1.容器は作らなくていいもの
誤字脱字報告ご気軽に。勢いで書いているのでよくあると思います。
n番煎じ、きままに更新。
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「ねーちゃん、これいっしょにやらない?兄貴もやるって言ってるんだけど」
そういって弟の花里侑李に差し出されたのはいつかSNSに『ベータテスター募集中!』と流れてきたVRMMOだった。
タイトルは──あぁ、『ルミエール・オンライン』だっけな。略称はルミオン。過去に興味があって調べたんだ。まぁ、今の今までそんなゲームがあったことを忘れていたけど。…やば、今もう一回調べたけどもうどこも売り切れじゃん。それを私の分まで確保してくれたってこと…?我が弟が素晴らしすぎる。
それで、これをいっしょにやらないか、だっけ。答えは決まってる。『やる』の一択だ。確かに今まで存在を忘れてたけど、それは発売日が後すぎるから。いや、だって…予告PVや調べたときの映像がなんか、こう…。魅力的すぎたから、楽しみで仕方なくて他のことに集中できずにいたんだよね。それで泣く泣く存在を忘れることにしたんだ!自制心がないんだよ、私…。
「桃希ならやらないわけないよね…もちろん一緒にやるけど」
桃希は私の兄。あぁ、私は水翠。兄弟全員高校生。高校二年、二年、一年といった感じ。兄弟の順番は桃希→私→侑李。男二人に挟まれている。オセロ形式なら私も男子になるよね…。現実はそんなことないんだけどね。
「兄貴はこういったVRMMO形式のゲーム好きだからね!前やってたやつではトップ層にいたし。…ねーちゃんはエンジョイ勢のはずなのにいつのまにかトップ層にいるけど」
「いや、自認としてはガチ勢とエンジョイ勢の間だと思ってる。あくまで自認だけどね…そういえば桃希は?今日家にいるはずだよね」
いつもはリビングでゲームをやってることが多いんだけど、今日は見当たらなかったから違和感を持ち、聞いてみた。
「兄貴ならもう待機してるよ?あと二時間ぐらいでリリースされるからね」
…は?リリース、まで、あと、二時間?
「なんでもっと早く言わないんだこのバカ弟がぁああぁあ!!!」
「…へへっ。ほんとはもっと早く言おうかと思ったんだよ?ただ前もって言っちゃうとねーちゃん他の事なんもしないじゃん。だからぎりぎりの今言ったってわけ。とりあえずダウンロードしてきなよ。そのまま待機してたら?」
「そーする。ありがと」
「あ、待って!一つ言い忘れてた。始めたら俺たちにフレ申しといて!多分いつもの名前だよね?」
「うん。多分いつものにしてると思う」
「おっけ。じゃ、そういうことでよろしく」
その後、諸々と準備を済ませ、リリース開始時刻を待った。待っている間に情報収集をして時間を潰す。
そして、ログイン可能時刻になった瞬間にフルダイブ装置を被りログインした。
◇◆◇
「はじめまして。私はキャラクタークリエイト補助AIです。あなたのキャラクター作成をお手伝いいたします」
そう声だけが聞こえてきた。へー、キャラクリにAIがつくんだ。うん、ちょっとしたことでも相談できていいね。
───実は私ってちょっと人見知りなんだよね。知らない人と関わるのが苦手というか、なんというか…。いや、NPCとかは全然平気なんだよ。ただ、プレイヤーとか中に人間が入ってると苦手意識が出ちゃう、みたいな…。
あはは…今までは頑張ってパーティー組んだりしてたんだけど、今回は基本的にソロプレイで行こうかなって思ってる。あくまでも基本的に、ね。
