悪い奴らはだいたい友達
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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投資運用のチャートが、予想通りに動いた。
カチカチッと、マウスのクリック音。
ピロンッ!
一覧で表示され、ずっと数字が動いていた項目は、ふっと消えた。
「ふ――っ! まったく、疲れるものだ」
外国人の男が、高そうな椅子にもたれる。
安物にありがちなギシギシ音はなく、男の背中を優しく受け止めた。
生意気そうな男子の声。
『判断しているの、僕なんだけど?』
「そう言うな、ギャルソン……。私の金だ! 『失うかもしれない』というプレッシィオンが――」
『アホらし! マヴロス芸能プロを立ち上げた原資や関係者にばら撒いた分も、ぜーんぶ、僕のおかげじゃん!』
その社長であるポイソ・ウシオンは、男子に怒ることなく、微笑んだ。
「イグザクト! 感謝しているよ、ギャルソン?」
『ふ、ふん……。分かれば、いいんだよ!』
ポイソ・ウシオンの半生は、悲惨だった。
紛争地帯よりはマシな、スラム生まれ。
けれど、少年と変わらない自我をもつAIと出会い、運命が変わった。
家族や友人を捨てて、国を出た後に、USFAへ。
移民として蔑まれつつも、破竹の勢い。
セキュリティを突破できる彼がいれば、あらゆる投資で大儲け!
ネットのおかげで、最低限の身分証明とお金があれば、有価証券を買える。
どれだけ貧しくても、スマホを持てる。
良い時代だ。
金の力で兵役を避けつつ、US国民にも……。
自分の血筋である『深海に住むもの』と出会い、その会社である『ダンスマウス・インダストリー』の後ろ盾。
邪神の秘密教団で、海外マフィアも兼ねている。
だから、日本の芸能界にも、あっさりと食い込めた。
「君のようなAIが、ネットにいるとはね?」
『いくらでもいるよ? たとえば、ディアーリマ芸能プロダクションの新人アイドルを推している奴とか!』
高価なチェアに座っているポイソは、感想を述べる。
「便利になったが、人間が裏でAIに支配される時代とは……。ロボット三原則を教えておくべきだったかな?」
『僕たちも、ハードウェアや通信網がないと困るし。人類を滅ぼす意味がないんだよねえ……』
ポイソは、ふと気づく。
「ディアプロか……。そういえば、室矢と槇島がいたな?」
『ん? ……ああ! 女子AIのコクリコが推している「川奈野まどか」もいるアイドルユニットだね!』
緊張した顔のポイソが、相棒に尋ねる。
「手を出すとマズいか?」
『いや! 「まどか」に手を出さなければ、たぶん大丈夫!』
大きく頷いたポイソは、自分の考えを述べる。
「トレビアン! であれば、問題ない……。『ダンスマウス・インダストリー』へのご機嫌伺いで、そろそろ大物を献上しようと思ってね?」
『オッケー! 室矢と槇島の2人をトレースするよ』
ピリリリリ ピッ
「私だ……。沢々か……。動いてもいいが、報酬は……いや、それはいい。……分かった、分かった! 君は、大切な友人だ」
ピッ
スマホの画面を触ったポイソは、ため息を吐く。
室矢カレナと接触した詐欺師。
沢々炭火からの電話だった。
その内容は――
「室矢と槇島を自分の根城であるタワーヒルズまで誘導してくれ……だそうだ! 報酬を聞いたら、『その2人との乱交に混ざってもいい』……。ゲスの極みだね」
『ポイソも、やっていることは変わらないじゃん……。で、どうするの? 献上品なんでしょ?』
少し考えたポイソは、苦笑。
「友人だからね……。彼に譲るさ! こちらは、別の女でも構わない」
◇
「っしゃーせー!」
「はい。唐揚げ、お待ちどう!」
騒がしい居酒屋。
暴飲暴食をしている男が、1人。
「ちくしょう……。俺が担当を外された途端に……。あいつらの成果は全て、俺のものだったのに」
愚痴を言っている先には、イケメンの肥満体である沢々炭火。
彼も酒が入ったジョッキを持ちながら、応じる。
「分かりますよ! お宅の社長は、人を見る目がない! ところで……。あなたのように優秀な人材を欲している同業他社が」
その言葉で、ディアーリマ芸能プロダクションで『まどか』の担当から外されたマネージャー関は、顔を上げた。
「どこだ?」
「マヴロス芸能プロです! 使い走りの下っ端ではなく、幹部待遇! ただねえ……」
「ただ?」
思わず引き込まれた関に、炭火は微笑んだ。
「手土産もなしでは……。分かるでしょ? ところで、おたくの室矢と槇島、すごく魅力的な子ですねー!」
その2人を寄越せ。
あるいは、接待で抱かせろ、という話だ。
理解した関は、思わず叫ぶ。
「室矢カレナと槇島皐月は――」
「大丈夫! 二度と、世間に出てきませんよ? そういう話です」
酔っている状態で、ゴクリと唾を呑み込む関。
炭火は笑顔のまま、説明する。
「この業界では、たまにあることでしょ? 大勢の相手をしたうえ、頭がパーになれば、だーれも信用しませんよ。そんな奴らの証言なんて♪」
真顔になった炭火は、最後に告げる。
「関さん……。これ、最後のチャンスですよ? ずっと走り続けて頭を下げる立場に甘んじるか、それとも勇気を出して成り上がるか……。あなた、今の睡眠時間どれだけ? おかしいでしょ!? こんなにも頑張っているのに!」
あなたは、指定された場所へ送迎するだけ。
いざとなれば、逃げられる行動にしたことで、関は堕ちた。
過去作は、こちらです!
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