東京よ、私は帰ってきました!
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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日本の中央省庁が集まっているエリアの1つに、警察庁。
その上級幹部が使う、窓のない会議室。
ホームシアターを思わせる空間に置かれた細長い円卓には、幹部がズラリと並んでいる。
「本日、皆に集まってもらったのは、他でもない」
沈痛な声のまま、議題を告げる。
「あの室矢カレナが上京する……。ここへ来るぞ?」
制服やスーツを着たキャリアは、ざわめいた。
「そんな!」
「どうして、私がいる間に……」
「当時の長官を続けて辞任させた、あの……」
「殺しても死ななかったそうだ」
扱いが、恐怖の大王。
あなたはどれだけ、我々の前に立ち塞がるんだ!?
「ほ、本当に、彼女ですか?」
重々しく頷いた上座が、答える。
「残念ながら、そのようだ……。幸いにも引っ越しではなく、一時的な観光と聞いている。警視庁は、十分に注意してくれ! 彼女が派手に暴れたら大惨事だ。ネイブル・アーチャー作戦の連合艦隊を叩いた当事者であることも忘れるな!」
「ハッ! 改めて、通達を出します!」
「何もなければ……良いのだがな?」
今、フラグが立った気がする。
「そういえば……海上プラットホームはどうなっている?」
「特に、問題は……。東京の沖合いの有効活用で、良いモデルケースになっているようです。漁業の関係者は、まだ反対していますが」
「MAの開発や運用など、過密した東京では不可能な実験も行われていて、好評ですね」
「日本が主導権を握りつつも、海外からの投資と優秀な外国人の受け入れとなっています」
「海上プラットホームの警察署で、気になる報告はありません!」
「室矢カレナとは関係ないでしょうね……」
「流石にな?」
「「「ハハハハ!」」」
見たまえ!
フラグが、林のようだ!!
◇
高速鉄道の車内は、スピードのわりに揺れていない。
「「次は、東京~♪ お忘れ物なさいませんよう、ご注意ください♪」」
隣り合って座りつつ、頭の動きをシンクロさせつつハモり出した、室矢カレナと槇島睦月。
ものすごく、可愛い。
周りに座っていた面々が、突っ込む。
「急に、どうしたの?」
「東京はやっぱり、テンション上がるよね!」
「何を食べよう……」
せっかくの連休とあって、美須坂町の高校生グループも誘ったのだ。
女子3人は、観光ガイドブックと睨めっこだ。
男子2人も女子とは違う視点で、同じく観光の予習。
「うーん……。全部は、無理だよな?」
「そうだね。数日だから、どうしたものか……」
減速したことで、周囲に電車が行き来する、いつもの光景に。
「うわ、すごい!」
「地元じゃ、1時間で1本なのに……」
「ぶ、ぶつかりそう……」
「こんなに電車を走らせて、人が乗るのか!?」
「連休だから、利用者が多いんだろ……」
彼らは、東京を知らず。
明るい電子音のメロディーが流れ、今度は本物のアナウンス。
『次は東京ー! 東京ー! 乗り換えは――』
周囲の乗客が立って、自分の荷物を降ろす。
それを見た高校生グループは、慌てる。
離れた席にいた『れいかチャンネル』の女子大生3人も、立ち上がる。
「ふあぁあっ! あー、着いた、着いた……」
「い、生きて帰れたわ」
「ええ、本当に……」
マイペースな荒月怜奈に対し、残り2人は改めて、自分たちの幸運に感謝する。
いよいよ高速鉄道の終点に辿り着き、車両が止まる。
プシュー!
側面の扉が開き、ドカドカと乗客が降りていく。
ホームは、これから出発する人の見送りや迎えに来た人で、ごった返す。
この場のリーダーになっている怜奈が、カレナを見た。
「来た直後で悪いけど、制作会社のほうへ来てもらって――」
「その件は、もう終わっているはずです」
「いや。そういうわけには……あらら?」
反論しながらスマホを見た怜奈は、指を動かしつつ、驚いた。
返信後に、電話をかける。
「荒月です! 今、東京に戻りまして……はい! ……室矢さんは、そちらへお連れしなくてもいいと? ……分かりました。失礼します」
スマホの画面を触った後で、キョトンとした顔に。
「あ、うん……。もう、いいって! じゃあ、これで――」
「せっかくですから、もう少しご一緒しませんか? 東京に住んでいる人のガイドのほうが安心です」
カレナに視線を向けられた佳鏡優希は、おずおずと同意する。
「そうだね! まあ、そっちが良いのなら……」
怜奈は興味なさげに、片手を振った。
「パス! 私たちは修学旅行の引率じゃないのよ? 自宅に戻って、休みたいし――」
「一緒に遊ぶだけで日当1万円のバイトですが……」
ピクピクと、怜奈が反応している。
それを見た女子大生2人は、密かに思う。
(のらないで、怜奈!)
(レナ先輩……。もう止めましょうよ?)
「1人につき、日当1万円ですよ? 実費は別として……」
カレナの追撃に、角西芽伊が飛びついた。
「まさか、連休の間で?」
「ええ、そうです」
「怜奈、受けよう!」
(メイ先輩ー!?)
丸原春花は、心の中で叫んだ。
私だけでも、しっかり断らなきゃ! と決意を新たに――
「今なら、パティシエのケーキが食べ放題ですよ?」
「受けます!」
即堕ち2コマ。
体は、正直だった……。
過去作は、こちらです!
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