閃光の咲莉菜
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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USFAの駐在武官である、ウォリナー。
彼は、絶体絶命のピンチだった。
なぜなら、久々に発見した戦略兵器である美少女について、責任を押しつけられたから。
司令部から連絡を受けた彼には、正式な命令が届く前にスティアを連れ戻すしか、挽回する手段がない。
明山神社のステージで、槇島睦月たちが奮闘する一方。
ウォリナーも、絶望的な戦いを繰り広げていた。
高級スーツの彼は、スティアの後をつけていた。
都合良く、彼女が単独行動になり、接触するチャンスを窺っているのだ。
とにかく大使館へ連れ込み、本国に連絡すれば……。
そう思いつつ、周りに人がいないことで、いよいよ動き出す。
「スティア! 私は、USの者だ。話を聞いてくれ! 決して、悪いようにはしない!」
大声の呼びかけで、彼女が立ち止まった。
第一段階をクリアしたことで、ウォリナーは安堵する。
小走りで追いつき、彼女の行く手を遮るよう、向かい合った。
「君が不愉快な思いをしたことには同情するが、あれは一部の連中が勝手に――」
『イイィイ゛イ゛ッ!』
気づけば、目の前にゾンビがいた。
大人の男と同じ体格で、歯茎までむき出しの口。
白く濁った目、下の筋肉が見えている顔。
笑っているようにも、見える。
「What!(何だ!)」
状況を理解できないまま絶叫したウォリナーは、とっさにスーツの上着の中へ手を突っ込み、ショルダーホルスターから銃を抜こうと――
正面から向き合っているゾンビが首筋に噛みつくほうが、早かった。
「ギャアア゛アッ!」
ゾンビの両手で抱きしめられることでホルスターから銃を抜けないまま、グチャリと肉を噛みちぎられていくウォリナー。
やがて、精神的なショックと出血、ゾンビの押さえ込みにより、地面で蹲る。
このゾンビは『深淵を覗く者たち』の召還儀式による、化け物の1匹。
『歩くマゴット』と呼ばれていて、ご覧の通り、一時的な変身ができる。
短時間とはいえ、相手の心を読むスキルがあるのだ。
獲物が望む姿になり、こうやって誘い出したうえで、食事をする。
ウォリナーの思考は、実に分かりやすく、大勢の中から選ばれた。
力尽きたウォリナーは、立って逃げることすら叶わない。
けれど、『歩くマゴット』が一瞬で、切り裂かれた。
きれいな切断面で舞ったパーツは、空中で燃え尽きる。
代わりに、1人の美女が立つ。
両手で握った刀と、優美な巫女服。
高天原から降りてきた女神の、天沢咲莉菜だ。
「けっこう、散らばっているので……」
咲莉菜は、召喚儀式をした魔法陣の位置をチェック。
早くしなければ、どんどん敵が増えてしまう。
「ヘルプ……ヘルプミー」
瀕死のウォリナーは、這いながらも、かすれた声で必死に助けを求めたが――
「分かったのでー!」
咲莉菜は踏み込みながら、ウォリナーの首を切り飛ばした。
一瞬のため、彼は自分の最期を理解できず。
「わたくしが、そなたを助けてやる道理はありません。ですが、ムダに苦しませるのも忍びない……」
いずれにせよ、誘い込まれたウォリナーは、息絶える前に発見されず。
これは、咲莉菜の慈悲。
「さて! いい加減に、本命を叩くので!」
言うや否や、咲莉菜の姿は光となった。
生前も、雷と同じぐらいのスピード。
女神になった今は、目で見ることすら不可能だ。
光は2秒もあれば、地球と月を往復できる。
魔法陣から湧いた化け物は、同時に切り飛ばされ、消滅していく。
一帯をローラーする、ゴリ押しの戦法ですら、咲莉菜にとって、たいした労ではない。
ようやく魔法陣に辿り着いた咲莉菜は、叫ぶ。
「これで……終わり!」
山奥の一角で、大きな爆発が響き渡り、一筋の光が天へ昇った。
咲莉菜も、あまり地上にいられない。
逃げた室矢重遠を追うことで、忙しいから……。
――明山神社
『以上をもちまして、お祭りのプログラムを全て終了しました! 多くの方にご参加いただき、誠にありがとうございます』
そのアナウンスを聞いた人々が、パチパチと拍手。
混雑すると予想しており、午後3時ぐらいの終了だ。
「楽しかった!」
「映画みたいだったな?」
「この劇は、他の槇島神社でも、やるのかな?」
記念に、神社の品物や、槇島シスターズの写真などを買ったり。
すぐ石段へ向かい、空いているうちに帰る客も。
巫女として働く外間朱美は、困り果てていた。
「そう言われましても……」
対する男は、一部始終を見ていた本庁のキャリア。
スーツ姿の片桐だ。
「今後の日本を守るため、是非とも話し合いたい!」
見るからに偉そうな男が深く頭を下げていて、周囲の視線を集めた。
独断で決められない朱美は、ひとまず睦月に聞こうと――
「槇島さんについては、弁護士の私が窓口になっております……。代わりに、伺いますよ?」
そちらを向けば、同じくスーツ姿の優男。
菅原良盛だ。
穏やかな雰囲気のまま、片桐の返事を待つ。
態度を硬化させた片桐が、言い捨てる。
「君では、話にならない!」
「正当な理由を示さない限り、依頼人には……少し、お待ちください」
近寄ってきた男に紙片を渡された良盛は、手の中で広げて、流し読み。
その後で、片桐を見た。
「槇島さんが、お会いになるそうです。ただし、今は大事な祭りで邪魔は許さないと……。あなたのご都合は、いかがでしょうか?」
良盛から名刺を受け取った片桐は、それを見た後に仕舞う。
「明日だ! また、来る」
乱暴に言い放った片桐は、背を向けた。
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