「説明書にありました通り、このキャラクタークリエイトの時間ではゲームに関係がある思考のみを満足のいく作成ができるよう、読み取らせていただいております。あなた様はプレイスタイルを少し決めているようですね。それをもとにキャラクター作成のサポートをいたしましょうか?」
「あぁ、そんなこと説明書に書いてあったね…。うん、お願い」
今回は錬金術師と魔法使いを軸にやっていこうかなって思ってる。メインとサブを選べるからね。それで、狩った素材とか錬金で生み出したものを自分のお店で売ろうかな、とか考えてる。
「まずは名前設定です。今、あなた様の前に出しました画面に入力してください」
突然現れた画面に迷いなく名前を入力する。『スイ』、と。私の名前である水翠は両方ともスイと読めることが由来だ。
「スイ様でよろしいでしょうか」
「はい」
「では、次にキャラクターメイクを行います。こちらも先ほどと同様に設定してください。何かご要望がございましたらなんなりとお申し付けください」
次は画面におびただしい量の設定可能項目のバリエーションが出てきた。
今までで一番種類が多い!運営どんだけここに力入れたんだよ…。
それは置いといてキャラクターメイクを進める。とにかく自分の癖を詰め込んでいく。
髪は白髪で…おっと。
「インナーカラーの設定とかできます?」
「可能です。こちらのカラーパレットからお好きな色をお選びください」
お絵描きアプリとかでよく見るような形のカラーパレットが出てくる。やっぱキャラクリの自由度高いな、このゲーム…。
赤か緑か迷ったけど、後から変更もできるらしいのでとりあえず赤にした。ちょっと淡めの赤ね。
目は濃いめの赤。ザ・赤って感じの色。諸々の設定を済ませ、完成したのがこのキャラ───
大体155㎝の白髪+インナーカラーが淡い赤でロングウルフ、そして目が濃い赤色の美少女が完成した。うん、作成した私ながらとても可愛い。ただひとつ心残りがあるのが身長。+-3㎝しかいじれなかったんだよね。もうちょっと身長盛りたかったなぁ。そしたらもっと完璧になったのに…。はぁ、自らの身長の低さが恨めしい…。
「終わりました」
「では、次は種族・職業決定に移ります。カタログからお選びいただけますが、ランダムにもできます。ランダムではカタログに載っていないレアな種族が出る可能性があります。また、ランダムを引いたあとでもカタログからお選びいただけるのでランダムにしても損はありません。三回ほど引けますよ。いかがいたしますか?」
押しが強いな…。まぁいいや。せっかくだしランダムチャレンジしてみようかな。そこでレアな種族が出なくてもカタログから選べばいいし。
「では三回お願いします」
「かしこまりました。では引かせていただきます。──一回目、獣人(兎)、二回目、精霊、三回目、エルフです。驚くことにレア種族を引き当てましたね。精霊がレア種族です。精霊は羽を持っており、空を飛ぶことができます。羽は隠すことも可能ですよ」
「では精霊でお願いします」
羽っていいよね。やっぱ空を飛ぶことにはロマンが詰まってると思うんだ!
「かしこまりました。では、職業の決定に移るのですが…。先ほど読み取らせていただいたプレイスタイルでは魔法使いと錬金術師になりたいとおっしゃっておりましたよね。どちらをメイン、またはサブ職業にいたしますか?また、別の職業を選んでいただいても大丈夫です。職業は最初のうちはレアなものはないのですが、進化するとレアな職業もございますので、ぜひ探してみてください」
レア職業もあるんだ。レア種族があるんだし、もしかして…とは思ってたけどね。
うーん、錬金術師をメインにしても敵を倒せる火力があるかは別だよね?
