12.ボスとの戦闘準備
「こんにちは。桃太郎さんたちの同行者さんですよね?」
二人組のうちの一人が小声で話しかけてきた。え、無理私に話を振らないで!!!勘弁してくれ…。こ、声出るかな!?人と接するのは本当に苦手なんだって!!
私が言ったひとことを気にしてずっと脳内反省会繰り広げちゃうからいっそのこと一言も発しないのがいいのに、なんで私に質問しちゃうの!?質問だと無視できないじゃん!
「い、いえ違い…ます…あ、あのもももういいですか…?失礼しますね…!!」
そう言い捨てて逃げた。二人の手が私の腕に向かっていたのは確認しているけれど、このゲームにはセクシャルガード機能とかいうのがあり、フレンド以外は肩と手以外触れないようにしているので掴まれることはなかった。
「は…?おい待てよ!!」
後ろから女の子の声がするけど無視して走り去る。早く、一歩でも遠く離れないと…!
そうしてフィールドの奥から中央ぐらいのところまで来た。走って乱れた息を整える。だから人と接するのって嫌だし苦手なんだよ…。
NPCならそのAIか設定されたテキストしか言わないからいいよね…。現実よりめんどくさい人が少ないし。…多分。あとキャラクターに沿ったことしか基本的に言わないからいいよね。
…あ、二人から通話掛かってきてる。着信ボタンをポチっとな。
『大丈夫か!?今どこにいる!?』
『うわ声でか…正確にどこにいるかっていうのはわからないけど大体中央らへんだよ。あの二人はどうなの?』
『何とかあしらって帰ってもらったよ…。大変だった…。あ、いやもちろんねーちゃんほどじゃないけどね!?』
『ずっと粘ってきたんだよ…。マジでやっかいだった。しかも、同行者さんいなくなっちゃいましたね。その開いた枠に私たちを入れてくださいよ!全然枠ありますし行けますよね?…って言ったんだぞ?こんなこと言うのも悪いかもしれないけどほんっと迷惑だった!!せっかく妹と遊べるんだぞ!?この機会滅多にないんだから勘弁しろよ…』
『断ったら怒ってきてさあ…向こうにも向こうの事情があったのかもしれないけど、俺心狭いからイライラしちゃった』
『…なんかごめん、もうちょっと遊ぶ機会増やす?二人の友達とはまだ遊ぶつもりないけど二人ならいいよ』
でもしばらく家族以外と接するのはいいかな…PvPとかならあまり会話もしなさそうだからいいけど、普通のパーティーとかはやめておこう。ボスとか倒すにしても役割分担とか作戦とかで会話するのが多そうだし。
…あの二人、そんなボス倒さなくちゃいけない事情があったのかな?そうだったら悪いことしたなぁ…けど私、自分のこと以外の事情はそこまで気にしないからそこまで考慮してなかった。
『とりあえずそっち行くわ。現在地情報ぷりーず』
『ああ、そういえばそんな機能あったね。ならさっき聞かなくてもよかったのに…ほんと焦っちゃったよ…ほんとごめんね、ねーちゃん…』
『二人のせいじゃないよ。それでもまだ自分を責めるっていうなら止めはしないけどね。──はい、送ったよ。うまく送れてる?』
『おお、来てる来てる!申し訳ないが俺たちもそっちに向かうけど、スイからもこっちに来てくれるか?現在地情報送るからスイの現在地情報のとことを直線で結んでそこに向かってきてくれ』
『おっけー。わかった』
画像編集ソフトを開き、送られてきた二人の位置情報と私の位置情報を取り込み透かして両方を線で結ぶ。
…よし、これで引いた直線のところを行けば二人と合流できるはず。──二人には申し訳ないな。私が逃げてしまったばっかりに手間をかけてしまって。あの時逃げずにちゃんと話をしてたらよかったのかな。そしたらなにかいい感じに物事が進んでたのかもしれないのに。
こんなことを嘆いていたって仕方ないっていうのはわかってるんだけどね。でも考えるのをやめられないんだよ。たらればの話をいくら考えたところでもう一回やりなおせるわけでもないのに。
──うん、気分を切り替えて合流しに行こう。さっき走ったばっかだけどもう一回走る。元の体力がないからすぐ疲れる。30秒走ったらもうヘロヘロだ。さっきは全然そんなことなかったのに。
追われてるって思ってたからとにかく必死に逃げてたんだよね。心臓ばくばくしてた。
そんなこんなでなんとか二人と合流。謝罪されちゃったよ…本当に二人は気にしなくていいけどな。こうやって迷惑がかかっちゃうから人見知りをどうにかして克服できないのかな…。
ボスをどうやって倒すか作戦会議をしながら再びボスの元へと向かう。その結果、桃鍵が近接。ユリ丸が中距離、私が後方支援ということになった。
桃鍵は片手剣、ユリ丸が弓、私が魔法だからこんな形でいいはず。なにかあったらポーション投げつけて回復させるんだ。瓶が割れた衝撃でダメージが入ったりしないのかな?いや、ないか。もしそんな仕様だったらポーション投げるだけでボスを倒せちゃうもんね。
「今回のフィールドボスは兎と狼のキメラだ。上半身が兎で下半身が狼のような形をしてるぞ」
「物理耐性、魔法体制どちらともないみたいだよ。攻撃は大振り、体がでかいから回避されることはほぼない。伝えておくべきはこれくらい?後は要所要所で大切なこと思いだしたら言うね」
「それじゃ入るぞ?覚悟はいいか?──10…3、2、1、0!」




