人生は出会いと別れの繰り返し
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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「そういえば……あのオタク4人は?」
室矢カレナは、スマホに表示された “この動画は再生できない” の文字を見ている。
首をひねっていた槇島睦月は、やがて納得する。
「あの連中ね! 弁護士の良盛に丸投げして、それっきりだよ? ネットで拡散した動画には、法的な手段を行使しているとか」
ジッと見ているカレナに、付け加える。
「僕とお近づきになりたくて強引に押しかけた挙句、ライブ配信だからね! あの4人の生死に興味はないよ……。念書にサインして、動画やチャンネルを削除するだけで終わったかもね? 次はないだろうけど」
「どこかの遠洋や鉱山にいても、おかしくありません……。それはさておき、駐在所の担当が変わったようですね?」
睦月が、自分の感想を述べる。
「萩原一吾郎は、ギリギリで助かったからねえ……。何かの拍子に、『桜技流と繋がっていて怪しいから、やっぱり消しておこう!』となりかねない」
「今ならば、『一緒にいた片桐が死に、ショックを受けた』で通りますからね……」
桜技流と警察のトラブルに巻き込まれた、一吾郎。
彼は、自分が出世できないことも併せて、警察を辞めたのだ。
後任の駐在はかなりの年配で、巡査長。
「そういえば、睦月の動画は?」
「んー。色々と騒がれたけど……宣伝用のムービーってことに!」
粛々と対応したから、お祭りの演出や編集された映像の扱い。
ピンポーン!
「誰か、来たよ? 珍しいね……」
睦月が言えば、カレナはうんざりした表情に。
「出たくありません……」
ピンポーン!
ピンポーン!
ピンポーン!
見かねた睦月が、立ち上がった。
「ぼ、僕が、見てくるね?」
パタパタと、室内用のインターホンへ。
「はい?」
気が強そうな声であるものの、若く、可愛らしい容姿だ。
大人びていて、女子大生と思われる。
『こ、こんにちは! 私たち、ここのお祭りを取材していたグループです。アポはないんですけど、ぜひ室矢さんのお話を聞きたくて……。5分だけでも、お時間をいただけないでしょうか?』
困った睦月は、カレナのほうを見るも――
「あれ?」
彼女がいたところに、その姿はなかった。
すぐ傍で、カレナの呆れ果てた声。
「あなた達は、本当に! ……懲りないですね?」
『え?』
インターホンの小さな画面で目をパチクリさせたのは、とある事件に巻き込まれた女子大生。
――10分後
リビングのソファーで、女子大生3人が横に並んでいる。
交渉していた女子は、笑顔だ。
「急に押しかけて、すみません! 私、荒月怜奈と言います!」
いっぽう、残り2人は申し訳ない様子。
「角西芽伊です」
「丸原春花と申します」
対するカレナは、怜奈を見た。
「美須坂町のお祭りを取材したことで、成果は十分でしょう? 廃校になった多冶山学園へ侵入して九死に一生を得た、れいかチャンネルの方々としては」
「多冶山学園を撮影したハンディカメラは、警察に没収されたわ! こんな田舎まで来たのだし、稼げるだけ稼がないと! ……あれ? どうして、それを?」
怜奈は言い切った後に、首をかしげた。
残り2人は、顔が真っ青に。
「あ、あの……」
「ひょっとして……け、警察の方ですか?」
もしバラされれば、ネットで公開リンチだろう。
ソファーに座ったまま、ガタガタと震える。
カレナは、息を吐いた。
「どうこうする気はありません……。怜奈に尋ねますが、わざわざ訪ねてきた理由は?」
「お祭りで面白いパフォーマンスを見られたけど、せっかくだから……。特に、深い意味はないわ! 出てこなかったら、普通に帰ったわよ? できれば、『室矢』の名字でありながら、ここを選んだ理由を教えてもらいたいけど」
ケロッとした顔で、返事。
いっぽう、カレナも普通に答える。
「少し現実逃避がしたくて……。気がついたら、ここにいました。横に座っている睦月がいなければ、東京へ移動したでしょう。妹分がいますから」
まともな回答に、怜奈は畏まった。
「そうですか……。可能でしたら、録音を――」
軽快な音楽が鳴り出した。
「ご、ごめんなさい! 先に対応しても?」
「どうぞ、ごゆっくり……」
スマホを手にした怜奈は立ち上がって、リビングから内廊下へ。
話し声が聞こえる。
ソファーに残っている女子2人が、頭を下げた。
「ご迷惑をおかけして、申し訳ありません!」
「お祭りの映像で、バイト代が入ります。答えてもらわなくても……」
「別に、構いませんよ……。嫌ならば、そもそも無視しましたから」
カレナは言いつつも、あなたが対応したせいで、という視線を向けた。
困った睦月は、悪戯をしたネコのように、ごまかす。
「終わったわ! えーと……。私たちが仕事を受けている制作会社から、電話があったんだけどね?」
戻ってきた怜奈は、気まずそうに、言いよどんだ。
カレナが、話を続ける。
「室矢カレナを連れてこい……。そう、言われたのでしょう?」
「あ、うん……。どうして、分かったの?」
驚いた怜奈に、カレナは結論だけ述べる。
「私を含めて、7人ぐらいの往復交通費を出すのなら、連休で行きますよ?」
「う、うん……。ちょっと、聞いてみる」
再び内廊下に消えた怜奈は、すぐに戻ってきた。
「えっと……。大丈夫だって……」
全員の注目を浴びたカレナは、横に座る睦月を見た。
「久々に、東京へ行きますか?」
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