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人見知り魔法使いののんびりきままな錬金店  作者: 牛乳寒天


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3.世界樹の葉の売却

「あの、これを買い取っていただきたいのですが」

「おう、ちょっと見せてみろ…うお!?お、おい、嬢ちゃん、これって…」

「世界樹の葉らしいです」


 私がそういうと、素材買取のいかつい人は口をあんぐりあけて驚いていた。…やっぱりこれ珍しいものだよね。なんとなく察してはいたけど。


「嬢ちゃん、これは市場で滅多に見ない代物だぜ?魔力伝導性は抜群、触媒としてもこれ以上ない代物だ!

 腕がたつ冒険者やマニアにとっては喉から手が出るくらい欲しいものなんだぞ?それを個人で所有するでもなく売りに来るなんて、なに考えてるんだ…」

「やりたいことがありまして。その資金にしようかと」

「どんな規模にしようと思ってるんだよ…とりあえず、これは俺じゃ値段を決めらんねぇ!嬢ちゃん、俺についてきてくれ!」

「…あ、はい。わかりました…あの、すみませんでした」


 最後はとんでもなく小さい声で返事をした。いや、あの…プレイヤーの人たちがこぞって私に視線を向けてくるんだよ!無理無理、誰かに注目されるのとかほんとに無理!!!しかもこの人が抜けるから回転効率悪くなるし、申し訳なくなってくる。本当に申し訳ないです。煮るなり焼くなり好きにしてください…。しかも色々言ってるし!逃げたい誰か助けてくれ…。


 ──とにかく、私を衆人環視しないでくれ!!もうやだ!!さっきも後悔したけどフードとか顔を隠せて見られてることに気づかないもの買っとけばよかった!


 …と今更思ってもこの状況は全く変わらないので、全く気にしてないふりをしていかつい人についていく。実際は冷や汗だらだら、挙動不審、すみませんの独り言をずっとぶつぶつ小さな声で呟いてる。


 そんな調子の中、やっといかつい人が足を止めた。目的地に着いたのかな?

 途中から全くプレイヤーがいなかったんだよね…。なにこれ、なにかの特殊イベント?というかこんな重大そうなことが起こるものをチュートリアル用の空間に生やしておかないでほしい。


「ギルド長、入るぞ」

「ええ、どうぞ」


 …意外と礼儀正しいんだね、この人。ちゃんとノックして声かけまでしてる。失礼だけど、外見からはこんなこと想像もできなかった。


 促されるがままに部屋の中に入る。そこで待っていたのは、一言でいうとシゴデキ系な人だった。眼鏡がぴったりハマってる。いかつい人との違いが凄い。


「はじめまして、巡界者さん。僕はここ、ノースファーストの冒険者ギルドのギルド長です。レオン・ヴァルディスと申します。お好きな呼び方で構いません。…それで、いかがしましたか?グラニス」


 どうやらいかつい人はグラニスというらしい。で、この人…ヴァルディスさんでいいか。ヴァルディスさんはギルド長。え、待って私ギルド長に会わされてるの?まだゲームはじめて大したことしてないのに?初日で?嘘でしょ…。


