13.ボス討伐
そのカウントダウンが0になった瞬間にボスエリアに足を踏み入れた。わ、ほんとに兎と狼が融合してる。顔がうさちゃんだからなんだかんだこの姿でも可愛いかも。
「おい、まさか可愛いとか思ってないよな?さすがに感性やばいと思うぞ?」
「よそ見して大丈夫なの?いくら難易度下がったとはいえ危ないよ。【ウォーターボール】」
「そうそう兄貴気をつけてね~、【ダブルアロー】」
感性やばくないし。普通の人ならこれを可愛いって思えそうだけどなぁ…話を聞いて想像してたのとは全然違かったし。なんか思ったより可愛さが残ってるんだよね。もうちょっとグロいのかと思った。
そんなことを考えていられるほど戦闘には余裕があった。三人だけでも余裕があるってことはとんでもなく弱体化されてるのかも。次の街に結構な人数が行ってほしいのかな?
そりゃそうか。今ノースファーストはどこもごった返しててやばいからね。このままだとNPCが普段通りの生活をするのもままならなくなってしまう。
…あ、そうだ。いくつか実験してみよう。魔法付与って、レベルアップすると付与できる魔法のバリエーションが増えるのかまだ氷と炎しかできないんだよね。だから魔法付与のレベルアップとそれに並行して空中浮遊の魔法もしたい。
桃希たちと話すときまで忘れてたんだよね、精霊の存在を活かす機会がなかったから記憶の隅に追いやってた…。せっかくだしやってみよう。うまく飛べるかな。
「心配ご無用!俺はそこまで弱くないぞ!【パワースラッシュ】!!──って、うお!?」
「ガウウウウウ!!!」
「言わんこっちゃない…とりあえずヘイトこっちに向ける!【ダブルア…】」
「ちょっと待って。実験したい。【魔法付与・炎】…はい、おっけー」
「???…【ダブルアロー】!」
やっぱりパーティーメンバーにも魔法付与は使えるみたい。いいね、利便性があるよこのスキル。…まあ、パーティーメンバーに使うのはこれ終わったらしばらくお休みかもしれないけど。自分にはよく使うと思うんだけどね。ここでも懸念点は人見知り体質。
それにしても、思ったより飛ぶの簡単かも。まだスキルレベルが1だから一度に飛べる距離も高さもそれほどないけれど、MP消費量は少ないし攻撃も避けやすいしメリットが勝つ。…羽を人前で出してると目立ちそうだから、誰もいない時限定にはなるけど普段使いしていこうかな。
「ねーちゃん、なにこれ!?なんか火ついたんだけど!」
「ギャウ!!ガウウウウウウウ!!!!!ガウ!ガウウ!!!」
そう言われてユリ丸が放った矢がキメラに刺さったところを見る。すると刺さった部分からキメラの毛に火がついていた。毛だから燃えやすいんだ、氷にしなくてよかった。いや氷でもよさそうだけど、今ボスは燃焼状態がついていて継続ダメージがついてるからね。
氷だとスリップダメージを与えられそうなのが凍傷ぐらいしかなさそうだし。相手がでかいからウォーターボールで全体を濡らし、その水を凍らせて相手の動きを封じるっていうのも無理がある。
「魔法付与。言わなかったっけ?精霊が固定で持ってたスキル。それを活用してるの」
「…マジだ!すげえ、燃えてる燃えてる!もっと燃やせ、ファイヤー!!」
「兄貴ちょっとテンション上がりすぎじゃない?その魔法付与、俺も取得できないかな…。一応弓使いっていえばエルフだと思ってエルフにしてるんだけ、ど!」
いつのまにかユリ丸の目の前に攻撃が迫ってきていたので、攻撃の軌道を予測してポーションを投げつける。キメラの攻撃手段は大体爪なので軌道をそらすこととかは難しいだろうけど、ダメージをすぐ回復させることはできるはずだ。
役割としては中距離だがほぼほぼ後衛として活躍しているので、きっと防御力は低いはず。なら連続で攻撃されたときに落ちないように回復させておかなければ。
「危ないじゃん!ちょ、兄貴へループ!」
「もうちょっとで倒せそうだから粘ってくれ!粘りを見せろ納豆ぐらいに!」
「その例えはよくわかんないから。せめてとろろね」
「あ!?とろろで例えたほうがわからないだろ!納豆のほうがわかりやすくね?ユリ丸、お前はどっちがわかりやすいと思う!?」
とろろのほうが絶対わかりやすいって!侑李はもちろんとろろを選ぶよね?…とボス戦中にするべきでなさそうな会話を繰り広げていく。キメラのHP残り二割ぐらいだしね、あっという間だった。
「いや俺はなめこのほうがわかりやすいと思うけど。というかとろろと納豆はねばねばの種類が違くない?」
「「なめこはないわー」」
「え?噓でしょ?賛同得られると思ったのに」
「いやなめこはありえない」
「ほんそれ。ないわー」
「やばい心が痛くなってきた。兄貴もねーちゃんもひどい…」
…なんで兄弟で粘るを食べ物で例える際のものが全部違うのか。せめて同じものがひとつぐらいあってほしかった。三つ巴の戦いだよ…。
「そんなこと言ってたらねばねばしたの食べたくなってきた…。明日の朝ごはんにねばねばサラダ作ろうかな」
「俺のもお願いー」
「兄貴に同じく」
「うい、後でお母さんたちにも聞いとく」
後からほしいって言われるのもめんどくさいからね。作るなら一気に作ったほうが楽なんだよ。サラダの具材あったかな?キャベツとレタスはあったような気もするけど…なめこいたっけなあ。なかったら納豆ととろろで我慢かな。買いに行くのもめんどくさいし。
全ての店のレジがセルフレジにならないかな。お金を出すときに○○円でお願いしますとか支払い方法を言うのできないし。声が小さくしか出てくれないしめっちゃどもるし。セルフレジは声出さなくていいから楽なんだよね。
「俺の剣に魔法付与ちょーだい」
「はーい。【魔法付与・炎】」
「それ、MP消費量多くないの?」
「ギャウウ!!」
会話の最中も容赦なく攻撃されているキメラ。なんだか可哀そうになってきたな。…私も魔法打ってるけど。そんなこと思ったって攻撃の手は一切ゆるめない。ごめんね。
「MP全然消費しないな。燃費いいみたい」
「ほんとにうらやましくなってきた。絶対入手してやる…!」
「…あ。この流れでなんか申し訳ないんだがボス倒したぞ」




