魔法の薬
2分ほどでサクッと読める話です。
バッドエンド注意。
念願の魔法の薬をやっと手に入れた。
売り文句と同じ内容が薬瓶のラベルに書いてある。
『これを飲んだ人は、今までのしがらみから全て解き放たれます。また、飲用後に最初に見た人を最も愛するようになります』
この薬をあの人に飲ませれば、私を愛してくれるようになるのね。手に入れるのは大変だったけれど彼の最愛になれるなら小さなことよ。
早くしないと。もう彼はあの女にせまられて結婚する寸前なんだもの。
彼を捕まえ、密室で拘束した。手段がちょっと強引だったけれど、後で彼が私を愛してくれれば訴えないでしょうから犯罪じゃないでしょ? 小さなことよ。
「やめろ! そんな怪しい液体飲むわけないだろ!」
もう、頑固なんだから。でもきっとこの薬を飲んだ後は私を愛して幸せになれるわよ。
鼻をつまんで無理やり薬を飲ませると、彼は意識を失った。これで目が覚めた時に私を一番最初に見れば良いのね!
一時間ほど待ったかしら。
「ん……」
彼の声を聞いて、私は彼の前に飛んでいった。ゆっくりと頭をもたげた彼の目はまだ虚ろだけれど、そのキラキラした表面に私の姿が反射している。
さあ! 私を見て! あなたの最愛の女よ!
「……ばぶー?」
……嗚呼。そういうことだったの。こんなの詐欺じゃない。
『全てのしがらみから解き放たれる』って、全ての記憶を失うって意味で。
『最初に見た人を最も愛する』って、相手を親だと思う刷り込みって意味だったなんて。
私は中身が赤ん坊になった彼をそっと抱きしめて途方にくれた。
お読み頂き、ありがとうございました!
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