「この嬢ちゃんが貴重なものを出してきてなぁ。俺じゃ手に余ると思ってこっちに来たんだ」

「そうですか。僕に見せていただけますか?」


 なんか怖いが、言われたとおりに見せることにする。アイテムボックスから世界樹の葉を再度取り出し、机の上に置いた。


「えっと、どうぞご覧ください…」

「ありがとうございます。拝見させていただきますね。───ほう、世界樹の葉ですか。確かに珍しい品ですね」

「だろ?それで買取価格はどのくらいだ?やりたいことがあるらしくてな、俺としては高値で買い取ってくれてほしいんだが」

「どうして本人よりあなたが価格を気にしているんですか。それで、買取価格でしたっけ。そうですね…五千万リーンはいかがでしょうか」


 …五千万。五千万、五千万…。え、五千万!?随分高くない?そう簡単に手にしていい金額じゃないよ…。その条件でいいです、はい。


「大体相場よりちょっと高いくらいか」

「ええ、少し上乗せしました」

「その条件で構いません…えっと、もうよろしいでしょうか」


 そう声をかけて席から立とうとする。緊張しすぎた、さっさとこの空間から退散したい。


「少々お待ちを。まだあなたに聞きたいことがあるので」

「なんでしょうか…?」

「これをどこで入手なされたんですか?」

「おお、それは俺も気になってた!」


 入手経路。ここまで価格が吊り上がるほど希少なものをどうやって入手したのかはそりゃ気になるよね。需要も高そうだし。…でもね、


「入手経路については口止めされているので、申し訳ないのですが教えることはできません」

「そうですか、わかりました。…では、やりたいことがあるとのことでしたよね。それはなんなのかお教えいただけますか?」

「私が必要のないものや需要の高そうなものを売るためのお店を開こうかと思ってまして…。私は錬金術師なので」

「お店ですか、いいですね。よろしければ、こちらでよさそうな物件を見繕いますよ。先ほどの買取のおまけのようなものだと思ってください」


 それは助かる…けど、これから自分が経営するお店だし、自分で物件を選びたい。


「遠慮しときます…」

「すみません、こんな提案をしてしまって。これで大丈夫です。世界樹の葉の代金は口座に振り込んでおきますね。…そうそう、物件を探すのならここに行ってみてください。ここら辺だとここしか不動産を売ってるところはありませんから」


 丁寧に紹介状と地図をくれた。嬉しい、ありがとうございます。後で行こうっと。脳内メモにきちんと書いておく。


「これで失礼します。お邪魔しました」

「またな、嬢ちゃん!」


 私はギルド長室を出た。はぁ、緊張した…。


 ◇◆◇

 さて、錬金道具を買いに行こうかな。さすがに錬金道具が桶だけなのは錬金術師としてダメだろう。ヴェイルさんからもらったものだし捨てるとか誰かにあげるとかはしないけどね。


 というわけでぶらぶら歩いた先にあった生産道具店に入る。ギルドで買ってもよかったんだけど人がいすぎてちょっと無理だった。あのあともずっと見られてたし。錬金道具買った後は絶対フード買いに行く!


 ───わ、すごい。たくさん錬金道具が売ってる。とりあえず最初に支給されている一万リーンで買えるものを探す。この後も買いたいものがあるから実際に使えるのは六千リーンぐらいだけどね。


 …うん、中級錬金セットとかいいんじゃないかな。値段も五千リーンで手が出せる。上級になると値段が一気に跳ね上がって十万リーンになるんだよね。だから今手が出せるのは中級錬金セット。


「会計お願いします」

「あいよ。五千リーンだ。…確かに。そんじゃ、また来てくれよ」


 優しそうなおばあちゃんに会計してもらい、この店を出た。ぱぱっと出てきちゃったな…もうちょっと長くいてもよかったかも。


 さて、次はフードを買いに雑貨店に行く。どこにあるかわからないので今回もまたぶらぶらと歩いて探していく。…ん?あれ、なんか桃鍵からメッセージ来てる。なんかあったのかな。


『よう、スイ。今ちょっと困ってるんだけどどうにかできないか?』

『それは内容次第』

『モンスター、火力不足。伝わったか?』

『うん。でも力になれないや、私今レベル1だし』

『マジで?』

『大マジ。レベルあげたらこっちから言うよ。だから今回はごめん』

『りょーかい。ありがとなー』


 …やることリストがどんどん増えていく。いや、でもどれだけ増えたって一番の優先事項はフードだから!!それにしても、雑貨屋はどこにあるんだろう…。


 そう思っていたところで、予想外のことが起きた。ほぼ黒一色の店の中から黒い手が伸びてきて、そのまま店の中に引きずり込んできたのだ。



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