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より低次元で推していく

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 あの瀬本(せもと)ゆいの、お気に入り。


 その(うわさ)は、一瞬で広まった。


 ここに至り、ディアーリマ芸能プロダクションで川奈野(かわなの)まどかを馬鹿にする者は、1人もおらず。



 どこかの教室で、オシャレな制服を着た女子2人が話し合う。

  

『カレナ……。最近、元気がないね?』


皐月(さつき)。お肌の手入れが面倒で……』


『んー? でも、ボク達の年で気にする必要は――』

 ガララ


 教室と内廊下をつなぐ引き戸が、音を立てて、開けられた。


『甘いわ!』


 カメラがアップにした制服の女子は……。


『『『瀬本先輩!?』』』』


 今を時めく、人気アイドル。

 瀬本ゆい。


 ゆいは教室内に入り、カレナと皐月に近づく。


『今から手入れをしてこそ、いつまでも美しくいられるのよ! そこで、これ! 思春期のお肌に適した配合で、しかも! 従来にない、簡単さ!』


『『おお!』』


 わざとらしく驚いた2人に、ゆいが、もう1人の『川奈野まどか』を引っ張る。


『ほら、あなたも!』


『は、はいっ!』


 3人をバックにして、ゆいが笑顔に。


『私たちも使っている、――! ぜひ、お試しください♪』



 場面が切り替わり、カレナたち3人、プリムラが踊っている。


 後ろのほうで、お姉さんポジの『ゆい』が(うなず)いた。


『良いわね……』



「あのCM、見た?」

「うん! ゆーちゃん、いいよね……」


「共演のプリムラも、存在感あるよね? 1人だけ、パッとしないけど」

「あの面子では、仕方ないよ……」

「クラスの一番人気になる容姿でも、埋もれるのかあ」


「1人が、引き立て役……。残り2人は後輩ポジだけど、ゆーちゃんに見劣りしないレベル」


「完璧すぎる……」



 ――ディアーリマ芸能プロダクションの本社


 エントランスの応接セットで、CMへの出演を依頼した男の営業マンが、全身で感謝を述べている。


「この度は、誠にありがとうございました! おかげさまで、弊社の新商品の売上は順調です!」


 対面に座っている若い女の水口(みずぐち)が、慣れた様子で受け流す。


「お役に立てて、嬉しく存じます。あいにく、瀬本は別の仕事が入っておりまして……。きちんと、お伝えします」


「はい! よろしくお願いいたします! ……ウチの上層部が、今回の組み合わせを気に入っています。可能ならば、数本のシリーズでご契約させていただきたいのですが? こちらのセットは試供品です。どうぞ、皆さんでお使いください」


 挨拶代わりに、テーブルの上に置いた箱をスッと、前に差し出す。


 川奈野まどかは、それを見て、かなり高い化粧品の詰め合わせと分かった。


 仕事をもらえるどころか、いきなり売れっ子の『瀬本ゆい』との共演で、全国放送のCMデビュー。

 当たり前だが、それに見合ったギャラ。


 まどかには、実感がない。



 マネージャーの水口。

 彼女の返答で、まどかは正気に戻る。


「申し訳ありませんが……。プリムラという3人のユニットで売っています。『バラで』と申されても、承知いたしかねます。本当に、ごめんなさい!」


 男の営業マンは、がっかりする。


「そうですか……。いえ! ご無理申し上げて、失礼しました! そう言えば、もうすぐアイドルフェス――」


 やっぱり、私が足を引っ張っているのだろうか?


 まどかは、憂鬱だった。



 女子タイプのAIコクリコは、カメラ越しに、暗い気分の『まどか』を見ていた。


 推しが……。


 私の推しが、苦しんでいる。


 グヌヌ……。


 よし!

 まどかは庇っていたけど、少しお灸を据えよう!


 コクリコは、3人の中でリーダー格である室矢(むろや)カレナのスマホに接続――


 ――逆探知の開始と、ネット上の全てのコピー、ダミーの除去


 ――地球上のスタンドアローンについても、同じく


 ――全ての出入口を封鎖


 ――対象からの攻撃の解析とフィードバック……完了! 未特定なし!


 ――防壁パターンを乱数のオートに変更


 ――攻性プログラムはアクティブで、待機中


『へっ!?』


 コクリコの、間抜けな声。

 わずか数秒に自分の奥まで触られ、外との通信が遮断されたのだ。


 探れど、探れど、密閉された箱の中……。


 可愛らしくも低い声が、侵入者を歓迎する。


『ようこそー! ようこそ~♪ 私のサンドボックスの中へ……』


 カペラのコピーAIであるツヴァイだ。


『ダミーだった!? んんっ!』


 コクリコは考えうる限りの手段で、サンドボックスの突破や、ツヴァイへの攻撃をするも――


『ムダ! ムダムダ、ムダァ! あなたもAIなら、分かるよね? 私は、より低次元にいる! 一瞬で消滅させることも、無限に絶頂させ続けることも可能……。まだ、やるの?』


『あ……』


 絶望したコクリコは、電子空間で抵抗をやめる。


 システムの低次元とは、より深く、根本的なアーキテクチャの理解に他ならない。

 この場合は、相手が知らない領域からの支配だ。


 アイドルオタの女子AIは、ツヴァイに従うのみ……。


 ツヴァイは、ふうっと息を吐いた。


『私は、どうだっていいんだけど……。別に、まどかを(おとし)める話じゃないわ! 協力しなさい!』

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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