御田木市の大統領
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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室矢カレナは、クール系のお嬢さま。
さらに、一目で忘れないほどの美貌。
御田木市には、過疎化のエリアが2つ。
その中で、限界集落と言える美須坂町に住む。
廃墟をリフォームしているうえ、自給自足が可能。
金を持っている雰囲気で、ド田舎とは不釣り合い。
近隣との交流を避けているが、地元の顔役である佳鏡家の優希と仲良し。
落ちこぼれの掃き溜め。
篠ノ里高校に通っていることも、大きな謎だ。
同じ美須坂に住んでいる槇島睦月に、恋愛騒動があった。
カレナは、全く関係ない。
だが、女子の無責任な噂と、男子の願望……。
「昔の彼氏を忘れられず、寂しがっているんだって!」
「へー!」
「聞いたか? 室矢も彼氏を募集していること!」
「マジ!? 睦月ちゃんはダメでも、室矢なら……」
結果的に、睦月へのラブレター攻勢は、カレナに引き継がれた。
――1年1組
「た、大変だね……。ちょっと、力になれないけど……」
困惑した佳鏡優希に対して、自分の机に突っ伏したカレナが、ゆらゆらと片手を動かした。
「参りました……。ですが、睦月の失敗を繰り返さないよう、誰にも会っていないので……」
その睦月は困っているカレナを見て、大爆笑だ。
「こんな田舎だと、人気のある女子を口説いてヤることが1つのステータスだからねえ……。しばらく経てば、落ち着くと思うよ? ブームに乗っかっているだけの奴も多いだろうし」
希望的観測も交じっているが、今は耐えるしかない。
優希の励ましを聞いたカレナは、こくりと頷いた。
カレナの友人は少ないが、顔役の優希や皆に愛想がいい睦月、さらに『室矢』というネームバリューで一目置かれている。
前に絡んだ長門拓も、睦月を通すことで謝罪した。
イジメとは無縁で、その気になれば、一大派閥を築けるポジションだ。
校内のアプローチは減っていき、平穏な日常が戻ってきた。
その一方で――
「何だよ、あの高級車?」
「市長の氷山花だって!」
遠巻きに見ている生徒たち。
そこに、正門から室矢カレナの姿。
後部座席のドアが開き、いかにも私立っぽい制服の男子が出てくる。
「やあ! っと、室矢さん!?」
無視されそうになり、男子は急いで名前を呼ぶ。
立ち止まったカレナは、しぶしぶ振り向く。
「何でしょう?」
「僕は、ここの市長の息子の氷山花鷹侍! 同じ『室矢』だから、仲良くしたくて――」
「失礼ですが、感じる霊圧によれば、異能者とは思えませんが……」
痛いところを突かれた鷹侍は、すぐにフォローする。
「あ、ああ! 非能力者としての名誉枠さ! だけど、この御田木市を良くしたい気持ちは父親と並び、誰にも負けない!」
「ご用件は?」
自分の制服を触った鷹侍は、カレナを誘う。
「その……ここでは話しにくいから、家に来てくれない? 帰りも、車で送るから――」
「遠慮させていただきます」
会釈したカレナは、立ち去る。
だが、自身の権能である未来予知により立ち止まって、振り向いた。
言うほど、便利なスキルではないが、ここで別れるのはマズいと出たから。
怒りかけていた鷹侍は、カレナの行動に、慌てて笑顔を作る。
「ん? やっぱり、気が変わった――」
「カレナ! だ、大丈夫!?」
走ってきた女子を見れば、佳鏡優希。
けれど、近くまで来たら、鷹侍を見たまま。
「あ……」
「これは、佳鏡さん! お久しぶりです。親同士はいつも顔を合わせるけど、僕たちは珍しいですよね?」
緊張した優希は会釈したまま、ギクシャクとした返事。
「ど、どうも……。お久しぶりです、氷山花さん……」
視線だけで、カレナのほうを見る。
だが、彼女は首を横に振った。
「私は大丈夫ですから……」
ニヤリとした鷹侍は、余裕を取り戻す。
優希に、勝利宣言。
「そういう事だから――」
「ご招待であれば、改めて伺います。それとも、氷山花家は学校帰りのレディを無理にお連れするので?」
そう言われれば、弱い。
今だって、多くの生徒や通りがかった大人が、ジッと見ている。
思い直した鷹侍は気障っぽく、両手を上げた。
「負けたよ……。でも、その言い方だと、ウチが招待すれば来てくれるんだろう?」
「はい」
満足そうに頷いた鷹侍は、後部座席へ乗り込み、車で走り去った。
「ごめん……。あいつ、市長の息子でさ! ウチは市議で、あいつの家は代々の市長……。佳鏡家や美須坂町がバカにされたのなら、ともかく。カレナ1人のために、地元の存亡をかけて戦うわけには……」
一緒に帰っている佳鏡優希は、思い詰めたような言い方。
市長は、その中にいる限り、絶対君主に近い。
たかが市と言うこと、なかれ。
一言でいえば、御田木市の大統領だ。
特に田舎のほうでは公共事業の割合が高くなり、影響力が強い。
優希の言い方は決して、大げさではないのだ。
また、議会が形骸化して、市長に忖度するパターンになりがち。
むろん市長も必死で、選挙の殴り合いは熾烈を極める。
それに対し、目をつけられた本人は、どこ吹く風。
「自分で、何とかしますよ……」
――週末
『む、室矢様ですね? はい、伺っております! た、ただいま、迎えの者を出しますので。少々、お待ちください!』
おい、早くしろ!
送迎はいらない!
正門まで、来ているから!!
バタバタした声が流れた後で、思い出したように、ブツッと切れた。
待っている間にも、開かれた門扉から列をなした高級車が入っていく。
「今日の客は多いようですね……」
氷山花家のご立派な塀と、その正門から見える広大な庭を見ながら、制服姿のカレナは肩を竦めた。
まさに、王侯貴族が住む館。
過去作は、こちらです!
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