5.こだわりの物件
不動産屋についたので早速中に入る。こちらにどうぞ、と案内された席に腰掛けた。
「どんな物件をお探しですか?」
「そうですね、様々な生産施設が整っている物件ってありますか?」
錬金道具においては師匠を超えるものを持っている人は少ないんじゃないかな。師匠の道具を鑑定させてもらったけど書いてあることがとんでもなかったんだよね。
────
「師匠、道具について調べるために鑑定してもいいですか」
「構いませんよ。説明するより見たほうがいいこともあるでしょう」
お言葉に甘えて鑑定させてもらう。師匠の大事な道具なんだし、なにをするにも許可は必要だろう。
〚生命の錬金釜〛
【生死の領域に触れる影】の異名を持つ者の力が込められた錬金釜。調合や新たな生命の誕生など、様々な目的で使われる。あらゆる物質の因子を読み取り、素材同士の相性を自動的に最適化する。また、この錬金釜でアイテムを生成する際、因子を少し貯蓄される。この世にこれと同等の錬金道具は存在するが、さらに上のものは存在しない。
「え」
「…?どうされましたか、そんな背中に宇宙を背負っているような顔をして」
そりゃなるでしょ!こんなものをぽんと出されて「自由に使ってください」なんて言われるんだよ!?当たり前すぎる!!。。というかとんでもない人の弟子になっちゃったんだけど…!!まだ始めたばかりでなんでこんな価値が高いものに出会うわけ?とんでもない人が多すぎるんだよ!こんな序盤で会うべき人じゃない人がなんでいるの…!ヴェイルさんも師匠も!!
「…そうですね、気が向いたら同じものをあなたに贈ります。あなたの師匠であることをアピールする意味をこめて」
「????」
「やはり、あなたの生命の輝きはいいですね。他の巡界者とは違います。種族の違いでしょうか」
なにかとんでもないことを言われたような気がするが、その後の師匠の調子があまりにもいつも通りだったので気のせいだったのだろう。少なくとも今はそう思っていたい。…生命の輝きってなに?人それぞれ違うものなの?
「師匠って主に生命に興味を示してますよね。…今までで師匠が新たな命を誕生させたことはあるんですか?」
「いえ。ですが実験は進めていますよ。命を無駄に消費するのは嫌なので、命を宿らせずに体の生成や脳の働きなどの実験を行っています。その錬金釜もそろそろ因子が必要量に達しそうですので、対した時間はかからずに生命をこの手で誕生させることができそうです」
「逆に足りない実験とは」
「今のものよりも細かいところを詰めた実験ですね。せっかく誕生させるのなら、私が満足する成果を得られてからでないと嫌ですので」
────
…こんな感じだったな。というわけで錬金の道具については師匠を頼ることになりそう。まだレベル1なのに品質が高すぎるものを使ったとて手に余るんだけどさ。でも少しは品質が高くなったりしそうだよね。
「かしこまりました。ですが、そのような物件となるとお値段がかなり高くなりまして…。大体予算はどれくらいでしょうか?」
「…4500万リーンほどですね。できれば支払いは一括がいいです」
「では、この物件はどうでしょうか?」
不動産屋の人が参考資料だろうか、紙を差し出してきた。しっかりと受け取り、目を通す。
…うーん、いいとは思うんだけどなんかピンとこないなぁ。申し訳ないけど、他の物件も見せてもらおう。
──そんなこんなでたくさんの物件を見せてもらった。けれどどれも『とてもいい』って思えなかった。『いい』止まりである。向こうの人もだんだん紹介できる物件が減ってきて困りはじめている。
ほんとお手数おかけしますがもう少しお付き合いください…。自己中なのはわかってるんですけど納得できなくて…。大きい買い物なのでおいそれと決めたくないんです…。
心の中で謝りながら次の物件を見せてもらう。
「こちら路地からは少し離れているところにはなりますが、値段は内蔵機能から考えると控え目となっております!」
今までのは全部路地にあるものや離れてないものだったんだ。そう思いながら物件の資料を見る。その瞬間、私は衝撃を受けた。そう、この物件は『とてもいい』と思えるものだったのだ。これを購入させてもらおう。
「この物件をいただけますか」
「ありがとうございます!では、こちらに必要事項の記入をお願いします」
紙を差し出され、必要事項をどんどん書き込んでいく。口座番号なども必要らしい。この物件の代金である4000万リーンが口座にあることを確認しながら書いていく。
実は、ここに来る前に冒険者ギルドに寄ってきたんだ。物件を買うのにお金はいくらあってもいいから、世界樹の葉の代金分がもう振り込まれているのか確認しにいった。するとまだゲーム内で一日しか経ってないのにもう振り込まれていた。仕事が早くて助かる。
ということでお金はちゃんと払える。そのことは心配しなくていいね。
…っと、記入が終わったので不動産の人に渡し手続きを進めてもらう。
しばらくの時間が経って声を掛けられる。どうやら手続きが終わったようだ。物件の鍵をもらい、不動産屋を出た。
◇◆◇
<side:宵凪>
地図に示した場所に向かう。先ほどスイに話した通り、そろそろ生命を誕生させることができそうなのですが…。実験材料というか、その生命の主な材料を取りに行っています。ぎりぎりまで素材をとらないようにしていましたから。素材を事前にとっておくと間違えて実験に使ってしまいそうですので。
…着きました。ここは変わっていませんね。侵略者などは来ていないようで安心しました。
この古びた遺跡にはとある龍が眠っています。この龍が悪事を犯した際、私が封印したからですね。初めての生命の誕生はこの子をベースにすると決めていたんです。
ですので今まで以上に細かに実験していたんです。そもそもこの龍は悪事を犯したという自覚がなかったんです。本人としてはただ遊んでいただけですから。ただ、少々その力加減を間違えてしまったというのが真相ですね。龍と人間では体の大きさも、脆さも異なりますので。
…あぁ、封印をするときに彼の望みを聞いたんです。それを果たすために私はここまで来ました。
その願いは『見た目だけでも人間らしくなってみんなとたくさん遊びたい』。元々生命について研究していた私にとっては生命の創造も研究の通過点かと思い、願いを叶えることにしたんです。
彼の新たな肉体となる体を作ることは、生命の創造とも言えるでしょう。彼の望みを叶えるまであと少しです。新たな体を得たあとは新しくとった弟子、スイがいますのできっと遊んでもらえるのではないでしょうか。
スイの生命の輝きは素晴らしいです。ですが本人は気づいていないようですね。自身の生命の輝きに気づければ大幅に力が上がるんですが…。もうすこし、静観しておきましょう。あんまり長い間気付かずにいるようでしたら教えるくらいでちょうどいいでしょう。
さて、この龍を持って帰りますか。これでまた、実験が進みそうです。




