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今代の千陣流は楽しそう

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 乙女ゲーで言えば、意地悪をしそうなタイプのイケメン。

 年齢は、20代半ば。


 和服の第一礼装を着ている彼は、遠巻きになった刑事、警官の間を抜けて、室矢(むろや)カレナと向き合う。



「僕は千陣(せんじん)流の南乃(みなみの)隊長で、南乃虎徹(こてつ)。よろしゅう!」


「室矢カレナです。よろしくお願いいたします」



 いきなり挨拶を交わした2人に、周囲はドッと疲れたような表情に。


 千陣流というから、すぐにでも戦闘が開始されると思っていたのに……。



 慌てたのは、虎徹を(けしか)けようとした氷山花(ひょうざんか)市長だ。


「ちょっ……ちょっと待ってくださいよ!? 和んでいないで、捕まえて! この娘のせいで、パーティーは台無しです。お願いだから――」

「何、勘違いしてるん?」


 ドスの利いた発言に、氷山花市長は虎徹を見た。


 虎徹は、自分の考えを述べる。


「僕は警察と違うし、荒事メインの警備員で雇われた覚えもあらへん……。千陣流の隊長と知っときながら、(あご)で使うのは調子に乗りすぎや! まあ、どないしても言うのなら、動いてもええよ?」


