人の話を聞かない面々
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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室矢カレナは興味なさげに、USFA陸軍のマーサーを見た。
外国人の女は緊張した様子で、カレナを見返す。
上官を相手にしているような、直立不動だ。
「私共は、今回のMA暴走を重く見ています! こちらの方々……陸上防衛軍にも、他人事ではありません。どうか――」
「私は、ユニオンにいた『ブリテン諸島の黒真珠』。そちらに与すれば、周りが五月蠅いでしょうね?」
鼻白んだマーサーは、必死に説得する。
「ユ、ユニオンに関しては、US陸軍、あるいは外交チャンネルで、対応いたします!」
首を横に振ったカレナは、諭す。
「意見を述べるだけ……。それでも、あなた方は『便宜上』と称して、陸軍の階級に当てはめます。となれば、『USFAに協力した』『US陸軍の指揮系統に組み込まれた』という事実だけ、一人歩き……。失礼ですが、あなたの所属と階級は?」
「USFA陸軍、システム開発部のマーサー技術中尉です! その……原因追究で私たちが槍玉に上がっておりまして」
どうやら、暴走したMAのシステムエンジニア。
無人であれば、統括しているOSや制御プログラムの異常を疑って、当然だ。
マーサーは、ここぞとばかりに喋る。
「オープンチャンネルで、女子の声がありました! 有人では不可能な機動と併せ、遠隔のハッキングだと思いますが……」
「結論が出ているなら、勝手に調べてください」
呆れたカレナは、近くのソファーに座った。
しかし、彼女は諦めず。
「いえ! 件のMAは、プログラムの履歴が意味不明な羅列で埋め尽くされていて……。電子回路は焼き切れていないものの、分析できません! 通信経路も特定できず」
履歴がなくても、暴走したことは事実。
担当のシステムエンジニアは、進退窮まったのだ。
「ミズ室矢に、お越しいただけないでしょうか? 今回の模擬戦は、USと日本の友好を確認するためで……」
チラッと陸防の男を見るも、援護はなし。
嘆息したマーサーは、座っているカレナを向いた。
「室矢の血族は、我が国にもいます! あなたがそのファミリーネームを冠していて、あの『室矢カレナ』ならば――」
「私は……」
本人が話したことで、マーサーは黙る。
カレナは注目されたまま、自分の意見を述べる。
「今の室矢家に、全く興味がありません……」
焦ったマーサーは、言葉を並べる。
「あなたは、室矢家の初代当主だった室矢重遠のパートナーでしょう!? その子孫は、彼の血を引いていますよ? 彼らは両国の架け橋になろうと――」
「重遠に、どれだけの子供がいたと? キリがないです……。そもそも、私はシステムをよく知らず、お役に立てません」
マーサーは、切り札を出したつもり。
それが相手にされず、呆然としたまま、尋ねる。
「と、当時の室矢家に……情報担当がいた、という話があったのですが?」
笑顔のカレナは、とぼける。
「しばらく、世間から離れていたので……。ああ、そうそう!」
その言い方に、マーサーは期待するが――
「私は、自宅を襲撃されまして……。その件で、バタバタしているのですよ」
「は、はあ……。それは、大変でしたね?」
脈絡のない話に、マーサーは戸惑った。
それに対して、カレナが伝言を託す。
「あなたが戻ったら、こう伝えてください! 『金星は、よく見えますか?』とね……。話は、以上です」
スティア強奪のため、自宅にIGU(無限の剣の部隊)を突入させたことは忘れていないぞ?
そういう意味だ。
下手に喋れば、目の前の哀れな技術士官が、グラムいくらのミンチに。
だから、遠回しの伝言。
スティアは、金星の地表で寝ている……。
カレナは視線を外し、もう話す気がないことを示した。
ため息を吐いたマーサーが、別れの言葉。
「伝言は、上官に伝えます……。気が変わりましたら、いつでもUS大使館や陸軍にご連絡ください。失礼します!」
バッとお辞儀をしたマーサーは、ラウンジから立ち去った。
残っている男が、口を開いた。
「私は、陸上防衛軍の『試作人型戦車』評価隊の指揮官である――」
「あなた方も、帰ってください。今の話を聞いていたでしょう?」
うんざりした様子のカレナが、切って捨てた。
けれど、評価隊の指揮官は話を続ける。
「三宅少佐です……。先ほどは他国の話ゆえ、当然の結論だと理解しております! 室矢は、日本を守っている一族です。かつての初代当主も――」
「私は『今の室矢家に興味がない』と、言いました」
驚いた三宅は、おずおずと尋ねる。
「それは……本気で言っているのですか?」
「ええ、真面目に……」
カレナは、いつになったら本題に入れるのかと、嘆いた。
過去作は、こちらです!
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