生産職やるのに火力低くて敵が倒せないとかになったらいやだし。普通の人なら他の人に助けてもらえばいいとか考えそうだけど、あいにく私はぼっちプレイをしようかと思っているので。
素材を集めることができなければ生産職としてすべてのことができない。錬金術師なんて特にね。
となると、やっぱり魔法使いを本職にするべきだろう。
「魔法使いメイン、錬金術師サブでお願いします」
「かしこまりました。では、最後にステータスを設定します。レベルアップでもステータスは上がりますが、追加でステータスポイントをご自身で振っていただくスタイルとなっております。スキルポイントの入手経路は大体がレベルアップ、または称号での獲得となっております。ご注意ください」
次はステータス画面が表示された。初期スキルは一つ以外固定されていたのでそのスキル決めとステータスを振った。その結果がこれだ。
────
スイ
種族:精霊 Lv.1
メイン職業:魔法使い Lv.1
サブ職業:錬金術師 Lv.1
HP:100
MP:50
攻撃力:20
防御力:40
魔法攻撃力:80
魔法防御力:40
器用さ:70
◇スキル
【空中浮遊Lv.1】【魔法付与Lv.1】【水魔法Lv.1】【錬金Lv.1】【調薬Lv.1】【鍛冶Lv.1】【服飾Lv.1】
────
固定されていないスキルっていうのは魔法のことね。属性を好きに選べた。まぁ、火・水・氷・木の中からだけどね。スキルポイントを獲得できたら他の魔法もとるつもりだ。ゆくゆくは魔法剣士的な存在になりたい。魔法が聞かない敵が出てきたら対応できなくなりそうだし、自分ひとりで大体のことは完結させたい。もちろんNPCには頼るつもりだけどね。
その希望も込めて攻撃力に少しステータスポイントを振ってある。後は…錬金以外に生産スキルがあるから、錬金以外に他のスキルもレベルを上げないと新しいレシピが解放されないだとか、快適さが変わるとかなのかな?その分手間がかかりそうだけどやりこみ要素がたくさん多いのは助かる。
「全工程の終了を確認。これより、『ノースファースト』へと転送いたします。この世界を十分にお楽しみください。」
その声が聞こえた五秒後ぐらいに強制的に目を閉じされられ、次の瞬間には辺り一辺に広がっているプレイヤーの姿が見えた。
◇◆◇
わ、すごい盛り上がり。この中じゃ誰かと会話もできないよ。周りの声量にかき消されてちょっとした声じゃ聞こえやしない。…目立ったらいやだし羽を隠しておこう。なんだか変な感覚だ。
が、そんな中でも話しかけてくる存在があった。
「よう、巡界者さん。早速だが、チュートリアルを受けるか?」
そう話しかけてきたのは背が高めで深い藍色の髪と同色の目の色の男の人。…思ったよりプレイヤーに寄せてるね。初見じゃ見分けつかないや。…まぁ中身がプレイヤーだとわからなければ初対面の人でも関われそう。現状、NPCを判別する方法なんてないしね。ちなみに巡界者はプレイヤーのことね。
「え、っと…。はい、お願いします」
「おお!そうかそうか、やっとチュートリアルを受けてくれるか!…おっと、これは俺の独り言だから聞かなくて構わないぞ。──コホンッ、実は巡界者さんたちがチュートリアルを揃いに揃って受けてくれなくてな?確かにこの街は魅力が溢れに溢れまくってるが、この街、ノースファースト初心者さんが御用達の情報とかも教えてるんだからきちんと受けてもらいたいものだ。はぁ…」
「………なんだか大変そうですね。心中お察しいたします」
「おっと、独り言が大きすぎたか?─っはは、すまんすまん。まあそんなこんなでチュートリアルをはじめさせてもらうぜ。ちょっと失礼」
そうこの人が言うとなんだか別の空間に飛ばされた。あくまでもチュートリアル用の空間なのだろう。どこかの広いビルの一階をまるまる草原にしたような感じ。だから本当の草原とは比べものにならないくらい小さい。そもそもここと本物を比べるものじゃないけどね。
「ここでチュートリアルをさせてもらう。まずはアイテムボックスの使いかただな」
「鑑定の仕方も教えるな。これは~~」
───そんな感じでアイテムボックスと鑑定の使いかたを教えてもらった。これは簡単だった。
「次に素材採取か。手で触れれば自動的にアイテムボックスに入るようになってるぞ。…そこらへんに色々生えてるのがあるな?正直、何を生やしたのか俺は覚えてないが…。まぁ、一つぐらい薬草があるだろ。鑑定で探してとってみてくれ」
ちょっと適当すぎないか…。そんなことを思ったが言われた通りのことをする。鑑定、鑑定っと…。
──おっ、薬草あった!えっと、これに触れれば採取できるんだよね?よし…これでいいはず。
「できました!」
「おお、早いな。上出来上出来。ちょっと見せてみろ」
「はい」
とったばかりの薬草をアイテムボックスから取り出し、渡した。
「ちゃんと薬草だな。よくやった」
「ありがとうございます」
「生産についてもやるか。お前さん、生産系の職業に就いてるな?」
よくお分かりで。職業によってチュートリアル担当が変わるのか、あるいは…。え、これ相手に鑑定かけられるのか?
