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「おい、ねえちゃんおきろ」

 目がさめたらそこは見しらぬ場所だった。


「あれ……ここは?」


 中世のような街なみ。

 いきかう人々や馬車。

 白馬にまたがる騎士らしき人も見えた。

 そして、なによりも――空を飛んでいる生物だ!

 鳥のむれのようなものや大きなドラゴンみたいなものまでいる。


「こっ、ここって……」まるで漫画で見た世界じゃないか。


「おい、ねぇちゃん。やっとおきたか」


 バンダナをしたおばちゃんが心配そうにワシの顔をのぞいていた。


「おい、おばちゃん。ここはどこだ?」

「ここはログレスだけど?」


 ログレス……漫画のなかにでてきた名前とおなじだ。


「なんだ、ねぇちゃん。ミナミさまを見にきたんじゃないのか?」

「ミナミさま?」


 おばちゃんは白馬にのった騎士を指さした。


「ミナミハジメさまだよ。魔物の王をたおした勇者なんだ」

「勇者……」


「じゃあ元気になったみたいだから、私はいくぞ」

「ちょっとまって、まだききたいことが……」


 呼び声むなしく、おばちゃんはさっていった。


 というか、おばちゃん、ワシのことを『ねぇちゃん』とよんでいたような……。


 ふと、店の窓が目にはいる。

 そのガラスにワシの姿がうつって……。


 ハッ――自分の目をうたがった。


 そこにうつっていたのは、ワシの顔ではなかった。

 金色の短髪をはやした少女だった。

 その目は猫のようにおおきい。


「こっ、これって……」


 この顔、見覚えがあるぞ。

 漫画の主人公の……チェンソーをもってたたかう少女!

 えっ、というかワシ、少女になっているの?


「そんなバカな……」

 ワシは自分の顔に手をあてる。

 ガラスのなかの少女もおなじように、自分の顔に手をあてた。


 ――まて、少女ということはッ!


 ズボンの中をのぞいてみる。

 しばらくして、安堵の息がでてきた。


「よかったぁ……」

 息子は健在だった。



 適当にうろついているうちに、人気のない路地にはいっていた。

 そこに何人か人がたっていた。


「やめてくださいッ!」


 桃色の髪の少女がさけんでいる。


 そのまわりには、二人のケバい女。

 そして白馬にのっていた騎士ーーミナミハジメがいた。


 ミナミが少女にいう。


「おまえ、俺の誘いをことわるのか?」


 少女はこまったように顔をゆがめる。


「わたくしには婚約者がいるんです!」

「だまれ、俺は勇者だぞ!」


 バシンッ!

 拳が少女に直撃する


「うぅ……」

 少女は地面にたおれた。


 すかさず、ケバい女二人が「調子にのってんじゃないわよビッチ!」とあおりはじめる。


「……さすがに見てられんなッ!」


 ワシの声に場の四人は反応した。


「誰だ、おめぇ?」


 ミナミがいぶかしげにこちらをにらむ。


「ワシか? ワシはアド……」


「なんなのよ、あんた!」

「あんたもミナミさまがすきなわけ!?」


 女二人に自己紹介が妨害されてしまった。


「ふん。そんなアンポンタンな男、大嫌いだバーカッ!」


「なんだと」

 ミナミの瞳に敵意がやどる。


「俺をバカにしやがってぇッ!」


 ミナミは剣をかまえた。

 その瞬間、ミナミのまわり大量の拳銃があらわれる。

 拳銃は浮遊し、銃口をこちらへむけた。


「えっ……ちょっとまって」


「俺の呪術『武器製造(マーチャント・オブ・デス)』で血祭りにしてやるッ!」


 ミナミがそう言いはなつと同時に、銃弾がはなたれる。


「ちょ、おま――――――畜生めぇッ!」


 四方八方から銃弾が体にあたる。

 一瞬にして、ワシは蜂の巣になった。


「ハハハ! 死ねぇ!」ミナミの笑い声。


「そ、そんな……」少女の泣き声。


 ワシはそっと体を見た。

 悲惨なことになっているのに、なんだか痛みがないし、普通に動く。


 どうやら、漫画とおなじみたいだ。


「……さてと」

 ワシは自分の舌を、指でつかんでひっぱり、ミナミのふところに飛びこんだ。


 そして――。


『呪滅のチェンソー』


 ギュイイイイイン!

 突如、ワシの片手にあらわれたチェンソーがミナミをきりさく。


「ぐぅおぁぁ!」


 ブシュゥゥゥッ!

 血しぶきがそこら辺中に飛び散る。


 ミナミは口から血を吐きながらその場に崩れた。

 その下半身と上半身は分離している。


 やはりそうみたいだ。


 漫画の主人公はいくら攻撃をうけても死ななかった。

 そして、いつでも自分の手にチェンソーを召喚することが可能だった。


 つまり、ワシは……。


「漫画の主人公になったということか」

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