高級料亭で話し合うJK(後編)
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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「え?」
呆然とする、川奈野まどか。
いっぽう、命じた『瀬本ゆい』は、和室のテーブルに頬杖をついたまま、返事を待つ。
我に返った『まどか』が、口を開いた。
「お、お断り、します……」
首を傾げた『ゆい』が、正座で座り直した。
「どうして? ……あ! 事務所のほうを心配しているの? 大丈夫よ! 私から、社長に言っておくわ! それとも、悠月くんとのチャンスが惜しいの? だったら、女にしてもらいなさい! 今は社長の命令だし、彼に抱かれたと、目くじらを立てないわよ? 私は、その後でいい……。分かるわ。あれほどの男子は、そうそう――」
「違います!」
まどかの絶叫に、ゆいは驚いた。
「悠月くんに、興味がなかったの? ごめんなさい……。だったら、私の仕事で……え、映画の監督に紹介しましょう! それとも、ドラマがいい? 今度、一緒にプロデューサーと食事でも――」
「止めてください!!」
さらなる絶叫で、ゆいは思考停止。
顔を上げた『まどか』は、キッパリと言う。
「どうして……そんなことを言うんですか!?」
「……え?」
ゆいは、絶句した。
訳が分からない。
私は、『まどか』を怒らせるような発言をしただろうか?
ここで、2人の価値観の違いが浮き彫りに……。
良くも悪くも芸能界にどっぷり浸かっている『ゆい』は、まどかを喜ばせるよう、提案したつもりだ。
けれど――
「私は! 自分の気持ちを大事にしたいんです! 確かに、最初はウチの社長の命令でした! でも、悠月くんと会って、彼に対する気持ちを自覚しました」
まどかは思いのままに、言葉を並べていく。
「好きと言えるかは、自分でも分かりません……。だけど、あなたに……瀬本さんに、私の気持ちをどうこう言われる筋合いはないです!」
それに対して、ゆいは声を絞り出す。
「あなたの為よ……。私に紹介して、もう忘れなさい……」
「嫌です!」
ゆいには、全く理解できない。
「悠月くんと住んでいる世界が違うことは、分かったでしょ? 引くだけではメンツが立たないから、仕事を取れるよう、決定権がある人たちに紹介すると言っているのに……」
「その気遣いは、嬉しいです。だけど、私は……この気持ちを大事にしていきます!」
今の『まどか』が自分の力だけで映画やドラマに出ようとしたら、マネージャーを通してキャスティングボードを握っている男に抱かれることが最低条件だ。
けれど、人気アイドルにして女優の『瀬本ゆい』が紹介すれば、主役は無理でも、最後のクレジットで名前が出るぐらいの役はすぐにもらえる。
たった数分でも、顔と名前を知ってもらえば、無下にされない。
次の仕事につながるし、そのまま伸し上がれる。
限られた仕事をシェアしている業界だ。
同じ条件を提示されれば、本社のロビーで『まどか』を責めていたアイドルたちは大喜びで応じるに違いない。
それこそ、『ゆい』に、一晩ずっと相手をしろと命じられても。
ここでは、現場を味方につけるためなら、誰とでも寝る。という女も、普通に見つかる。
ゆいは、枕営業と無縁だ。
生まれ持った才能ゆえ、プリンセスのように輝いてきた。
逆に言えば……。
彼女は芸能界という場所で、自分を商品にすることだけ。
好みがあっても、日常はない。
悪く言えば、空っぽだ。
常に誰かが望む『瀬本ゆい』を演じてきた。
「今日はご馳走をしていただき、ありがとうございました! ……失礼します」
「待って!」
ゆいは引き留めたが、まどかは頭を下げた後で小さなバッグを持ち、歩き去った。
和室のテーブルにつっぷしていた『ゆい』は、上半身を起こした。
スマホを取り出して、画面に触り、耳に当てる。
プルルル ガチャッ
「私よ……。ええ、大丈夫……。例の件、お願いね? ……表には出ないでちょうだい。詰めは、他の人にお願いしているから……。はい、さようなら」
再び画面に触った『ゆい』は、ススッと指を滑らせる。
タンタンッと触り、同じく耳元へ。
「瀬本です……。はい、その話で……。徹底的に、やってください……。見返りとしては……そうですか、恐れ入ります。では、失礼します」
電話を切った『ゆい』は、自分のスマホを見たまま、ボソッと呟く。
「まどか……。あなたが悪いのよ?」
――1ヶ月後
吹っ切れた『川奈野まどか』は、悠月史堂とのデートを繰り返した。
高校時代の思い出として……。
ある日、登校してみれば、いつもと雰囲気が違う。
周りの視線が気になるも、避けられている感じ。
教室に入り、自分の席に座れば――
「川奈野さん?」
いつもは声をかけてこない女子が、数人。
困惑した『まどか』がそちらを見れば、薄い週刊誌が、バサッと机上に放り投げられる。
思わず、それを見れば、衝撃的な記事が目に入ってきた。
“悠月財閥の御曹司と人気上昇中のアイドルユニット「プリムラ」の1人が、熱愛!?”
過去作は、こちらです!
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