表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/144

“消滅の夜” の再来

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 室矢(むろや)カレナが暮らしている、洋風のペンション。


 遊びに来た槇島(まきしま)睦月(むつき)が、裏庭のグリルで焼き上がったチキンを(かじ)りつつ、嘆息した。


「ふーん……。駐在所の一吾郎(いちごろう)が危うく、このチキンみたいにバラされかけたんだ? 助かって、何よりだね」


 わりと、ドライな感想だった。


「事前にアドバイスがあったにせよ、運のいい人です。桜技(おうぎ)流を恨んでいる彼らは裏切りや邪魔を許さないから、助かる見込みは30%でした」


 睦月は、テーブルを挟み、椅子に座っているカレナを見る。


 その視線に気づいたカレナは両手を下げて、皿に置いた。


「昔に行われた『桜技流の活動停止』は、怪異の実情を知らせつつも警察から離脱するために、有効な手でした。現場の警官がどんどん犠牲になったことを除けば」


「当時の現場にしてみれば、『過去の事情がどうであれ、今は警察官なのだから、自分の仕事をしろ!』が本音だろうね?」


 その突っ込みに、カレナは同意する。


「ええ……。当時の桜技流も、『幕末の政変に負けたことで隷属させられ、お前らに命とお金を搾り取られていたんだ。そっちの事情なぞ、知ったことじゃない!』です」


「平行線だね……。目先だけ見れば、桜技流が悪者か」


 首肯したカレナは、息を吐いた。


「警察を疑問に思う人は辞めますから。残るのは、桜技流を嫌う人ばかり……。今になって考えれば、当時の筆頭巫女だった咲莉菜(さりな)はよく暗殺されなかったものです」


重遠(しげとお)たちを敵に回せば、警察が物理的に消えたよね? 冗談抜きで……」


 カレナが、付け加える。


「四大流派に加えて、重遠への借りも増える一方でした……。ともあれ、犠牲になった警官の関係者は桜技流を恨んでいます。同じ立場で手を取り合い、独自のネットワークを築いているでしょう」


片桐(かたぎり)は、やっぱり殺されたの?」


 緊張した睦月の声に、カレナは苦笑した。


「興味がないから、見ていません……。私の未来予知は因果の追跡で、万能にあらず! 桜技流の暗殺、アンチ桜技流による粛清、交通事故のどれでも、同じ話ですよ? ……警察の干渉は、当分ないでしょう」


「そっか……。アンチであろうとなかろうと、警察が僕にやることは御神刀の取り上げ! 百雷(ひゃくらい)の完全解放を見せたキャリアが消えたのは、渡りに船だよ」


 睦月にしてみれば、大事な御神刀を奪いに来た、憎き敵だ。


 片桐の死亡は、どうでもいい。


「そういえば、スティアは?」


「重遠が生まれ変わっていないから、そろそろ帰ると……」



 ――市街地


 最後の観光を楽しんでいたスティアは、警官と刑事に囲まれた。


 ドラマのような光景に、野次馬がスマホを向ける。


 1人の刑事が、歩み出た。


「スティアさん? USFA(ユーエスエフエー)の駐在武官であるウォリナーさんが、山奥で見つかった。首を切断された死体で、殺害された可能性が高い。……君を探していたことは、調べがついている! 君が隣の県にある多冶山(たじやま)学園にいたことも、確認済みだ! 署まで、ご同行を願う」


 クレープを食べているスティアは、何気なく言う。


「多冶山……多冶山……ああ! そのことね? ウォリナーは知らないけど……」


「詳しい話は、署で伺いますから……。乗ってください」


 自供したことで、刑事は柔らかい口調になった。

 片手で、開かれたパトカーの後部座席を示す。


「私、もう帰るから……USと言えば、忘れていたわ! ありがとう!」


 残ったクレープを一気に食べたスティアは、握った(こぶし)に黒い球体を出現させた。

 拳が隠れるぐらいだが、周囲の光が()じ曲げられ、どんどん吸い込まれていく。


 地上ではあり得えない音が響き、その一方で、凄まじいジェット噴射や様々な光が踊っている。

 これは、ブラックホールだ。


 本能的な恐怖を感じた警官が、腰のリボルバーを抜いた。


「う、動くな!」

「待て! 周囲に当たる!!」


 制止の声は、間に合わず。


 パンッと乾いた破裂音が響けば、他の警官も次々に発砲する。

 様々な角度から、弾丸がスティアに殺到するも――


 どれも軌道が歪み、彼女の拳にある黒い球体へ吸い込まれた。


 周囲が騒然とする中で、スティアは拳のブラックホールを収縮させ続け、消滅させた。


「ふ――っ! 私も、やればできるじゃない!!」


 一仕事終えた雰囲気のスティアは、満面の笑みだ。


 黒い球体があった手を開いては、閉じる。


「全員、銃を下ろせ! これ以上の抵抗は、罪を重くするだけ――」


 周囲の警官に命じた人物が警告するも、スティアの挑発。


「いいわよ? 話を聞いてあげるわ! ついてこられるなら、ねっ!」


 言うが早いか、スティアが光の柱に包まれ、上空へ飛び去った。

 ロケットの打ち上げのように、ほぼ垂直で……。


 その場にいる全員が空を見上げて、スティアの帰還を見送る。


「あの先って、金星じゃね?」


 この(つぶや)きは、大勢の耳に届いた。



『日本から発射された光はロケットではないと、公式発表がありました! 金星の地表へ飛び込んだことは、観測されたものの――』


 警察が捜査に行く予定は、今のところ、ない。


 金星を周回している人工衛星に、委託したままだ……。



『本日、USFA司令部が丸ごと消えました! ブラックホールと同じ現象のようです! 北米にある基地が一夜で消滅した、“消滅の夜” の再来で――』


 スティアは自分の寝込みを襲った連中に、お礼参りをしたようだ。


 指摘してくれた刑事のおかげで、報復を忘れずに、熟睡できる。


 おやすみなさい……。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