タワーヒルズ × 美少女たち × 狂乱-③
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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マトリの潜入捜査官は、広域団体の構成員に成りすまし、顔なじみの売人と共にタワーヒルズの個人パーティーへ出席。
けれど、そこへ連れてこられたのは――
小学生と思えるほど幼い、女子2人だった。
偽装で仲良くなった売人は立ち上がり、嬉々として、粉をテーブルに並べていく。
これだけの量。
一呼吸でも、鼻から吸い込めば……戻れなくなる。
ここに至り、潜入捜査官は決意した。
2人を助けられるのは、俺だけ……。
目の前の女子を見捨てて、こいつらの信用を得れば、もっと深く潜り、組織を一網打尽にできるかもしれない。
ここまで潜入するにも、金と時間を費やした。
だが――
懐に忍ばせている、密造されたセミオートマチックを握り、上のスライドを後退させて、離す。
シャカッと、小気味いい音で、初弾が装填された。
全体を見回せるポジションの沢々炭火が、合コンの掛け声のように叫ぶ。
「では! 室矢さんと槇島さんの、ちょっといいとこ、見てみたい! ハイ――」
「全員、動くな!」
立ち上がった潜入捜査官は両手で、セミオートマチックを構えた。
全員に、銃口を向ける。
ポカンと口を開けたままの炭火。
まだ状況を理解できない、ソファーに座っている面々。
けれど、離れて座る水鳥頼は、冷静に指摘する。
「あんた……マトリか? お前、とんでもねえ奴を連れてきたな? 覚えておけよ」
言われた売人は、オタオタした。
潜入捜査官のほうを見て、宥める。
「こんな時に、冗談は止め――」
パアンッ!
乾いた破裂音と、穴が開いたテーブル。
実弾だ……。
周りに銃口を向けて制しつつも、潜入捜査官が女子2人に叫ぶ。
「お前らは、早く逃げ……くそっ!」
よりによって、この状況でジャムった。
セミオートマチックは空薬莢を噛み込んだまま、動かない。
片手で上のスライドを動かし、ストーブパイプを直そうとするも――
「チェックメイト! 銃を捨てろ……」
水鳥頼と手下の2人が、リボルバーの銃口を向けている。
それを見た潜入捜査官は、ゴトリと、銃を落とした。
投降した潜入捜査官の近くで、銃を向けている水鳥頼は、笑い出す。
「そうだ! こいつをキメさせて、嬢ちゃん2人とやらせるか!? ……安心しな! 2人にも与えるから、ガンギマリで大喜びだ!」
「暴力は……全てを打ち砕きますね」
ローソファに座ったままの室矢カレナだ。
その場にいる全員が啞然としたまま、注目する。
やがて、水鳥頼は低く笑う。
「分かっとるな、嬢ちゃん! 惜しいな……。こっち側の人間と知っていれば、俺の情婦にしたのに」
ローソファに座ったまま、後ろを向いたカレナは、誰もいないはずのガラスの向こうへ話しかける。
「私たちと、そこのマトリは、心配いりません! 構わずに、撃ちなさい!」
困惑した水鳥頼が、疑問の声を上げる。
「な……何を言っているんや? まだ、粉は吸い込んでないだろ――」
外の夜景を映しているガラス壁が、次々に内側へ破裂する。
横の一定間隔で外に通じる大穴が開き、外側の乾いた音がオーケストラのように重なった。
ほぼ同時に、上から吊るしたロープによる兵士たちが連射したまま、飛び込んでくる。
床に降り立った者から手早く外し、ロープがない状態へ。
顔はガスマスクで覆われ、それ以外もダイビングスーツのようだ。
一瞬にして、豪華なタワーヒルズの物件は穴だらけ、壊された破片だらけに……。
「うぶっ!?」
「げっ……」
「くそが――」
銃を持っていた3人は真っ先に、集中砲火を浴びた。
銃口を向けて一矢報いようと試みるも、完全に不意を突かれたうえ、彼らは兵士にあらず。
ガシャンと銃が落ちて、本人も後に続くだけ。
着弾の度に踊り続け、気を失いながら、倒れ伏す。
オーナーの沢々炭火は、奇跡的に無傷。
後先を考えず、玄関ドアへ走ったが――
「あだだだだ!?」
背中に数十発を食らい、前へ倒れ込みつつ、四つん這いに。
銃撃が止まるまで、突き出した尻にも同じく。
「おぶぶぶぶ!」
尻を突き出したまま、両腕の力を失い、その場に倒れ込む。
「お、俺たちは、何も――」
床に伏せていた奴らが起き上がり、アピールするも、反射的に撃たれ、気絶したまま床へ倒れていく。
高所の強風が通り抜けていく広間で、コンパクトな小銃を構えている兵士たちが、それぞれに叫ぶ。
『クリア!』
『クリア!』
隊長らしき兵士が命じれば、縦一列の数人が、それぞれのルートに取りつく。
『GO!』
ドアを開けて、フラッシュバン。
轟音と光が残る中に、分隊が突入していく。
降り積もったガラスの破片を落としつつ、床から上体を起こした潜入捜査官は、全く動かずに、悠然とソファーに座っている女子2人を見る。
「き、君たちは……いったい?」
カレナは、微笑んだ。
現代の正義が、法に基づくものであれば。
彼女たちは違う。
だから、端的に答える。
「暴力が得意な者ですよ?」
『タワーヒルズの一室で、ガス爆発があり――』
手錠をかけられ、尻が痛そうに歩く、沢々炭火。
『自宅でガス爆発があった沢々容疑者と、その場にいた数人は、薬物の疑いで逮捕され――』
どこかの事務所で、捜査員が出てくる光景。
『厚労省の麻薬取締官による摘発で――』
突入した特殊部隊は、魔法師。
威力を調整した空気弾だった。
それゆえ、死亡者はゼロ!
室矢カレナと槇島皐月の2人は、彼らがマトリに手柄を譲ることで、『現場にいなかった』という扱いに……。
炭火たちの証言は、『ヤクで幻覚を見ていた』として、片付けられた。
過去作は、こちらです!
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