法のようだ。風の流れが少し変になっているからなのだろうと考えた。


「…これで終了です」


 看板の設置が終わったみたいだ。

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