煌めく舞台で会いましょう!
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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紫苑学園へ移った、川奈野まどか。
国民的なアイドル『瀬本ゆい』に貞操を狙われているが、ひとまず安全に……。
そもそも、普通の女子である『まどか』には、重すぎる話だった。
動き出した悠月家は、彼女の両親についても面倒を見る。
親を口説き倒して『まどか』を動かし、その先にいる『ゆい』や、同じユニットの室矢カレナ、槇島皐月に手を出す可能性があるからだ。
この3人は、それぞれに厄介。
機嫌を損ねたら、財閥のトップであろうと、無視できないダメージを受ける。
――テレビ局の控室
新人のアイドルユニットだが、専用の個室。
上に張り出した照明がある大きな鏡は、壁一面に並んでいる。
机には高そうな菓子、ドリンクもあって、大物と同じ扱い。
着替えや化粧スペースとは反対側にある小上がりの畳で、女子3人がくつろぐ。
室矢カレナはドリンクを飲んだ後で、問いかける。
「まどかは、芸能人を辞めると……」
「う、うん……。室矢さん達も、私がいないほうが、のびのびと仕事をやれるだろうし」
自分が足を引っ張っていることで、まどかの表情が暗くなった。
いっぽう、カレナはお菓子を食べつつ、説明。
「私たちも、そろそろ辞めます」
「ええっ!? もったいないよ! これだけ仕事のオファーがあるのに……」
まどかが聞いただけで、2人やソロで、CM、ドラマ、舞台に誘われている。
新人によくあるWEBラジオの収録ですら、大反響。
進行表がほぼ真っ白で、1人だけのスタジオ。
ブースの中でテーブルを囲んだ女子3人の、たった5分のトークで……。
カレナと皐月が応じれば、今の勢力図が変わる。
「そもそも、私たちは職業体験というだけ」
「ボクらの役目は、別にあるんだよ……」
当の2人は、芸能界に興味がないと、言い切った。
「そ、そうなんだ……」
他のアイドルなら、嫉妬で怒り狂ったかもしれない。
しかし、『まどか』は、自身も辞めるとあって、深くは考えず。
カレナは、大事な話をする。
「であれば、『いつ、どのように辞めるのか?』が問題です」
首肯した『まどか』は、自分の意見を述べる。
「ええっと……。もう受けている仕事は外せないから……。マネージャーの水口さんに言って、これ以上の仕事を受けずに――」
「もう芸能界に足を踏み入れないのなら、最後に思い出を残しませんか?」
困惑した『まどか』は、カレナの顔を見た。
「何をするの?」
「アイドルフェス……。私たちも、出場しましょう!」
夢にまで見た、大舞台。
あの興奮。
お金を払い、わざわざ遠くから泊りがけで会場に来てくれるファンたち……。
他のアイドルたちと競いつつ、そのステージで踊って歌う。
この上ない餞別だ。
その光景をイメージしている『まどか』は、座ったままで震えた。
カレナが、核心に触れる。
「まどか……。センターをやりますか?」
「え?」
皐月を見れば、頷いた。
「いいよ? 『まどか』が、やりたければ……」
やりたい。
どうせなら、センターで。
この2人も引退するから、気にする必要はない。
だけど――
「私は……センターじゃなくて、いいです」
「あなた達と比べたら……見劣りする。それじゃ、ファンの人たちが満足してくれない……がら」
まどかは、泣き出した。
あとからあとから、涙が出てくる。
膝立ちですり寄った皐月は、そっと抱きしめた。
「うん、分かったよ……」
この時が、たぶん。
『川奈野まどか』にとっての卒業式だった。
ひとしきり泣いた『まどか』は、2人に気を遣われながら、いったん化粧直し。
スマホを触り、悠月史堂にメッセージを送る。
“私、アイドルフェスに出場します! 室矢さん達とのユニットで、私はセンターじゃないけど……ぜひ、見に来てください!”
ポンッ
“分かった。スケジュールを調整してみるよ”
それを見た『まどか』は、ふうっと息を吐いた。
「頑張らないと!」
◇
控室に残ったカレナは、皐月を見た。
「そろそろ、仕掛けてきます」
「多方面の話じゃなくて、助かったよ……」
『まどか』たちの痴話喧嘩と並行では、面倒すぎる。
ここからは、一般人の彼女に教えない、敵と戦う時間だ。
皐月は両手を頭の後ろで組みつつ、ぼやく。
「今はちょうど、『まどか』がいないからね?」
首肯したカレナは、控室のドアを見た。
「ええ……。私たちを口説くには、うってつけ……」
コンコンコン ガチャッ
業界人なら、先に声をかける。
だが、この相手は無断で開けた。
高いスーツを着こなした男が、子分のような若衆を引き連れて。
「おはよう! 僕は、沢々炭火! テレビや本に出ているから、もちろん知っているだろうけど……。今日はね? もーっと君たちを輝かせたくて、やってきたんだ!」
カレナと皐月が返事をしないことで、炭火はつかつかと、小上がりの場所へ歩み寄る。
子分が、中からドアを閉めた。
過去作は、こちらです!
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