「…すみません、一つお聞きしたいのですが」
「いいぜ、言ってみろ」
「誰かに鑑定ってできるんですか?」
「できないぞ」
おっと、そうなのか。なんか聞いちゃって申し訳ない。
「それを聞くってことはなんでお前さんの職業がわかったか、について知りたいんだろ?答えは簡単。担当が分かれてるからな」
この人によると、メインサブ両方戦闘職、または生産職、メインサブが戦闘職、生産職と別々な人の担当で分かれているらしい。なるほどね。
「疑問は解けたか?なら生産の方法について教えるな。まず、生産するには道具が必要だ。職業は?」
「錬金術師です」
「ほう、珍しい。錬金術師は成長するのが大変だから人気がないんだよな…。ある程度成長すれば色々なことができて便利なんだが」
私のイメージと差がないようだ。だから錬金術師を選んだんだよね。
「そうだな…。錬金でポーションを作ってくれ。錬金術は万能だからな、色々なものを作れるようになったほうがいいだろう」
彼からレシピと桶をもらった。必要なのは水と薬草らしい。なるほど、これで水を汲めってことね。
ちょうどいいところに川があったのでそこから水をいただく。
桶の水を少しと薬草を材料として、いざ【錬金】!
…待って。
「…容器!」
「あぁ、容器か?それなら…」
何か言っている気がしたけど、容器ないない問題でとてつもなく焦っている私の耳には入らない。瓶とかを作るための手軽な材料がないため、どうしようかと考えているとある考えが思いついた。
「おいおい、なにをするつもりだ…?」
こうなったら、水 で 容 器 を 作 る し か な い !
水魔法とっててよかった。桶の水を水魔法でなんとか操り、瓶の形を形成する。うー、水を操る感覚がよくつかめない!
少しづつ減っていくMPゲージを視界にとらえる。やばい…!このままだと魔法を解除した際に形が全部崩れてしまうため、なんとかできないかと急いで考えた結果、あるスキルの存在を思い出した。
「【魔法付与・氷】!」
瓶の形を未だ保っている水に魔法付与を試みる。…どうやら成功したようだ。
一か八かの試みだったから成功してよかった!!
そのままの形で凍って一安心。
「…はぁ!?水で瓶を作って凍らせた…?おいおい、とんでもないな、お前…」
「は、はぁ…」
「その発想はなかったな。とりあえずその容器にポーションを錬金して入れてみてくれ…」
言われた通りに作成し、ポーションをさっき作った容器に入れる。
おっ、いい感じに入った!
「…まさか成功するなんてな…。はは、氷魔法で作ったものは余程の高温じゃなければ溶けないしな、これはこれでいい案だ」
「そうなんですか」
「ああ、だが悲しいお知らせが一つある。言わなかった俺も悪いが、こんなことをするとは思ってなかったんだ…。──容器はポーションなど液体系のものを錬金した際、それに適したものが自動生成される。だから容器を作る必要はなかったんだ」
「嘘でしょ…。努力が消えた…。」
「いや、お前の考えはよかった。今までこういう風に考えたやつがいないからな」
「それならよかった…のか?」
容器は自動的に生成される。覚えた。もうこの間違いは犯さない。脳内メモに書いておく。
「それは置いといて…、次は戦闘だな。あの兎を倒してみるといい」
「はい。【ウォーターボール】」
前の経験が活きる。人とのPVP経験はないけど、こういうモンスターには慣れてるから。
何回かウォーターボールを当てて終了。