「なら、お願いしま――」

「僕の妖刀は、こまい調整、苦手でね? このホールと客、あと洋館もぶった切るけど、勘弁してな!」


 全身から隊長格にふさわしい霊圧を発し始めた虎徹。


 何もない左腰に手を伸ばし、抜刀する構えへ……。


 周囲は電子レンジのように熱くなって、放射された霊圧でホールの窓ガラスが次々に割れた。

 内壁に(ひび)が入り、どんどん広がっていく。


「キャアアァアッ!」

「うわああっ!」

「に、逃げろ! 私たちまで殺されるうぅううっ!!」


 悲鳴を上げながら、逃げ惑う客たち。


「まっ! 待ってください!! い、いいです! もう、いいですから!?」


 すがりついた氷山花市長に、虎徹は構えを解いた。


「ええんか?」

「ハ、ハイッ! それは、もう!!」


 虎徹は、カレナを見る。


「じゃ、帰ったら? ……あ! 家へ遊びに行って、ええ?」


「申し訳ありません。今は、スローライフなので」


「せやったら、しゃあない……」


 首肯した虎徹は、違う場所を見た。


「姫! 行くでー?」

「その呼び方は、止めてよ!?」


(つむぎ)ちゃん! マタタビやでー?」

「私は、ネコか!?」


 腰まで届く、長い茶髪。

 それを後ろのバレッタでまとめた、ハーフアップだ。


 琥珀(こはく)色の瞳が、印象的。


 年齢は、女子高生ぐらい。



 動きやすいドレスを着た女子高生が、お供らしき女子中学生2人と一緒に動き出した。


「参りましょう、姫さま」

「姫さま、早く……」


 地味なドレスのJC2人は丁寧な態度だが、(あお)っているとしか思えない。


 笑顔で、怒りのオーラを漂わせる姫さま。


「あ゛ー! 普通の生活がしたい!!」


千陣(せんじん)家に生まれたゆえ、ご辛抱くださいませ」

「オタサーの姫は辞められても、千陣流の姫はずっと続く……」


 頭を抱えた紬は、ずいぶんと感情表現が豊かだ。


「この如月(きさらぎ)! 紬さまの性癖を歪めるまで、誠心誠意、お仕えいたします!」

「建前と本音が、逆……」


 コントのように掛け合う女子2人は、紬をはさんだまま、会場を後にした。


 いつの間にか、南乃虎徹も姿を消している。


 室矢カレナは、言うまでもない。




 ――室矢カレナの自宅


 槇島(まきしま)睦月(むつき)が、説明する。


「南乃隊長と紬さまは、カレナを見るために、わざわざ来たそうだよ?」


「へー!」


 カレナは興味がなさそうな返事で、ソファーにもたれている。


「紬は?」


「千陣紬さまは、千陣夕花梨(ゆかり)さまの子孫だね! 後継者争いから降りたけど、高校を卒業したら、すぐに子作り」


「ふーん……」


 ダラーンとしたまま、ポテチを(かじ)るカレナ。


 睦月も食べながら、話を続ける。


「護衛は、如月と弥生(やよい)! あの2人は、すぐに分かったでしょ?」


「ええ……。今は、持ち回りで?」


「まーね! 千陣家の直属で十家に近い待遇だから、全く働かないのもマズい」



 夕花梨シリーズ改め、槇島シスターズ。


 如月と弥生も、その一員だ。



 カレナが、問いかける。


「如月は相変わらず、人の性癖をブレイクしているのですか……」

「それ以外は、完璧なんだけどねー!」


 もしも重遠がMだったら、如月との相性が一番だった。



「ところで、紬は槇島シスターズをどれぐらい?」

「2体! ヤバそうな時には、もう1体を増やすよ」


「夕花梨には、『重遠を守る』という使命がありましたから……」

「そーだね……」


 ソファーから起き上がった睦月は、ふと話題を変える。


「そういえば、氷山花家だけど……。やらかしたっぽい!」

「何を?」


「南乃隊長に、ホールを壊した損害賠償を請求したんだって!」

「うわあ……。よりによって、千陣流の十家で武闘派の筆頭に」


「千陣流の本拠地に、顧問弁護士と助手が来たようだけど……」

「もう生きていないでしょうね」


 睦月が珍しく、声を低くした。


「まだ、あるよ? あの市長の息子……氷山花鷹侍(たかじ)だっけ? どうやら、紬さまを見初めたらしくてさ! 顧問弁護士に熱烈なラブレターを託したとか! 内容は――」


“どのような困難が待ち構えていても籠の鳥である君を救い出し、普通の生活をさせてやりたい”


「ちなみに、紬さまは同年代と婚約していて、初夜も済ませているから! 婿養子で、政財界のヤバい家柄から迎える予定。……その人と親は、激怒しているってレベルじゃない」


「ああ……。満座でその力と反抗的な態度を見せつけた私よりも、御しやすそうで四大流派の一角である千陣流の姫さまに目を付けたと……。まあ、こんな田舎にはもう来ない人物ですし」


 ジュースを飲み干した睦月は、同意する。


「だろうね……。父親の市長が『あの娘はお前に惚れているが言い出せない』と焚きつけたんじゃない? 鷹侍の独断かもしれないけど! あいつはカレナに振られた直後で、プライドが傷ついていた。その埋め合わせとなれば、大きな獲物じゃないと……。いずれにせよ、地方の小金持ちが日本を裏で支配している勢力とぶつかるわけ!」


 この暗闘に宣戦布告はないし、説明もない。

 いきなり殺すか、相手の財力や社会的な立場を奪うだけ。


 カレナはため息を吐いた後で、結論だけ言う。


「終わりましたね……」




 ――1週間後


 御田木(みたき)市のトップである市長とその息子が、行方不明になった。


 副市長が代行しながら、すぐに市長選へ……。



 捜査は難航する一方で、群がった親戚による相続を巡っての殺人まで。

 トップ不在により、運営している企業も、誰につくのか? の派閥争いで、機能不全に陥る。


 事業が回らなくなった氷山花家は、抱えている借金を払えず、あえなく破産。


 

 カレナが訪れた洋館の正門は、固く閉ざされた。

 (いわ)くつきで、その広さも相まって、購入する者が現れないまま……。


 二度と開かないであろう門扉には、“許可なき立ち入りを禁ずる” という破産管財人の説明がぶら下がっている。



 よく考えたら、この一件では、カレナは危害を加えていない。


 ともあれ、スローライフは、無事に守られた。



 これは、前作とは打って変わって、御田木市の美須坂(みすざか)町と北稲原(きたいなばら)町の平和を守ったり、守らなかったりする物語である!


 それにしても、素でヤバすぎる世界で、室矢重遠くんはよく生き延びられたものだ。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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